MONKEY PATROL / ザ・プライベーツ Released:1988
80年代の半ばは、たくさんの日本のロック・バンドが世に出た時代だった。
兄貴くらいの世代から同世代くらいまでにあたる彼らの音楽の特徴は、実に自然にロックしているということだったと思う。
日本語で歌うのか英語のままで歌うのかという論争のあった時代の「日本のロック」はあくまでも肩ひじ張って背伸びしている『』付の「ロック」だった。どこか借り物感があった。自分の生まれ育った文化とは違うけれど新しいものに衝撃を得てそのことを一生懸命取り込もうとしているような感じ、良くも悪くもその努力が見えてしまうのだ。何とか自分がかっこいいと思ったあの感じになりきって再現してみたい、という雰囲気がつきまとっていたし、80年代前半に活躍した人たちですら影響を受けた人のスタイルをそのまんまいただいてしまいました的なことが往々にしてあった。それとこれは良くも悪くもだけど、独特の日本人くささ。清志郎や桑田佳祐ですら、昭和的な日本の歌謡曲からの影響がずいぶん垣間見えたし、そうでない人は日本的な影響を無理に否定しているような感じがした。
ところがこれ以降の世代の演るロックには、そういう借り物感、あるいは「お勉強してきました」感がすっかり希薄なのだ。
思春期の頃にはもうロックが自然に身近にあって、ロックを聴きながら育ってきたというナチュラルな感じがある。
チャック・ベリーもマディ・ウォーターズも、ビートルズもストーンズも、エアロスミスもピストルズも、そしてRCもスターリンも、全部対等な距離で「ただのロックンロール」として吸収してきたようなしたたかさと、それらの音楽への素直なレスペクト。それから、借り物や直訳じゃない自分の言葉で自分の視点で世界を切り取ってきた歌。
もっともこの後の世代になると、「ロック」であることすらこだわりのない自然体の世代が登場してくるのだけど。
SUNSET SONRISE~
LET’S GO CRAZY BIRDS WIN
CANNONBALL CITY
追憶のハイウェイ
ANYTIME ALRIGHT!
美しき絶望
いつも…
CITY COCKTAIL
BREAKIN’ SUNSET FASHION 2
TURTLE DANCE STOP BREAKIN’ DOWN
SHERRY FLASH BACK GREENY
LUCKY MAN そんな世代の日本のロック・バンドの中で、とりわけ最高!というわけではないけれど、妙に親しさを感じてしまうのが彼ら、プライベーツ。なんていうかなぁ、彼らの独特の軽さとタフさの、悪っぽさと生真面目さのバランス感、もちろん黒っぽさやコンパクトなビート感も含めて、ピタッとフィーリングが合う感じなのです。
ボクシングには体重によって厳格に階級分けがあるけれど、一般社会でもそういった階級分けがあるとすれば、僕の階級はおそらくフライ級かライト・フライ級。ヘヴィー級の人たちと同じリングでは到底闘えない。そもそも闘い方も持ち味もまるで違う。
プライベーツに感じるのはそういうフライ級っぽさ、っていうか(笑)。
例えばヘヴィー級といえばツェッペリンやメタリカ、ストーンズですらバンタムかミドル級かな・・そもそも戦うフィールドが違うよ、って感じで自分たちなりの方法で飄々と演り続けている、そんなところがいい。
例えば♪好きでもない物を身にまとうなんて俺には無理だぜ、って歌う
LUCKY MAN 。
この歌みたいな、軽さとこだわりの絶妙のバランス。
ブルース感覚のとらえ方、受け止め方と、それをどう解釈して日常を乗り切るか、みたいなスタンス。
こういうところ、共感してしまうのだ。
軽い。小さい。
でも、それでいいんだ。
ゾウやクマやライオンじゃない、所詮モンキーだもの。
フライ級で戦うために大切なことは、フットワークの軽さとタフさと戦略、そして最後は気持ち。
パンチ一発で相手を倒せないからこそ、そういうことが大事。
自分のスタンスをまっとうする。
そしてそのことを自然にやれる、やり続けられる、ってことが何よりだよな。
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アルバム出るんですね、30周年記念盤。
2枚組のカバー集は魅力的ですねー、ゲスト陣も大好きな人が大勢揃っていて、これは買いです。