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Robert Palmer VS Steve Winwood

golden(以下g):「80年代はベテランたちが頑張った時代だったけど、80年代的サウンドの取り込み方については、成功と失敗がはっきりしてた感じがあるよね。」
blue(以下b):「ZZトップと並ぶ成功例のひとつが、ロバート・パーマーやな。」
g:「ロバート・パーマーってどういう人なのか、パワーステーションの“Get It On”がヒットするまで全然知らなくて。」
b:「デュランデュランのアンディ・テイラーとロジャー・テイラーが別プロジェクトとして始めたバンドにヴォーカリストとして白羽の矢が立てられたわけやな。」
g:「プロデューサーがシックのベーシストのバーナード・エドワード、ドラムもシックのトニー・トンプソン。」

Robert Palmer / Riptide(1985)

b:「このアルバム『Riptide』もそのシックのリズム隊と演ってて。」
g:「ドラムのゲートリヴァーブのかけ方とか、ブリブリと太いベースの音とかがいかにも80年代っぽいよね。」

b:「ファンキーかつヘヴィでかつダンディ。」
g:「抑制を効かせた渋めのヴォーカル・スタイルがなんともかっこいいよね。」
b:「この人が目指していたのって、最新サウンドをまとったフランク・シナトラ、っていうイメージやったんやろうな。」
g:「1曲目からいきなりストリングスが入った歌い上げ系の曲が流れてきて、あ、このアルバム失敗かもって思った記憶がある(笑)」
b:「その次にドッスンバッタンのどデカいドラムの音が聴こえてきてほっとしたな。」

g:「そもそもがシャウト系のハードなロックではなく、ニューオリンズやレゲエの黒っぽいリズムを白人的にどう取り込むかということを演ってた人だから、シックのリズム隊との融合というのはずっぱまりだったね。」
b:「ロバート・パーマーと並んでベテランアーティストで、80年代的リズムを取り入れてヒットした人といえば、スティーヴ・ウィンウッドやな。」

Steve Winwood / Back In The High Life(1986)
 

g:「60年代のスペンサー・デイヴィス・グループから始まって、トラフィックやクラプトンとのブラインド・フェイスなど長いキャリアの人で。」
b:「なんかな、俺、トラフィックってよーわからんねんな。ブルースロックでもなくサイケデリックでもなく、ガツーンとくる曲があるわけでもなく。」
g:「うん、いまいち凄さを感じにくいよね。」
b:「その点、この“Higher Love”は一発で気に入った。」

g:「やっぱりリズムがね、イキイキしてるよね。」
b:「分厚いパーカッションやコーラスがいいグルーヴを作ってるな。」
g:「このヒット曲が強烈過ぎて、アルバム全体でいうと実はあまり印象が強くなかったりするんだけど。」
b:「レゲエっぽいリズムの“Finer Things”とかミディアムバラードの“Back In The High Life Again”なんかは、さすがベテランやなぁと思わせるだけの大きなグルーヴを感じるけどな。」
g:「でもやっぱりちょっと存在感は薄くない?」
b:「まぁそのサラッとしたテイストも持ち味ってことで、って、俺がフォローする側に回るって珍しいな(笑)」

g:「二人とも、共通点としては、ソウルフルで大人のゆとりを感じさせる懐の深いヴォーカル・スタイル。それと新しいリズムや新しいサウンドを貪欲に取り入れたこと。」
b:「この手の80年代リズムって、中途半端に取り入れたらカッコ悪くなんねんな。それを振り切って大胆にど真ん中で演ってるんがええな。」
g:「今回、掘り下げもまとめも薄くない?」
b:「いや、新しいリズムでいうと、このあとリリースされるピーター・ガブリエルとかポール・サイモンに比べるとちょっと弱いし、まぁまぁ好きではあったけど夢中になったというほどでもなかったし。」
g:「他にも好きなのがいっぱいあったからね。」

b:「1986年やろ。70年代からの生き残りアーティストで言えば、ジャクソン・ブラウンの『Lives In The Balance』とかボブ・シーガーの『Like A Rock』の方がよう聴いてたんちゃうかな。」

g:「二人とも地味ながら実直な音楽を演ってたよね。」

b:「ハードな奴やとジョン・ライドンのソロプロジェクト化したP.I.Lの『Album』とか、ミック・ジョーンズのビッグ・オーディオ・ダイナマイトとか。」

g:「あれもベテランたちの悪あがき、あ、いや、果敢なチャレンジかもね。」
b:「ベテランアーティストたちも悪戦苦闘しながら新しい時代の音になんとかのっていこうとしていた時代やったってことやな。そのチャレンジ・スピリットは評価されるべきやで。」
g:「70年代の音ってさ、メロディー重視だったり、ハードなロックだとギターのリフ重視だったりしてたんじゃないかと思うけど、80年代はすっかりリズムが音の中心になったんだよね。80年代に対応できた人とそうではなかった人の差ってそのあたりかも、って。」
b:「そういう点では、最初からリズムの探求者だったロバート・パーマーや、突出した魅力はなくてもトータルでクオリティーの高い音楽を作っていたスティーヴ・ウィンウッドがこの時期にブレイクしたのはもっともやったんかもな。」
g:「なんとかまとめたね(笑)」




Tears For Fears VS Scritti Politti

golden(以下g):「1985年の年間ヒットチャートを見てみると、1位は当然というか“We Are The World”なんだけど、2位がa~haの“Take On Me”だったんだね。」

blue(以下b):「めちゃくちゃ売れてたな。俺は聴いてへんけど。」
g:「4位に“Shout”、6位に“Everybody Wants To Rule The World”と、ティアーズ・フォー・フィアーズがベスト10に2曲もランクインさせてた。」
b:「そんなに売れたんやったっけ。」
g:「大ヒットしすぎたせいで何だか軽く見られてるイメージがあるんだけど、このアルバムは80年代を代表するアルバムだと思ってるんだよね。」

b:「80年代を代表するとは、また大きく出たな。」

Tears For Fears / Songs From The Big Chair (1985)


g:「代表するは大げさだけど。80年代初頭から続いていたいわゆるポスト・パンク的な世界観と、シンセサイザーで広がりを持たせたデジタルな実験的な音楽が、ビートルズから続くブリットポップ的なメロディーやハーモニーと高いレベルで融合した傑作ではないかな、と。」
b:「なるほどな。」
g:「パンク以降のロックが模索してきたもののひとつの集大成的な、ね。」
b:「バンド名のティアーズ・フォー・フィアーズっていうのは心理学の用語らしいな。」
g:「“恐怖や痛みをしまいこまずに泣いたり叫んだりすることで克服する”という心療方法のことらしい。」

b:「いわゆるプライマル・スクリーム。」
g:「“In violent times, you shouldn’t have to sell your soul/In black and white, they really, really ought to know...暴力的な時代だけど、君の魂を売り飛ばすべきじゃない。黒か白か、真実を知らなくてはならない”、“Shout”の歌詞はこんな感じなんだよね。」

b:「日本では車かなんかのCMで使われてたけどな。」
g:「耳に残るメロディーだからね。そういう重い世界観とCMにも使われちゃうようなポピュラリティを両方備えているっていうのがね、80年代っぽいっていうか。」

b:「オルタナティヴでありながらメインストリーム。」

g:「世の中はバブル景気の助走段階、浮かれた躁状態が続く一方で、伝統的な価値観の崩壊など人々の心は病みはじめていた・・・そういう時代にマッチする音なのかな、と。」

b:「“Everybody wants to rule the world”、誰もが世界を支配したがっている、っていうのもなかなか示唆的なフレーズやな。」

g:「誰もが世界を支配したがっている、っていう不穏な意味と、誰もが自由に生きたいんだ、っていうポジティヴな意味が両方クロスするような深い歌詞に、ついハナウタで出てきそうなわかりやすいメロディー。そういう重いフレーズをポップなメロディーで遠くまで飛翔させてしまうっていうのがね、ロックという音楽のすごいところだと思うんだよね。」

b:「まぁ確かにそやな。」

 


 

b:「60年代70年代の音楽的遺産を80年代らしく結実させたという点では、俺はスクリッティ・ポリッティの『Cupid and Psyche '85』もこの80年代中期的大名盤やと思うわ。」

g:「ソウルミュージックと80年代シンセ・ポップの高次元での融合、みたいな。」

Scritti Politti / Cupid and Psyche '85 (1985)
b:「このスクリッティ・ポリッティっていうのも意味のよーわからんバンド名やけどな。」
g:「イタリア語で“政治的文章”っていう意味らしい。」
b:「そういうよーわからんバンド名つけるバンドってだいたいこじれてるねんな。」

g:「スクリッティ・ポリッティのグリーン・ガートサイドもやっぱりパンクに影響を受けてシュールな世界観の音楽を演ってたみたいだけど、こじれてバンドは崩壊、けっきょくグリーン・ガートサイドの一人プロジェクト・バンドになった。」
b:「初期はもっとシュールでアブストラクトな感じだったのが、このアルバムではアクがなくてめっちゃキラキラした音になってるねんな。」
g:「メンバーとしてクレジットされているデヴィッド・ギャムソンもフレッド・マーも一流のスタジオ・ミュージシャンだし、マーカス・ミラーやポール・ジャクソンJr.らジャズ・フュージョン系のミュージシャンをふんだんに使ってるしね。」

b:「やってることがスティーリー・ダンっぽいな。」

b:「基本的にこういうデジタルな音っていうのは当時は好みではなかってんけど、これは普通に聴けてけっこう好きやってん。」

g:「ユーロビートには辟易したけどね。」

b:「あんなもん踊るためのツールであって、音楽やないで。」
g:「スクリッティ・ポリッティの音は、なんていうかね、人工的な音なのに不思議と人工臭さを感じないんだよね。」

b:「暴力的ではないっていうか、まるで自然界の法則みたいに、あるべき場所であるべき音が鳴っている、みたいな自然な感じがあるねんな。」

g:「例えば光のプリズムの作り出す美しさとか、雪の結晶の美しさとか、そういう自然の法則に則って生み出された幾何学的な美しさみたいな。

b:「70年代末に一気に広がったデジタルシンセやゲートリバーブや様々なエフェクター。最初はすごく機械的というか無機質というか、そういう音の質感を活かしてシュールな世界観を表現するのに使われてた気がするけど、80年代中期になると、そういう音とヒューマニズム的な表現が手を取り合うようになっていったていうのは、なんか不思議な感じやな。」
g:「最初の頃のデジタルリズム、例えばクラフトワークやDEVOあたり、あるいはニューオーダーやデペッシュモードみたいなバンドは確かに無機質だし暴力的ですらありました。」
b:「パンクが一度ぶち壊した荒野みたいな荒れ果てた場所で、絶望感やら退廃的な世界観を歌うバンドが多かったポストパンクの流れがな、この時代くらいに終わっていった。」
g:「元々あぁいう頭でっかちなポストパンクみたいなのっていうのは、結局はファッションでしかなかったんだろうって僕は思ってるけどね。」
b:「絶望的で退廃的なのがカッコいいって憧れる、、、ある意味中2病みたいな。」
g:「パンク〜ニューウェイヴの時代っていうのはそういう時代でもあったんだよ。」

b:「中2病な奴らも少しずつ大人になる。絶望や退廃よりも快楽や欲望の方が楽しいことに気づいてしまう。」
g:「ティアーズ・フォー・フィアーズやスクリッティ・ポリッティは、そういう時代を象徴してた気がするね。」

Dead Or Alive VS Pet Shop Boys

golden(以下g):「さて、その気が狂いそうにさせられたユーロビートといえば、走りはこのバンドだったかと。」
blue(以下b):「デッド・オア・アライヴ!目にするのも嫌やったな。」
g:「とりあえず気が狂ったようにヒットしました。」
b:「あっちもこっちもズッチャカズッチャカズッチャカズッチャカと。」
g:「好んで聴いたわけではないけれど、80年代を席巻したムーヴメントとしては無視できないかと。」

Dead Or Alive / Youthquake(1985)
 
b:「アルバムとしてちゃんと聴いたことはなかったけど。」
g:「うん、当時はもう、こういう音楽に対してはヘイトに近い感情を抱いていました。」
b:「ほんま勘弁してほしかったわ。」
g:「ところがね、今聴くとそれほど悪くないんだよ。」

b:「いかにも80年代なギラギラした音やけどな。」
g:「ピート・バーンズのド派手なメイクと衣装、アイパッチ、長い髪を振り乱してクネクネ踊る姿、、、とりあえずインパクトありました。」
b:「見た目のゲイっぽさの割に、ヴォーカルはすごく野生的な太い声で。」
g:「当時はわからなかったんだけど、実はこのバンドの演ってたことって、もろ正統的なポストパンク〜ニューウェイヴの流れだったんだよね。」
b:「デヴィッド・ボウイ〜ジャパンっぽい耽美的な容姿端麗さに、ニュー・オーダーやデペッシュ・モードが演っていたようなエレクトリックなディスコ・ビートな。そう言われるとそうやねんな。」
g:「そして何より、露悪的なまでの派手さと、破壊的なまでのエネルギー。これって実はセックス・ピストルズが演ってたことと同じだったんだなぁ、って。」
b:「まぁ確かに、ピストルズ並みに暴力的ではあった。」
g:「嫌いで耳を塞ごうとしても有無を言わさず強引に脳内に入り込んでくるだけのポップさとエネルギーを兼ね備えていたという点では、やっぱりすごかったな、と。」
b:「その後を追うように、何もかもこういうユーロビートアレンジになっていったのには辟易したけどな。」
g:「猫も杓子もユーロビート。」
b:「バブル期入口の日本を象徴するような浮かれ方やったな。」
g:「貧乏学生にはバブルなんて全然縁遠かったけどね。」
b:「こういうのが大好きやったのが、前にも喋った、ニューオーダー好きのレンタルレコード屋の同僚Eで。まったく肌に合わん奴やったな。」
g:「おしゃれで潔癖症で、関西生まれなのに変な標準語のオカマっぽい言葉でしゃべるっていう。」
b:「ゲイではなかったけど、その気配はあった。」
g:「ナイーヴをアピールするわりには図々しくて。」
b:「現代ならこういう存在も普通っぽいっていうか多様性に寛容になるべきだと思うけど、あの頃ああいうタイプって周りにおらんかったから、まぁ対応には困ったな。」
g:「そのEがデッド・オア・アライヴと並んでしょっちゅうかけてたのがペット・ショップ・ボーイズ。」
b:「こいつらも天敵やったわ。」
g:「で、これも今聴くとそんなに悪くないんだよ。」
 
Pet Shop Boys / Please(1986)
 
g:「この2人もゲイだったんだっけ?」
b:「うーん、そもそも興味ないねんけど。性的な嗜好をそうやってオープンにすることにどうも違和感があるねんけどな。誰がどんな性的嗜好を持ってようが、俺には関係あらへんし。」
g:「ま、確かに。」
b:「ゲイだレズだっていうのは、ロリータ好きだとか熟女好きだとかポッチャリ好きだとか、そういうことを表明することとどれくらい違いがあるんやろうか。」
g:「あんまり表明してほしくないね。表明したくないし、知りたくもない。」
b:「男女の婚姻という制度から外れているせいで同性愛者は社会的に疎外されている、憲法で保証されている基本的人権が損なわれている、だから権利として認めてほしいという主張はその通りなんやけどな。」
g:「なんていうかね、生々しさがどうもね。」
b:「想像したくない。」
g:「まぁ、そういうことより音楽の話を。」

b:「この“West End Girls”にしろ“Suburbia”にしろ、能天気なディスコ・ビートのように聞こえてたけど、けっこう翳りがあったんやな。」
g:「強いビートとは裏腹のマイナーなメロディーに繊細な感じがこぼれ出ているっていうか。」
b:「歌詞もわりとセンシティヴやったらしいな。」
g:「大ヒットした“West End Girls”の出だしはこんな感じ。“時々死にたくなる事がある/片手にピストルを持ち、銃口をこめかみに当てる/情緒不安定のあまり、気が変になったみたいだ”。
b:「なかなかヘヴィーやな。」
g:「ロンドンのイーストエンドっていうのは労働者の多い貧しいエリアでウエストエンドは歓楽街。そういう社会格差みたいなものを歌った歌らしい。」
b:「そーゆーことなんかまったく知らんとEみたいな奴らがこれかけて能天気に踊ってたけどな。」
g:「ま、そういうことも狙いだったような気がするけどね。シニカルな歌をヘヴィーに演るのではなく、ポップに演ることで歌の飛行距離を伸ばす手法っていうか。」
b:「なるほどな。ポップで甘い装いを仕込んだ毒薬。」
g:「素直に聴けば悪くないと思うけどな。」
b:「一生聴かんでも困らんけどな。」
g:「まぁそう言わずに。表現方法としてはかなり興味深いものがあったと思うよ。」
b:「ま、デッド・オア・アライヴもペット・ショップ・ボーイズも、時代の谷間に咲いた徒花っていうかな。」
g:「徒花っていうと、ピストルズの“God Save The Queen”の一節、“We're The Flowers In The Dustbin”っていうのを思い出すなぁ。俺たちはゴミ箱に咲いた花だ、って。」
b:「エヴァーグリーンとは呼べないし万人に愛され続ける存在ではないけど、でもそういうもなかなか80年代ポストパンクっぽくてええやん、とは思うわ。」

Stevie Ray Vaughan VS ZZ Top

golden(以下g):「アメリカのルーツ・ミュージックに根ざした音楽っていうと、やっぱりブルースだよね。」

blue(以下b):「80年代のブルース・ロックといえば一も二もなくスティーヴィー・レイ・ヴォーンやな。」
g:「当時、キラキラした音やチャラチャラした音が主流を占める中で、埃っぽくて泥臭いのをドカーンと演ってくれました。」
b:「レンタル・レコード店でバイトしてた時にな、例の軽薄野郎がな、単調なビートのディスコナンバーをガンガンかけるわけよ(※ユーリズミックスの回参照)。」
g:「いわゆるユーロビートと呼ばれたあれね、うんざりしたよね。」
b:「ああいうのばっかり聴かされると、反動なんやろな、古くさくてギターがデカい音を大音量で浴びたくなる。」
g:「で、スティーヴィー・レイ・ヴォーンの出番、と。」
g:「ユーロビートとか散々聴かされたあとにこれかけたら気持ちよかったよなぁ。」

Stevie Ray Vaughan / Soul To Soul (1985)

b:「ギターの音が泥臭さくてええねんなぁ。」
g:「ウギャギャギャギャーン、ギュオーン、って感じ。」
b:「アルバート・キングとかバディ・ガイとかああいうスクイーズ系のブルース・ギタリストはそんなに好みではないねんけど、レイ・ヴォーンが出てきたときは拍手喝采っていう感じやったな。」
g:「80年代、ブルースなんて誰も演ってなかったもんね。」
b:「リズム隊も締まっててかっこええのよ。」

g:「あの当時、スーパーギタリストといえば、エディ・ヴァン・ヘイレンとかイングウェイ・マルムスティーンとか、ヘヴィメタル系の速弾きギタリストばっかりだったから、ブルース系に留まらずロック方面にもめちゃくちゃインパクトがあった。」
b:「ただ速く弾けばええってもんやないねんで、と。」
g:「すごい太い弦を張ってたらしいね。」
b:「技術的なことはようわからんねんけど、太い弦であれだけのフレーズを弾くんはかなり凄いことやったんやろな。クラプトンも絶句したとか、B.B・キングが“肌の色は違ってもあいつは俺の息子や”と言ったとか、そういう伝説だらけやけど。」

b:「レイ・ヴォーンが最初に話題になったのって、ボウイの“Let's Dance”に参加したときやったっけ。」
g:「モダンなダンス・オリエンテッドな曲の中に突如ぶっこまれるブルース・ギター。」
b:「あれは確かにかっこよかったな。」
g:「モダンなサウンドの中にブルースをぶっこんだといえばZZトップだね。」
b:「83年の『Eliminater』、85年の『Afterburner』。インパクトあったなぁ。」

g:「80年代的リズムと埃っぽいブルースの異種格闘技戦的融合。」
b:「なんかぶっ飛んでてこりゃ凄いなぁーって思うたわ。」
g:「テンガロンハットと長いヒゲのルックスもインパクトあった。」
b:「いかにもアメリカン・ロックっぽいワイルドさ、豪快さやったな。」

ZZ Top / Afterburnar (1985)

g:「大学のツレでヴァン・ヘイレンとヒューイ・ルイスが大好きな奴がいて、そいつに誘われてライヴ行ったわ。」
b:「まだ出来て間もなかった頃の大阪城ホールな。」
g:「ライヴ、すごかったよね。全曲同じ曲かと思うくらいぶっ飛ばしまくりだった。」
b:「けっこうトシ食ったオッサンたちやと勝手に思っててんけど、ビリー・ギボンズもダスティ・ヒルもフランク・ベアードも、あの当時まだ30代後半くらいやったんやな。」

b:「80年代中期のシンセサイザーの発達は凄いもんがあったな。」
g:「ベテランのバンドもこぞってああいう音色を取り入れて。」
b:「ジューダスプリーストとかモーターヘッドまで取り入れてたからな、大ゴケしてたけど。」
g:「70年代から演り続けてきたバンドにとって、80年代のニューウェイヴ的な動きっていうのはやっぱり脅威だったんだろうね。」
b:「あの時期な、昭和からずっとやってる〇〇商店街とかも、ウェンディ栄だのメルカード丸山だのシャレたっぽい名前に改名したりしてたけどダサダサなだけやったからな。」
g:「取り込めばいいっていうもんじゃない。」
b:「けっきょくはスティーヴィー・レイ・ヴォーンみたいに時代遅れっぽくても本物を追求した奴の方が残る。ZZトップみたいに新しい音を取り入れて成功したのなんか一握りやもんな。」
g:「80年代的シーケンサーサウンドやパシャパシャしたドラムのサウンドは、このあと1~2年であっという間に駆逐されることになったもんね。」
b:「オールドスタイルを貫いたスティーヴィー・レイ・ヴォーンとモダンサウンドを導入したZZトップ。どっちも好きやけど。」
g:「レイ・ヴォーンもZZトップも、ブルースの本質からはブレてなかったからね。」
b:「音のアレンジやデコレーションがどうであれ、最後に響いてくるのはそういうところやからな。」

Phantom Rocker & Slick VS Brian Setzer

golden(以下g):「革ジャン、バイクのヤンキーっぽいロックンロールで思い出したんだけど、80年代を代表するロカビリー・バンド、ストレイキャッツのことを書きそびれてた。」
blue(以下b):「ストレイキャッツな、“Sexy+17”とかめちゃくちゃヒットしてた印象はあるけどな、リアルタイムではなんかスルーしててんな。」
g:「そうだったっけ。」
b:「なんかな、チャラいし、ヤンキーっぽかったやん。ああいうロカビリーって、横浜銀蝿とかっぽいんちゃうかという先入観というか偏見があってな。」
g:「不良っぽくない普通の人が演るロックが聴きたかった、と。」
b:「ところがな、だんだんとロックンロールのルーツっぽいものを知るようになっていくと、エディ・コクランとかジーン・ヴィンセントとかカッコええやん、って思うてくるねんな。」
g:「佐野元春が“悲しきRadio”っていう曲の中で♪ジーン・ヴィンセント、チャック・ベリー、リトル・リチャード、バディ・ホリー、Any Old Rock'n'Roll、っていうフレーズがあって、そういう古いロックンロールに興味を持ったんだよね。」
b:「そう、聴いてみたらめっちゃカッコよくて。あぁ、こういうのを演ろうとしてたんやなぁ、ストレイキャッツは、と思うた頃にはあっさり解散しててん。」
g:「なるほど。」
b:「で、そのストレイキャッツの残党が、ギタリストのアール・スリックと組んだのがこのファントム・ロッカー&スリック。」
g:「キース・リチャードが参加したことも話題になったよね。」
b:「ギタリストのアール・スリックっていう人は知らんかってんけど、デヴィッド・ボウイやジョン・レノンと演ってたってきいてめっちゃ期待感高まったん覚えてるわ。」
g:「今やったらちょっと興味を持ったらすぐにSpotifyとかで聴けるけど、当時は“次は誰のどんなアルバム聴こうか”って考えたり想像したりするのが楽しかった。」
b:「今日はこれを聴こう!って決めてレンタルレコード屋へ行ったら置いてなかったり貸し出し中やったり。」
g:「レンタル店になくて輸入盤屋を探して、見つけはしたものの2500円出すべきかでさんざん逡巡したり。」
b:「で、大学2回生になったときにレンタルレコード屋でバイト見つけて、そりゃ働くしかないわって応募して。あれは大きかったなー。」
g:「うん、前回のジョン・ハイアットも、ファントム・ロッカー&スリックもたぶん自分で買うとなると見送ったんじゃないかな。」
b:「そうやってちょっといいなと思っても聴き逃したレコードっていっぱいある。」
g:「で、ファントム・ロッカー&スリック。」
b:「なんかな、ストレイキャッツのイメージとは全然違う、ノリのずっしりした骨太のロックを演ってたからビックリしたわ。」
g:「ストレイキャッツのリズム隊、スリム・ジム・ファントムとリー・ロッカーっていうと、バスドラなしで立ちながらスネアだけ叩いてるドラムとウッドベースっていう印象だったからね。」

Phantom Rocker & Slick/ Phantom Rocker & Slick(1985)

g:「王道のロックっていうか、勢いがあって、かつ、したたかでタフそうで。」
b:「ストレイキャッツのイメージより全然チャラくないねんな。」
g:「硬派っぽいし、せーの、で演った感じの勢い、ノリのよさがあって。」
b:「これ、めっちゃヒットするでーって思ったけど、全然やったな。」
g:「まぁ、デュランデュランやワムかボン・ジョヴィかっていう時代だったからね。」
b:「めっちゃカッコええわっ!って思うてんけどなぁー。」

g:「ファントム・ロッカー&スリックの翌年にはブライアン・セッツァーも待望のソロ・アルバムをリリースしたんだけど。」
b:「これがな、まるでブライアン・アダムスかよっ!っていうくらいのポップなアメリカン・ロックでちょっとビックリしたわ。」
g:「ロカビリーっぽさが全然なくて、えっ、これ、ブライアン・セッツァー?って。」
Brian Setzer / The Knife Feels Like Justice(1986)

b:「レコード会社の思惑とか、いろいろあったんやろな。」
g:「せっかくのファースト・ソロだし、ストレイキャッツとは違う色を出してみよう、とか?」
b:「その後、ブライアン・セッツァー・オーケストラとかでぶりぶりのロカビリーに回帰したんをみると、本人にとっては黒歴史っぽいけどな。」
g:「でも、今聴くとけっこうカッコいいんだよ。」
b:「まぁな。何曲かは50'sっぽいのんとかロカビリーっぽいのも演ってるしな。」

g:「結局、ファントム・ロッカー&スリックもブライアン・セッツァーのソロも長続きせず、86年にはストレイキャッツを再結成。」
b:「あれ何年のリリースやったかな、50年代ロックンロールのカヴァーばっかり演ったアルバムがあって、めっちゃ好きやったわ。」
g:「『Original Cool』、リリースは93年ですね。」
b:「ブライアンは並行してブライアン・セッツァー・オーケストラでも活動、あれはルイ・ジョーダンとかのジャンプブルースみたいなのを演りたかったんやろうけど。」
g:「ビッグバンドで演るロカビリー、っていう感じがカッコよかったよね。」
b:「このあたりの90年代の作品を聴いていると、気負わずに、自分が大好きな音楽を心ゆくままに楽しんでいるように聞こえるんやけど。」
g:「それに比べると、このファントム・ロッカー&スリックもブライアン・セッツァーのソロも、気負いまくってるよねぇ。」
b:「気負いまくってるな。背伸びしてるし、無理もしてる。」
g:「ブライアン・セッツァーは1959年の生まれだから、ストレイキャッツでデビューしたのが21才くらいか。このソロが27才、ブライアン・セッツァー・オーケストラは94年で35才の頃か。」
b:「27才くらいっていうのは、気負いまくるもんやろうな。まだこんなもんやない、もっと別のステージへ行ける、って。」
g:「気負いまくって、惨敗して、改めて自分が一番好きで一番やってて楽しいことに気づくのが30代半ば。」
b:「30代半ばでそういう心境に落ち着けたらラッキーな方ちゃうか。」
g:「そうかもね。」
b:「でもな、この気負いまくって過去の自分を越えよう、新しいステージへ踏み込もうってあがいてる時期がな、なんていうかものすごく貴重っていうか、愛おしくすら感じるねん。」
g:「あー、わかる。」
b:「いやー、思わず、頑張れよって声かけたくなる、みたいな。」
g:「目線が完全にジジイ目線。。」
b:「いやいや、ワシも若い頃にな、、、」
g:「若者から一番嫌われるパターンだよ、それ。」
b:「まぁええやん。いやー、こういうシンプルでストレートでポップなロックンロールっていうのはやっぱりええなぁ。ビシッと来るっていうか。」
g:「こういう音楽を知るに連れ、どんどんルーツ志向になっていって、古いロックンロールやブルースに遡り始めた、っていうのはあるよね。」

Marshall Crenshaw VS John Hiatt

golden(以下g):「大学2回生になってからレンタル・レコード店でバイトするようになって僕の音楽生活は一気に広がっていったんだけど、それまでは新しい音楽に出会うきっかけといえばラジオだったよね。」
blue(以下b):「ラジオ、よー聴いてたな。今はもう野球中継以外聴くことないけどな。」
g:「たまに山下達郎の“サンデーソングブック”を聴くくらいか。」
b:「中学生の頃はABCの“ヤングリクエスト”やったけど、高校生になってからはNHKの“サウンドストリート”を聴くようになった。」
g:「当時は佐野元春、坂本龍一、甲斐よしひろ、山下達郎、渋谷陽一、っていうラインナップだったかな、確か。」
b:「渋谷陽一の曜日はそんなに熱心には聴いてへんかってんな。坂本龍一の曜日もほとんど記憶ないわ。」
g:「特に熱心に聴いてたのは月曜日の佐野元春。」
b:「最新のカッコええ曲、しかもちょっとマイナーなのをよーかけてくれてたからな。」
g:「マーシャル・クレンショウも佐野元春のサウンドストリートで出会ったアーティストでした。」
b:「そうやったな。レンタル屋になかって、レコード探し回ったわ。」
Marshall Crenshaw / Downtown(1985)

g:「クールでシャープで都会的なロックンロール。」
b:「バディ・ホリー譲りの朗らかさと、エルヴィス・コステロみたいなちょっと鼻にかかったちょっと皮肉っぽいヴォーカル。」
g:「都市に暮らすモラトリアムな少年のイノセンスを感じさせるところなんか、国籍違いの初期佐野元春って感じだったよね。」
b:「ロックっていうてもいろんなんがあったからな、髪の長い兄ちゃんたちのハードロック系でも、やたらとおしゃれでスノッブなニューウェイヴ系でもないのんが聴きたかってんけど、そーゆーのんってあんまり音楽雑誌とかでは取り上げられてへんかってん。」
g:「ロックンロールっていうとヤンキーっぽいイメージもあったしね。革ジャンとバイクがセットみたいな。」
b:「そやねん。もちろん反逆的反抗的なロックもカッコええし惹かれてんけど、不良少年ではなかった自分としてはその一方で、ああいう見た目から反抗的反逆的っていうんではない普通の人が演る普通のロックが聴きたいっていう欲求があったんやと思う。」
g:「佐野元春のサウンドストリートでは、そういうアーティストをたくさん紹介してくれてたよね。ツッパリではない、精神の不良っていうか。」
b:「そう、精神の不良。見た目やファッションやなくて。佐野元春自身もそうだったけど、髪を伸ばしたり、革ジャン着たりバイク乗り回したり、みたいなことやなくてもロックンロールできるんやっていうのがな。」
g:「マーシャル・クレンショウもね、ポップなんだけど、すごく都市的というか、ストリートっぽい息づかいを感じたんだよね。」
b:「ポップさの中にちょっと翳りがあるっていうか。」
g:「クールな振りをして格好つけながら、どこか胸の内にシャープなナイフを大切に持っているような。」
b:「そういう感じな、表面的にはクールなんやけど、ちょっとしたシャウトとかに熱いもんがあって、スタイルやなくてスピリットっていうか、本当に大切なものは譲らへん、みたいなとこが共感ポイントやった。」

b:「ジョン・ハイアットもサウンドストリート経由やったような。」
g:「確か、コステロとデュエットした“Living A Little,Laughing A Little”だったかな。」
b:「実はスピナーズのカヴァーやったっていうのんを知ったのはだいぶ後やってんけどな。」

John Hiatt / Warming Up To The Ice Age(1985)
g:「この曲が入ってたんが、85年リリースの『Warming Up To The Ice Age』っていうアルバムで。」
b:「ジャケットだけにみたらえらいイモっぽい感じなんやけど、これがめっちゃ良くてな。」
g:「ルーツっぽい埃っぽさやアメリカっぽいワイルドさと、そういう中にちょっとナイーヴな内面が見え隠れするみたいなところがね。」
b:「そやねん。馬面で出っ歯でいかにもガサツなアメリカの田舎のおっさんみたいな冴えへん風体やのに、めっちゃ渋くてカッコええっていう。」
g:「イモとかガサツとか、誉めてるように聞こえないんだけど。」
b:「なんでやねん、めっちゃ誉めてるやん。こういう普通のおっさんが、プレイしたらめっちゃカッコええ、っちゅーのがええねん。“I'm A Real Man”とかもうゾクゾクするくらいカッコええやん。」

g:「太いギターとイガラっぽいシャウト、バックで鳴ってるロックンロールなピアノもいいね。」
b:「骨太なロックからソウルっぽいサウンドまで、奥行きの深さを感じたわ。」
g:「ハイアットはこのあと87年に『Bring The Family』という名作で大ブレイク、その後このアルバムを一緒にレコーディングしたニック・ロウ、ライ・クーダー、ジム・ケルトナーとリトル・ヴィレッジというバンドを結成。」
b:「そのあたりも渋かったなぁ。」
g:「マーシャル・クレンショウの方もブレイクは87年、映画『ラ・バンバ』にバディ・ホリー役で出演して知られるようになった。」
b:「あの役はずっぱまりやったなぁ。メガネをかけたクールでポップなロックンローラーって、マーシャル・クレンショウそのまんまやもんな。」
g:「ヘヴィメタルやエレポップがチャートを賑わせていた80年代にも、実はこういうルーツを追求した渋いアーティストがたくさんいたっていう。」
b:「このあたりから聴くものもどんどんマニアックになっていく。」
g:「他の奴らが知らないものを聴いているっていうプチ優越感?」
b:「それもないことはないけど、ほんまに好きなんはこーゆールーツっぽいやつやなって発見していったっていうことやと思うで。」
g:「まぁ、そうかな。」
b:「チャートを賑わせている最新流行のヒットソングとは違うところでいっぱいええアーティストがおるんや、っていう発見はやっぱりラジオの影響は大きかったな。」
g:「ラジオの、っていうか、信用できるDJを通じてってことだよね。」
b:「そうやねん。信用できるDJ、共感できるDJっていうのがポイントやろな。」
g:「今はDJの代わりがSNSだったりするのかもね。」

Scandal feut.Patty Smyth VS Lone Justice

golden(以下g):「今日のお題はスキャンダル・フューチャリング・パティ・スマイス。」
blue(以下b):「“The Warrior”な、俺的には大ヒット曲やったわ。」
g:「けっこう好きだったですねー。」
b:「いかにもな80年代型ポップ・ロックやけどな。」
g:「『Footloose』のサントラとかに入ってそうな。」
b:「そういうタイプやな。」
g:「プロデューサーはブロンディやナック、古くはスージー・クワトロを手掛けたマイク・チャップマンで、外部からのソングライターも導入して。」
b:「売る気満々で作られたレコードやな。」
Scandal feut.Patty Smyth / The Warrior(1984)

g:「かっこいいね。小柄で華奢っぽいのに、めっちゃパワフル。」
b:「パワフルなんやけど、筋肉系のパワーやなくて、意志の強さからくるパワーを感じるねんな。」
g:「ちやほやされたってあんたたちの思い通りにはならないわよ、妬まれようが謗られようがあたしはあたしよ、みたいな。」
b:「だからといってギスギスに突っ張ったりガチガチの頭でっかちになっているわけでもない、もちろん変に媚びて女としてのセクシーさを売りにもしない。そういうカッコよさっていうか。」
g:「キュートなルックスとやんちゃで明るいキャラの一方で肚は据わっている感じは、リンダ・ロンシュタットみたい。」
b:「アイドル的な人気でありつつ、けっこうちゃんと実力派って感じがな。」
g:「アイドル崩れが無理やりロックバンドに入れられてロック歌わされているんだろう、って当時は思ってたんだけど、そうでもなかったみたいだね。」
b:「山川健一の『今日もロック・ステディ』っていう本にパティのインタビューが載ってるんだけど、ニューヨークのヴィレッジで生まれて母親はライヴハウスを経営していたらしくて。」
g:「小さな頃からステージで歌っていて、ジミ・ヘンドリックスとジャニス・ジョプリンが大好きだったって言ってたね。」
b:「山川健一が“死んだ人ばっかりだな。”って言ったら“だいじょうぶ、私はヘルシーよ。”って。」
g:「最初の結婚相手はリチャード・ヘルだったらしいからね。リチャード・ヘルとの間にできたお嬢さんの名前Rubyはストーンズの“Ruby Tuesday”から採られたとか。」
b:「その割にはめちゃくちゃポップやけど。」
g:「まぁ、レコード会社の戦略とかいろいろあった感じはする。」

g:「スキャンダルっていうバンドはこのあとすぐに解散しちゃうんだけど、パティ・スマイスはソロで再デビュー。」
b:「ソロ・アルバムもけっこう好きやったわ。トム・ウェイツの“Downtown Train”演ってたり、その次のアルバムではドン・ヘンリーとデュエットしてたり。」
g:「ポップな中にもアメリカン・ロックらしい骨太さがあって、今聴いてもけっこうカッコいいよね。」
b:「80年代のリンダ・ロンシュタット的存在といえば、ローン・ジャスティスのマリア・マッキーやな。」

Lone Justice / Lone Justice(1985)

b:「けっこうカントリーっぽい音やったよな。それこそ70年代のリンダ・ロンシュタットのバンドっぽいようなカントリーっぽさとロックっぽさ。」
g:「プロデューサーはジミー・アイオヴィンなんだけど、トム・ペティやEストリート・バンドのスティーヴ・ヴァン・ザントが曲提供してたり、ハートブレイカーズのベンモント・テンチやマイク・キャンベルが参加してたり。」
b:「で、紅一点のマリア・マッキーが惚れ惚れするくらいカッコいい。」
g:「青い瞳のお人形さんのようなルックスとは裏腹に、恐いもの知らずの堂々とした佇まいと、ちょっとパンクっぽさもあるむき出しのワイルドな歌い方が素敵。」
b:「黙っておすまししてれば可愛らしいのに、顔を歪めてシャウトしまくるところがええな。」

g:「なんていうんだろう、、心の底から歌いたくってしかたがない衝動、あふれるような気持ちが抑えきれないマグマのようにとめどなく噴き出しているような感じ。」
b:「自分の中にある吹き荒れるような感情を、コントロールしないままぶっ放しているような感じやな。」
g:「当時ジャニス・ジョプリンの再来とも言われてた。声質やスタイルは違うけど、わかる気もするよね。」
b:「そもそも1985年という時代に古くさいカントリーロックを演ろうという気概がええよな。」
g:「気概というか、好きな音を好きに演ろうという感じね。」
b:「ただ、思ったより売れなかったのか、セカンドアルバムではカントリー臭さが取り除かれてふつうのポップロックに路線変更させられた上に解散しちゃったのは残念やったけどな。」
g:「まだまだ女性シンガー紅一点のロックバンドっていうのは、レコード会社がピンでシンガーだけをアイドル的に売りたがる時代ではあったんだろうね。」
b:「Go-Go'sのベリンダ・カーライルとかも、けっこうパンクっぽい弾けた感じやったのに、普通のアダルトなシンガーになってしもうてたりな。」
g:「でも、同じ1984年デビューのバングルスとか、肩肘張らずにナチュラルにロックしてるっていうか、無理に80年代の最新型を取り入れるわけでもなく、好きな音楽を自然に演ろうとしてる感じがあったけどな。」
b:「80年代半ばっていうのは、女の子が普通にロックできる時代の夜明け前くらい。彼女たちが道を開いていったんだろうね。」
g:「ルックスがいいと自らの意思に沿わずにアイドル扱いされて、女の子も大変だったよね。」
b:「ま、それは男もそうなんやろうけどな。そういうことで困ったことはないからわからんけど。」
g:「ぶっちゃけ、パティ・スマイスもマリア・マッキーも、最初はルックスに惹かれたでしょ?」
b:「いや、まぁ、そりゃぁ、そういう側面ももちろんないではないけど。」
g:「ルックスがいいということも一つの才能だろうから、その才能がある人はそれを活かせばいいわけなんだろうけどね。」
b:「そうでない人はそれなりに。」
g:「樹木希林と岸本加世子かよっ!」
b:「特定の世代にしかわからんツッコミやな。」
g:「あぁ、そう言えば思い出した。」
b:「ん?」
g:「パティ・スマイスって、ちょっと初恋の女の子に雰囲気が似てたんだよね。」
b:「あー。」
g:「小動物系の愛くるしい顔立ちで、でも芯のしっかりした子だったんだよ。」
b:「結婚はしない、60才になっても赤いドレスを着て踊ってたい、なんて言うてたっけ。」
g:「今頃どんな大人になってるんだろうね。」
b:「たぶんパティ・スマイスといっしょで、陰のある悪い男にひっかかって、子ども産んでから離婚してるはず。」
g:「すごいキメつけ(笑)」

David Bowie VS Bryan Ferry

golden(以下g):「80年代は新しいアーティストたちもたくさん出てきてた一方で、70年代から活動しているベテランたちもすごく頑張ってた時代でした。」

blue(以下b):「ロバート・パーマーやスティーヴ・ウィンウッドもブレイクしたし、フィル・コリンズやエルトン・ジョンも70年代組やな。」

g:「スプリングスティーンやジャクソン・ブラウンもそう。」

b:「ポール・マッカートニーやジョージ・ハリソンも現役バリバリやったし。

g:「新しいテクノロジーに刺激を受けたのか、ベテランたちもこぞって80年代的なサウンドを取り入れていた。」

b:「80年代サウンドが似合う似合わないに関わらず、そうせざるを得ないような感じやったんやろな。

g:「で、今日のお題は、デヴィッド・ボウイとブライアン・フェリー、と。」

David Bowie / Tonight(1984)

Bryan Ferry / Boys and Girls(1985)
 

b:「ん?この二人の80年代の代表作って、ボウイなら『Let's Dance』、フェリーならロキシー・ミュージックの『Avalon』なのでは?」
g:「いや、そうなんだけどね、その2枚ともリアルタイムではちゃんと聴いてなかったから。」
b:「あー、そーゆーことか。確かに聴いてなかった。名前とかは知ってはいたけど、なんかゲイっぽいよなーみたいな印象があって。」

g:「そんな身も蓋もないストレートな言い方は今の時代アウトですよ。」

b:「せやけど実際そーゆー印象やったんやもん。82〜83年、高1男子の無知と偏見なんかそんなもんやで。」

g:「まぁ確かに、妖艶というか淫靡というかスケベぽかった。」

b:「田舎の童貞高校生とはまったく縁のない世界やろ。」

g:「デヴィッド・ボウイやブライアン・フェリーってそもそも聴く側の美的センスが問われそうだよね。」
b:「耽美的とでもいうか、このヌメリのある淫靡な感じは、ブライアン・アダムスやアラームとは対極やからな。」
g:「あれくらいの年頃は、熱く拳を振り上げるのがしっくり来るからね。」

b:「とりあえず、バキューン、ギャギャギャーン、イェー!が気持ちいい年頃には、ボウイやフェリーは大人過ぎたな。」
g:「で、この2枚。『Let's Dance』と『Avalon』には到底敵わなくて日陰っぽい扱いをされてるけど、けっこう素晴らしい作品だよな、って、最近思って。」
b:「最近かよっ!」
g:「うん、まじでこの十年くらいかな。」
b:「当時は熱心に聴いてへんかったけど、後々に良さがわかるっていうのはあるけどな。」

 

g:「まずはボウイの『Tonight』。当時、メディアでは酷評されていたという印象があります。」
b:「そうそう。あ、駄作なんや、じゃあ聴かんでええわ、ってスルーしたもん。」
g:「“Blue Jean”とかはヒットしてたけどね。」
b:「そのヒットが、いわゆる売れ線狙いとか『Let's Dance』の二番煎じやとか言われてたな。」
g:「ボウイの歩んできた歴史を辿っていくとね、常に世間のアウトサイドでダークな部分を可視化しながら、しかも作品ごとにコンセプトを持って変化し続けてきたアーティストだからね。ボウイでさえも売れ線に走るのか、『Let's Dance』が売れて日和ったのか、って当時のボウイのファンは思ったんだろうね。」
b:「ボウイからしてみたら、この路線も変化し続ける過程のひとつ、というつもりやったんやろうけど。」
g:「良くも悪くも、肩の力が抜けた感じはするけど、その肩の力の抜けた感じがいいなぁって思ってて。

b:「力作や問題作を世に問うというのではなく、自然に心地よいものを演ろうとしたような。」

g:「“Don't Look Down”や“Tonight”はゆるめのレゲエ。“Tumble and Twirl”なんかはけっこうソウルっぽいし、“I Keep Forgettin'”はチャック・ジャクソンの62年のヒットをモータウン風に。」

b:「そのへんはけっこう好きやねんけどな、“Neibourfood Threat”とかロックっぽい曲がな、ちょっと無理矢理感っていうか取って付けたような感じがするねん。」
g:「カッコいい曲なんだけどね、ちょっとゴージャスな80年代っぽい音質が浮いてるっていうか。」

b:「ビーチボーイズのカヴァー“God Only Knows”なんてずいぶんトゥーマッチなアレンジになってて、最初はカヴァーって気づかんかったわ。」
g:「サブカル的なカリスマから、表社会のスーパースターを目指したみたいな。」
b:「タモリなんかはサブカル界のカリスマから表社会のスーパースターになったし、ビートたけしもアブナイ側の人だったから、充分あり得る話ではある。」

g:「本人がそういうことを狙ったのか、周りがそう仕立て上げようとしたことに乗っかったのか。」
b:「そういうものが結果的にキャリアの中で問題作とされてしまうのが、ボウイらしいところなんだけど。」
g:「でも、そういう諸々を取っ払って素直に聴けば、やっぱりクオリティの高いポップミュージックだと思うんだよね。」

b:「“Loving The Alien”とかイギー・ポップと共演の“Dancing With The Big Boys”とかな、ふつーにカッコええと思うわ。」


g:「ブライアン・フェリーの方も『Avalon』の二番煎じの印象があるんだけど。」
b:「うーん、フェリーの場合は二番煎じというよりは、長年演ってきて辿り着いた世界観を更に継承・発展させようとしたっていう印象?」
g:「いかにもブライアン・フェリー、っていう型を完成させたっていう。」
b:「ロキシー・ミュージックのことを語りきれるほど聴き込んでへんからよーわからんねんけどな、印象としてはそんな感じちゃう?」

g:「ソウルフルなリズムのうねり+うねうねとした歌にゴージャスなコーラス、っていうのが王道パターン。」
b:「正直ゆーてブライアン・フェリーの歌い方はあんまり好みではないねんけど。」
g:「水分量が高いというか、ヌメリがあってジェル状みたいな声質がね。」
b:「でもな、リズムがめちゃくちゃかっこええねん。ドタバタせずに余裕があって空間の広いドラムと、その間でモゾモゾとうねるベース、パーカッションも効いてるし。」
g:「ギターもかっこいいよ。ナイル・ロジャースやデイヴ・ギルモア、マーク・ノップラーらが参加してるけど、いずれもツボを心得た演奏っていうか。」
b:「弾きまくるんじゃなくて、ぎゅっと凝縮されたプレイやな。」

g:「ハードロック系とは対象的な(笑)」

b:「どの曲も基本は同じパターン。」
g:「『Avalon』もそうなんだけど、この心地よいリズムに身を委ねる快感みたいのが、聴いてるうちにだんだんクセになってくる。」
b:「そのリズムの反復が、どんどん心地よさを増幅させる仕掛けなんやろな。」
g:「気がついたらブライアン・フェリーの妖しい指使いに襲われてた、みたいな気分になるときってない?」
b:「そんな性癖はないねんけど。」

g:「まぁそれは冗談としても、アヤシイ世界、イケナイ世界にずるずると引き込まれていくみたいな。」
b:「まぁ、それはわかる。」
g:「デヴィッド・ボウイもブライアン・フェリーも、見た目イケメンでありながらどこか脆さというか危うさがあるよね。」
b:「ちゃんとしようとすればするほど、こぼれでるどうしようもなさ、みたいな。」
g:「大人になればそういう大人だからこそのどうしようもなさってわかるんだけど、子供の頃にはよくわからなかったなぁ。」
b:「ほんまはレコードに18禁のマークとかつけとくべきやで(笑)、ガキにはわからん世界や。」

g:「もう一回18才をやり直せるなら、こういう音楽を聴いてる大人っぽいティーンエイジャーをやってみたいなぁ、とか思ったりするんだけど。」

b:「いやぁ、十代をもう一回はええわ。いろいろめんどくさい。大人の方がラクやで。」





Glenn Frey VS Don Henley

golden(以下g):「年をとったら年月を感じるのが早くなるっていうけど。」

blue(以下b):「そやな。1年なんてあっという間に過ぎるし、10年くらい前のヒット曲くらいだと感覚的には“最近”やもんな。」
g:「あれ、どうしてなんだろうね。若い頃の一年とは濃密さが全然違う。」
b:「若い頃は初めての経験が多いからちゃう?」
g:「この80年代シリーズ、1983〜4年くらいはもうめちゃくちゃ書きたいこといっぱいあって、あの頃はものすごく濃密だったんだなぁって思ったんだよ。」
b:「音楽シーンがとかではなくて、ちょうどその頃の自分がなんでもかんでも刺激的を感じる年頃で、それがたまたま84年あたりやった、ってことやろ。」
g:「僕らが音楽をちゃんと聴き始めたのって79〜80年くらいじゃない?中学生になってすぐ。」
b:「僕ら、って、そもそも同一人物やからな(笑)」
g:「その79〜80年って、イーグルスはまだ解散してなかったんだよね。」
b:「ツェッペリンもやな。」
g:「海外のアーティストを好んで聴くようになったのが高校生になった82年だったけど、そのときすでにイーグルスって歴史上のバンドっていうイメージじゃなかった?」
b:「今日のお題の二人、ドン・ヘンリーとグレン・フライのソロが84年に相次いでリリースされたときには“あのイーグルスの中心人物が満を持してソロ・アルバムをリリースするのかっ!”って思った。
g:「イーグルスの解散からたった4年だったのに、っていう感じがするんだよね、今思うと。」
b:「80年から84年までの4年と2020年から2024年までの4年が同じ長さとは到底思えんな。」
g:「不思議でしょ?」
b:「リアルタイムを知ってるかどうかっていうのはあるやろうけどな。例えば、タイガースの掛布選手が一軍で活躍しだしたのが1974年、俺小学校3年くらいだったんだけど、それは鮮烈に覚えてんねん。」
g:「また古い話だねー。」
b:「今の40代くらいだと掛布は伝説の選手やろうけど、俺的には若手の頃から追ってきたリアルタイマーなんやな。ところが村山実になるともう超伝説的人物やねん。」
g:「ふむ。」
b:「村山実って1972年まで現役やってるから、掛布と村山って今で言えば中野拓夢と鳥谷敬くらいの距離感なんやけど、自分的にはものすごく離れてる感じがする、っていう。」
g:「要は、自分が認知する以前は紀元前的な感覚になる、っていうことだね。」
b:「田中角栄と佐藤栄作もそんな感じやな。田中角栄はリアルタイム、佐藤栄作は歴史上。西城秀樹はリアルタイムやけど錦野旦は歴史上。キャンディーズはリアルタイムで木之内みどりは歴史上。それから・・・」
g:「いや、それはわかったから、、、音楽の話をしようか。」
b:「お、おう、そうやったな。」

Glenn Frey / The Allnighter(1984)

g:「グレン・フライのシングル“Sexy Girl”が夏頃ヒットして。」
b:「ギンギンのロックではないけど、クールでええ曲でやなって思うたわ。」
g:「兄がなぜかイーグルスの『The Long Run』を持ってて、グレン・フライは一応認知はしてたんだよね。」
b:「“New Kid In Town”とか演ってた、イーグルスの軽い方の人っていう認識やったな。」
g:「今で言う“じゃない方”(笑)」
b:「“Hotel California”とか“Desperado“とか、名曲はだいたいドン・ヘンリーのヴォーカル曲の印象やもんな。」
g:「確かに。」
b:「たぶんベスト・ヒットU.S.Aで観たんやろうけど、“Hotel California”のライヴ動画、ドン・ヘンリーがドラム叩きながら歌ってて、ヒゲモジャで存在感があって。グレン・フライの方は、どれが誰やら全然わからんかった(笑)」

g:「そういうグレン・フライらしい、ソフトな軽さがこのソロでも印象的だよね。」
b:「“I Got Love”とか“Lover's Moon”とかA.O.Rっぽいのが特にグレン・フライっぽいイメージどおりでけっこう好きやったわ。」
g:「初期のイーグルスのカントリーっぽいヒット曲はグレン・フライのヴォーカル曲だったね、思い起こしてみると。」
b:「“Take It Easy”に“Peaceful Easy Feeling”。」
g:「カントリーっぽいイメージがあるよね。」
b:「“Tequila Sunrise”もグレン・フライか。」
g:「ところがこの人、A.O.Rだけじゃなくて、ノリノリのロックンロールがけっこう好きみたいで、タイトル曲の“The Allnighter”もわりと50'sっぽいし、“Better In The U.S.A”なんて軽いノリのロックンロールも演ってたり。」
b:「サントラかなんかでも“The Heat Is On”とか派手なん演ってたしな。」

b:「そもそもグレンはエルヴィスとか大好きやったんやろな。粋なロックンロールと甘いバラード。若く勢いがあった頃のアメリカン・ドリームへの憧れ、みたいな。」
g:「グレン・フライとは対称的に、ドン・ヘンリーはビターチョコレートみたいに苦くて重い雰囲気を漂わせてるよね。」
Don Henley / Building The Perfect Beast(1984)
b:「大ヒットした“The Boys Of Summer”なんて、イーグルスへの郷愁が漂いまくってる。」
g:「通りには誰もいなくなった/浜辺にも誰の姿もない/吹きぬける風がもう夏は過ぎてしまったことを告げていく、みたいな歌だよね。」
b:「ただ、郷愁に浸るだけじゃなくて、音楽的にはミッド80'sっぽい音を追求してたりもする。」
g:「“All She Want To Do Is Dance”とか、ファンキーな要素もあるソウルサウンドだったり。」
b:「“Man With A Mission”みたいなロックンロールや“You Can't Make Love”みたいにグレン・フライが演りそうなミディアムのポップもあったりけっこう幅広い。」
g:「ドン・ヘンリーのイメージにしっくりくるのは“You're Not Drinking Enough”みたいな渋めのバラードだけどね。」

g:「長いこと同じ釜の飯を食った同士でもあり、バンドのイニシアチブを巡るライバルだった二人には、本人たちしかわからないような愛憎入り交じるような感情ってあったんだろうね。」
b:「お互いが影響を与え合ったり受け合ったり。顔も見たくないと思う時期もあれば、コイツこそ最高のパートナーだと思うようなこともあったやろな。」
g:「おまえがそっちへ行くなら俺はこっち、みたいな。」
b:「少年の頃は似たようなタイプだった二人が、そうやってそれぞれの路線を確立していったりするもんやねんな。」
g:「この二枚のアルバムを聴く限りでは、二人ともイーグルスという偉大な過去からどうやって遠ざかろうかとしている感じがするよね。」
b:「グレン・フライはけっこう未練なく軽々と、イーグルス時代にはできなかった本来の自分らしい音を演ろうとしていて、ドン・ヘンリーの方は逆に、未練たっぷりながらも無理してイーグルスとは違う方向を見出そうとしてる感じがするねんけど。」
g:「グレン・フライの方が、ちょっと立場逆転してスッキリしてる感じ。」
b:「初期はグレンがリードしてたのにいつの間にかドンの存在感が増して、気がついたら“じゃない方”扱いにされてた鬱憤がありそうやな。」
g:「ドン・ヘンリーは、昔のライバルを無視してるフリしてめっちゃ意識してる(笑)」
b:「イーグルスをちゃんと聴くより先に二人のソロを聴いてるから、イーグルス時代から追いかけてきた人が聴くのとはだいぶ印象が違うんやろな。」
g:「初期からイーグルス聴いてる人からしたら、イーグルスそのものも初期と末期では違うバンドみたいだろうし、聴いた時代によって印象がずいぶん変わるかも。」
b:「改めて聴くと二人とも、アメリカンのルーツ・ミュージックに根ざした音を吸収しながら、自分流に消化して表現していたアーティストやったんやな。」
g:「若い頃にはなんとなくいいなと思ってただっけだったけど、聴き直してみると感慨深いね。」
b:「わりと普通にまとめたな(笑)」

The Jacksons VS Prince & The Revolution

golden(以下g):「80年代といえば、マイケル・ジャクソンとプリンスは避けて通れないよね。」
blue(以下b):「モンスター級のアーティストやからな。」
g:「実は二人とも、そんなに熱中して聴いたわけじゃないんだよね。当時も今も。」
b:「うん、正直なとこ、そうやな。もちろん嫌いではないんやけど。」
g:「でも、積極的に聴いてなくても聴こえてきてしまうくらい、ビッグヒットを連発してたよね。」

b:「マイケルの『Thriller』なんか、あらゆる場所で目にしたし、聴こえてたしな。どこがええんか全然わからんかったけど。

g:「マイケル・ジャクソンってやっぱりすごいんだな、って思ったのは『Thriller』よりも、その後ジャクソンズ名義でリリースされた“State Of Shock”を聴いてからでした。」

b:「これ、ミック・ジャガーがめちゃくちゃかっこええねんけど、そのミックと完全に渡り合ってるんよな、マイケルが。」
g:「ムーンウォークとか、そういうダンサーやパフォーマーとしてではなく、ヴォーカリストとしてやっぱりすごい人なんだな、って。」
b:「あの曲が入ってたアルバムって、一応ジャクソンズ名義なんやけど、実質はソロの寄せ集めっぽかったけどな。」

The Jacksons / Victory(1984)

g:「このアルバム、マイケルは“State Of Shock”以外には兄ジャーメインとの“Torture”に参加してるのと、完全にソロの“Be Not Always”の2曲のみなんですね。」
b:「でも、その2曲がまた秀逸な出来という。」
g:「“Torture”のジャーメインとの掛け合いはいいよね。」
b:「俺、マイケルはほんま好みではないんねんけど、マイケルのバラードは好きなんよ。なぜか。」

g:「“Be Not Always”なんて、バックはキーボードだけのドラムレスなシンプルなアレンジでこれだけ聴かせてしまうっていうのは、歌の持つ力そのものだよね。」
b:「ほんまマイケルのバラードはええよ。ダンスナンバーはチャカチャカとやたらうるさくて全然聴いてられへんねんけど。」
g:「さっきも言ってたよね。」
b:「『Thriller』で聴くのは“Human Nature”だけ。『Bad』は“Man In The Mirror”。」
g:「どっちも名曲だよね。」
b:「“I Just Can't Stop Loving You”もええし、もっとええのが『History』に入ってた“You Are Not Alone”な。“Earth Song”もええし、ベタやけど“Heal The World”も泣ける。」
g:「マイケルは苦手といいながら、けっこう聴いてんじゃん(笑)」

b:「それはともかくな。プリンスもいまいち苦手でな。」
g:「そう言いながら聴いてるんでしょ(笑)」
b:「まぁ、聴いてんねんけど。」
g:「でもほんと、最初に“When Doves Cry”のMTVとか観たときは、なんか気持ち悪い感じしかしなかったよね。」
b:「まぁ高校生とかくらいやと、自分の共感の範疇以外はなかなか受付けられへんもんやからな。あれに共感できる高校生の方が異常なんちゃうか。」
g:「プリンスって実はかっこいいの?って思ったのは、『Around The World In A Day 』を聴いてからでした。」

Prince & The Revolution / Around The World In A Day(1985)

b:「“Raspberry Baret”がなんともポップで、気色悪いなりになんかだんだんと気持ちよくなってきたんや。」

g:「全然意識してないときにふと♪ラーズベリベレ♪なんてフレーズが出てきて、それがずーっと頭から離れないようになるような、そんな病みつき感があるよね。」
b:「そーなんよ。プリンスって。」
g:「いつの間にか脳みその中に入りこんできてる。」
b:「嫌よ嫌よも好きのうち、みたいなね、倒錯感がやがて中毒になっていくみたいな(笑)」

g:「“America”を聴いたときに、普通にロックだな、って思ったけど。」
b:「『Purple Rain』もかなりロック寄りやったけど、このアルバムはギンギンのロックというより中期ビートルズっぽい感じもあったから入りやすかったな。」

g:「“Condition Of The Heart”みたいなサイケデリックっぽい作り込んだ曲があったり、“Tambourin”みたいな実験的でミニマルなファンクがあったり、曲のバリエーションも広くて。」

b:「気色悪いヌメヌメ感も低めやしな。プリンスのレコードで一番アクが少ないんちゃう?」
g:「プリンスの作品としては、今思えば大人しすぎるくらいだけどね。」
b:「まぁ、確かに。ただ、『1999』や『Purple Rain』でのドぎついプリンス臭を薄めてくれたから自分のように拒否感があった人にも届いたという面もあるかもな。」

g:「ジャクソンズの『Victory』もプリンスの『Around The World In A Day』もどっちも、本人のナンバーワン・スタイルというよりはアナザーサイドっぽいかもね。」
b:「大ヒット作の揺り戻しというか、こういうのも演っちゃえるんだけど的な。」
g:「そういうのがサラッとできるところが天才の天才たるところかも知れないね。」
b:「サラッとかどうかはわからんけどな。」
g:「大ヒット作では本来やりたいものよりもやや力み気味・飾りすぎでウケ狙いに寄り過ぎたから、もっと自分自身の本質に近いものをスッと出してみた、っていう印象もある。」
b:「ヒット前だったらプロデューサーに修正されるけど、ヒットした後だから口をはさませへん、みたいな。」
g:「マイケル・ジャクソンって、本当のところはどんな人物だったんだろうね。」
b:「プリンスもな。」
g:「二人とも、後年になるに連れて、演じたキャラの仮面が脱げなくなって過剰なプレッシャーに追い込まれていたような気もするんだよね。」
b:「そういう点でも、この時期の『Victory』や『Around  The  World  In A Day』はちょっと余裕を感じるな。大ブレイクまで必死に登り続けて、ちょっと力抜いて軽く演ってみた、みたいな。」
g:「そういうものすら絶賛されるに至って、揺るがないモンスター・アーティストになっていってしまった?」

b:「そういう面もあるやろな。」
g:「数年後にリリースされる『Bad』や『Sign Of The Times』みたいな弩級の作品は、ひょっとしたら作らなかったほうが本人にとってはよかったのかも知れないね。」
b:「いやぁ、天才にとっては、自分の才能を押し留めることのほうが不幸なんちゃうか?」
g:「そうなんだろうか。」
b:「いや、知らんけど(笑)」



Appendix

Profile

golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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