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♪PUSSY CATS -MV番外SNNその1-

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Pussy Cats / Harry Nilsson
Released:1974

先月の記事でezeeさんから、「次は“しょーもないけど憎めないアルバム100選”を」とのコメントをいただきました。
“しょーもないけど憎めない”(笑)、ハハハ、確かにあるある。
胸を張って「これは名盤!おすすめ!」とはとても言えないけれど、どこか愛着があって捨てがたいアルバム。
100選とまではとてもいかないけれど、MyVintageシリーズ完結前に、番外編として10枚ばかり選んでみたいと思います。
題してSNN、S(しょーも)N(ないけど)N(憎めない)。
まぁ企画自体もしょーもないけど憎めない、ってことで(笑)。

さて、“しょーもないけど憎めない”という言葉でまず真っ先に思いついたのはこのアルバムでした。
ニルソンの“Pussy Cats”、タイトルといいジャケットといい、既にしょーもなさ満点。
プロデューサーはジョン・レノン。ジョンがヨーコさんと別居していた1973年~74年、いわゆる「失われた週末」の時期に録音された作品で、ニルソンはジョンと共に夜な夜な飲み歩いては乱ちき騒ぎを繰り返していた仲間だったらしい。

ニルソンといえば有名なのは“Without You”など哀切で美しいバラードを歌うシンガーのイメージが一般的なのだけれど、このアルバムで聴けるニルソンはしゃがれ声の酔っぱらいみたい。
1曲目のMany Rivers To Cross からしてもう、ダルい倦怠感とヘヴィーな絶望感で満ち満ちている。ジミー・クリフの原曲にある崇高な美しさやピンと張った艶感を見事にぶち壊しまくっていて、で、そこはかとなくしみじみとさせてしまう痛々しい感じがたまらない。コーラスにはもちろんジョンも参加してぶっきらぼうにシャウトしていてかっこいい。
この時期ジョンは同時進行でフィル・スペクターと“ROOTS”というオールディーズのカバー・アルバムを録音中で、ジョン的にはカバーがマイ・ブームだったのだろう。
しかも、原曲を全く解釈を変えて演るのが気に入っていたみたいで、結局お蔵入りになってしまった“ROOTS”に収録される予定だった、重い狂気を感じるBe My baby とか、リンゴ・スターの同時期作にあるOnly You とか、かなり原曲の雰囲気をねじまげてというか、原曲の裏の感情を引っ張り出している感じがかっこいいんだな。
ドリフターズで有名なSave The Last Dance For Meもそんな感じで、ノーテンキな原曲を、恋人が他の男と踊るのをキリキリした感情で見つめ、「最後には僕と踊ってほしい。」と懇願する情けない男の哀れな気持ちの歌に変身させてしまっている。
ひねくれ者のジョンらしいアレンジだと思う。そしてヨーコさんを失った当時のジョンの心境がこぼれているようで。

他に秀逸なカバーといえば、ディランの荒っぽい歌をもっと荒っぽくしたようなSubterranean Homesick Blues、それから〆のブリブリのロックンロール、Rock Around The Clockだな。
この選曲も多分ジョン主導に違いない。

ニルソンのアルバムなのにジョン・レノンのことばっかり書いていますが、それくらいこのアルバムにはジョンの影がしっかりと色濃く反映されていて、All My LifeMucho Mungo/Mt. Elga やLoop De Loop なんかも、同時期のジョンのアルバムに入っていてもおかしくない佇まい。録音のメンツも、クラウス・ヴアマン(b)やジェシ・エド・デイヴィス(g)、ジム・ケルトナーにリンゴ・スターとジョンのセッションではお馴染みのメンバー。ニルソンと同じく飲み仲間だったというキース・ムーンや、先日亡くなられたボビー・キーズさんも参加しています。こういうメンバーとわいわいやりながら、ニルソンもチョーシにのってジョンのやりたい放題を喜んで楽しんでいたのかもしれない。
そんな愛すべき酔っぱらいたちの、くだらなくもキリキリと切ないこのレコード、間違っても名盤とは呼べないけれど、だからこそ愛おしい、そんな感じなのです。




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コメント

[C2423]

波野井さん、こんばんは。
このアルバムに関しては、ニルソンのというよりも、ジョンの裏アルバムって感じですね。
「心の壁、愛の橋」の雰囲気です。

SNN、しょーもないシリーズですが、しばらく続く予定(笑)。

[C2422]

ニルソン、実は1枚もアルバム持ってないんですよ。

でも、すっごくよさげですね!
紹介ありがとうございます!

SNN第2弾も楽しみにしてますね(^^)!
  • 2014-12-09 21:46
  • 波野井露楠
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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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