MyVintage番外編・SNN、しょーもないけどにくめないシリーズ、最後の10枚目は清志郎です。 これも、しょーもないなんていうとファンの人から怒られそうな大名盤。 でも、あえてしょーもないと言ってしまうのは、清志郎自身が、突然のハプニング的に降ってわいてきた敬愛するブッカー・T&MG’ズとの録音のチャンスにウキウキして、自らのキャリアの中ではあえて番外編的に録音したであろうと思うからです。 そもそもこのアルバムが制作されるきっかけは、スティーヴ・クロッパーやドナルド・ダック・ダンらが91年にブルース・ブラザース・バンドのメンバーとして中野サンプラザで公演したときのことらしい。 客として来ていた清志郎は、アンコールで呼ばれて一曲歌ったらえらい盛り上がって、MGズのメンバーも何だかコイツはすごい奴らしい、ってことになって打ち上げの焼き鳥屋にも呼ばれてすっかり盛り上がって、だったら一緒にツアーしたらって話になって、いや、ツアーするんだったらアルバム一枚録音しようぜ、みたいなことにどんどん周りが盛り上がっていって・・・レコーディングが決まってからも、清志郎本人は逆に「MGズと共演なんてそんな恐れ多いことしちゃまずいんじゃない?」と困っていたのだそうだ。 録音に際して用意した曲のほとんどは過去のボツ作品、新しく用意したのもいわゆる名曲ソウルのリメイクというやっつけ仕事。そしてアレンジ含めてそのまんま60年代スタックス・サウンド。 Boysはちょっと“I Can't Turn You Loose”だし、雪どけは“I've Been Loving You Too Long ”だし、世間知らずは“When A Man Loves A Woman”だし、スティーヴ・クロッパーとの共作となっている MTN はまんま“FA-FA-FA-FA-FA”だし。 でも、これらは全部パクリではないのです。 だってオリジナルの当人たちが演奏しているんだもの。 高齢化社会でのファンクっぽさ、ジョン・リー・フッカーみたいなブギーのカモナベイビー、ママ プリーズ カムバックでのドスの効いたベース・ラインとヘヴィーなグルーヴ、彼女の笑顔なんてソウルフルでブルージーで、アルバート・キングとMGズの共演盤みたい。もう、最高にかっこいいですよね。
Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。 “日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。 自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。
嬉しそうですよね、このアルバムでの清志郎。
毒のある歌や孤独の歌もここでは明るめで。
発表当初はその明るさが妙に違和感だったんですが、今になってみるととても感慨深いです。