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♪十七歳の地図 ‐MV番外SNNその4‐

十七歳の地図
十七歳の地図 / 尾崎豊

Released:1983

このアルバムをしょうもない、と言ってしまうと熱狂的なファンの人から誹謗中傷を受けるんだろうか。
でも、正直な感想だから仕方がない。
もちろん、この作品の質についてしょーもないと言っているわけではない。そういう意味ではなく、今の自分にとってはしょうもない音楽だということ、四十代も後半に差し掛かったおっさんが聴いて心に響く音楽ではない、という意味であることをご理解いただきたい。
僕は尾崎豊の熱心なファンだったことはないし、友だちと尾崎豊について語り合ったこともないし、CDも一枚も持っていない。
持っているのはLPレコード。まだ実家の棚の奥深くに眠っているはずだ。
そして十七歳の頃、このレコードに収められた歌、歌に込められた思いに心を震わせた少年だったことは確かだ。

NHKのサウンド・ストリートだったかな、深夜のFMラジオから“ 15の夜 ”が流れてきて、当時ブルース・スプリングスティーンやジャクソン・ブラウンを知ったばかりだった僕は、日本にもこんなストリート感覚を持ったロッカーが出てきたことに驚き、そしてそのシンガーがまだ18歳だということに二度驚いた。同世代でこんな歌を歌う奴がいるんだ!ということに興奮して、翌週には彼のデビュー・アルバムを手に入れた。
そして、そこに綴られた、十代だからこそのリアルな言葉に共感した。そう、そうなんだよ、そんな気持ち。友だちとも誰とも共有できなかった思いをコイツは歌ってくれている、と。
パッとしない毎日、欺瞞に満ちた大人社会へのいらだち、自分自身へのどうしようもやり場のない煮え切らない感とふがいなさ、やりきれなさ。
だからといって勉学やスポーツにいそしむわけでもなく、仲間とつるんでたむろするわけでもなく、親や教師と、時には警察官や電車ですれ違っただけのくたびれたおっさんと小さな小競り合いを繰り返しながら、ただただ日々募っていく不安と不満の中で喘いでいた。
授業なんて上の空で、教室の窓から空を見上げながら頭の中で“ 街の風景 ”を繰り返し口ずさみ、大好きな女の子と“ I LOVE YOU ”や“ OH MY LITTLE GIRL ”を聴くシーンを妄想し、学校帰りに自転車飛ばしながら“ 十七歳の地図 ”を大声で歌い、"ハイスクール Rock‘n’Roll"でカラ元気を出して、まったく"はじまりさえ歌えない"、と自嘲し、悔しいことがあった夜にはひとり“ 僕が僕であるために ”を聴きながら拳を握りしめた。
その頃大好きだったたくさんのロック・バンドはどれも威勢良く突っ張って世の中に挑戦するか、クールにしらけて見せながら世の中を斜めから笑い飛ばそうとしていたけれど、尾崎豊の歌はもっと正直だった。そしてとても弱かった。自分の中にある弱さをちゃんと見せてくれた。そのことは、あのやり場のない心を抱えた十七歳の僕にはとても助けになったのだった。

弱さ。尾崎豊を聴かなくなったのもその弱さゆえのことだったろうと思う。
ブルースやR&B、もっとしたたかでふてぶてしくて強度の強い音楽の魅力を知って以降は、僕は彼の弱さを丸出しにしたナイーヴな音楽に共感することができなくなってしまったのだ。
真っ暗だった高校時代も、本当は愛にも自由にも恵まれていたことに、薄々は気づいていた。そのことを認めてしまうと今いる生ぬるい場所から永遠に抜けだせなくなってしまうからそのことを認めたくなかったのだ、と今はそう思う。自分の弱さを環境のせいにして駄々をこねていただけなのだ、と。
あんたの歌う愛って何だ?あんたの歌う自由って何だ?
あんたはじゅうぶんに愛され、じゅうぶん自由にやってきているんじゃないか?
本当の自由はいくら願っても与えられることはない。自分の心の内にどう確保するかでしかないのだ。
そんなことを考えながら、十代のカリスマとしてブレイクしていくその後の尾崎豊のことを半ばしらけた目で見ていた。

と、そんなわけで、自分にはとうの昔から尾崎豊の歌は響かない。
それを、少年の心を忘れた大人になったと言われるのなら、それはそれでいいと思う。
愛だ自由だとのたうちまわって悩み叫んだ挙げ句に26で命を落とすよりはその方がずっとよかった。
もし彼が今も生きていたならば、きっとそのことを実感しているはずだ、と思う。
50も間近になって、白髪混じりで腹も出っ張ってシワも増えた尾崎が、ナツメロ番組かなんかで“I Love You”を歌うのを見てみたかったな。
それはそれで奴のこと、絶対かっこいいに決まってる。



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コメント

[C2430]

GAOHEWGⅡさん、こんばんは。
なるほどね、尾崎豊と昭和フォークの類似性ね。
確かに僕たちの世代が、昭和フォークを最後にリアルで(といっても小学生でしたが)経験した世代かもしれません。チャゲアスも長渕も最初はフォークだったところから知ってる(笑)。
本人は否定したとしても、尾崎豊の中にそういう影響があったことは確かでしょうね。

[C2429]

golden blue様 こんばんは

尾崎豊はよく西岡たかしと比較されるので
後追いで聴いてみました。
弾き語りでグイグイ惹きこむような調子や
弱さをさらけ出したメッセージは
昭和フォークから続く要素も
多かった気がします。

ちょっと恥ずかしいから
こっそり聴くっていうスタンスですが
たまには尾崎の熱を浴びるのもいいです。

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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