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◇うたのしくみ

無題
うたのしくみ / 細馬 宏通

「目から鱗」という言葉があるけれど、この本に書かれている歌/音楽への考察はなかなか目から鱗が落ちるような内容だった。
音楽を文章で語ることは本当に難しい。
そもそも音楽は物体ではなく、従って大きさや重さやスペックで音楽を伝えることはできない。
むしろ香りや味わいといった感覚的に感じるものであり時間の経過とともに膨らみ消滅するものであるのだから。
なので、私たちは音楽を語るときについつい“かっこいい”“素敵”“感動した”“最高だー”なんていう個人的な印象を述べて済ましてしまいがちになってしまうのだけれど、音楽というものの特性を鑑みるとそれはそれでありというか、むしろ正しい形なんじゃないかと思うんですね。
なんとなくそんな感想をただ言うだけでは音楽を伝えた気がしないので、ギター・プレイやフレーズだけを取り出したり、歌詞を引用してみたり、演奏者のバイオグラフィーに触れてみたり、或いは個人的な経験を重ね合わせたりしたりしてしまうのだけれど、それでそれなりの文章が書き上がったとしてもそれはやっぱり文章でしかなくて、音楽を伝えることができるわけではないし、まして音楽そのものとはまるで別物なんですよね。

この「うたのしくみ」で書かれている考察は、そういうものとはまるで違っていて。
歌詞とメロディーとアレンジのみならず、フレーズやトーンや構造や、或いは歌詞で歌われている感情や物語やその時代背景や文化的背景までもの全体を不可分な一体のものとして捉えて分析しているのです・・・と説明してもなんのこっちゃわからんすね。。。
例えば。
「 ボサノヴァには一番、二番がなく同 じ歌詞を繰り返す。一番二番とすすむ歌とは異なる独特の身体感覚がある。感情の円環を祝福する構造を持っている。」
「ユーミンの“卒業写真”は意図的にSHの発音が多用されている。写真、青春、叱って。サ行の中でもSHの音は静けさに関する言葉を導く一方で人の注意を惹く。」
「唱歌“お正月”、歌詞の中で3回登場するおしょうがつという言葉は、それぞれメロディーもテンポも異なっている。そのことが、歌い始めでは遠くにあるお正月がくりかえされるごとにだんだんと現在になってゆくことを表現している。」
「ポール・サイモンの“恋人と別れる50の方法”で執拗にくりかえされる脚韻。登場人物たちはその名前が持つ韻によって行動を操られている。歌の世界では、韻が物語の行方を左右することがある。」
「ブルースの構造は掛け合いであり、ボケに対してのツッコミで成り立っている。歌詞をひとうなりしたあとの楽器による合いの手もツッコミとして機能している。」
うむむ。
要点だけ抜粋してもなんのこっちゃか意味不明かもしれませんね、やっぱり。
興味を持たれた方はこちらのサイトをぜひ。

著者の細馬宏通さんは滋賀県立大学人間文化学部の教授で、専門は会話とジェスチャーの分析や19世紀以降の視聴覚メディア研究。ミュージシャンとして「かえる目」というバンドでも活動しておられるそうです。




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[C2514]

わんわんわんさん、再びこんばんはです。
無意識の動き、それです!
多分曲の作者ですら意識していない無意識を深く捉えておられるのがすごい。
こーゆー角度の音楽の見方ってかつてなかったなー、と感動したのでした。
  • 2015-03-18 22:48
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C2511]

へえ、これはおもろそうな一冊です。
音楽を聴いた感動を言葉にして誰かに伝えることのむずかしさ。
これは想像以上に高いハードルであります。

音楽を聞いたときに言語化できないなにげない心の動き「無意識の動き」を見事に言語化していますね。
  • 2015-03-18 21:47
  • わんわんわん
  • URL
  • 編集

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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