Moondog Matinee / The Band Released:1973
golden(以下g):「秋ですね。」
blue(以下b):「秋ですな。」
g:「秋といえばザ・バンドなんだよな。」
b:「うん、その感じ、わかるー。」
g:「やっぱりザ・バンドは一枚選んでおくべきだよね。」
b:「そら、当然やね。」
g:「どれか一枚となると、歴史的名盤として“Music from Big Pink”かな?」
b:「いやぁ、名曲どっさりの名盤度でいうことならセカンド“The Band”でしょう。」
g:「ファンキーさなら “Stage Flight”も捨て難いんだよね。」
b:「無人ライヴ録音だったアルバムやね。」
g:「ザ・バンドはけっこう昔から聴いてるんだけど、高校生の時にベスト盤借りてきてさ、なんともワビサビの効いた感じがね、いかにもアメリカの音楽って感じで。」
b:「でもベスト盤ばっかりずっと聴いていたから、アルバムをちゃんと聴いたのはずいぶん後だったんよね。」
g:「他にもっと聴きたいモノがいっぱいあったし、それに何しろお金がなかった(笑)。」
b:「ベスト盤はできれば選びたくないとなると、ここは集大成的に“The Last Waltz”か?」
g:「でもあれ、ゲストが多くてちょっと散漫なんだよな。むしろディランとの絡みで言えば“Basement Tapes”かな?」
b:「あれは生々しいけど、やっぱり所詮デモ・テープやで。それならいっそ“Planet Waves”のほうが作品として素晴らしいぜ?」
g:「それってディランのアルバムじゃん(笑)。」
b:「確かに(笑)。演奏は確かに素晴らしいけど、やっぱりレヴォン・ヘルムやリチャード・マニュエルの歌が入っていないとね。」
g:「うん、ザ・バンドの大きな魅力のひとつはやっぱり歌なんだよね。」
b:「いわゆるヴォーカリストではない、楽器演奏者としての歌への気持ちの込め方やね。」
g:「そもそもザ・バンドをディラン絡みでは考えたくないよね。」
b:「元々ロックンロール・バンドだからね。」
g:「ザ・バンドのロックンロール・バンドっぽさと言えば・・・」
g,b:「Moondog Matinee!!」
b:「決まりやね。」
g:「実は一番聴いているザ・バンドのアルバムはこれかもね。」
b:「ムーンドッグ・マチネーに関するエピソードって、あれが好きやねん。」
g:「?」
b:「清志郎が“カヴァーズ”を作ったとき、本当はタイトルを“ちょっとマチネー”にしたかったって話(笑)。」
g:「誰にも通じないからやめとけって止められたんだよね(笑)。」
ムーンドッグ・マチネーは、1973年発表の6作目、ロックンロールやR&Bのカバー曲集。
1stや2ndでの“古き良きアメリカ”を探求したザ・バンドの老成したような渋い魅力、いわゆる侘びさび感とは少し違うけれど、このアルバムのザ・バンドのロックンロール・バンドっぽさがね、なんとも好きなのです。
ロビー・ロバートソンによるとこのアルバムは「単なるオールディーズのカバー集ではな く、オリジナル曲が充分表現できな かった部分を補おうとしたもの。」なのだそうで、確かにどの曲もザ・バンドだからこそのファンキーで泥臭い味付けがされている。
g:「1曲目、リヴォン・ヘルムが歌う
Ain't Got No Home からニュー・オリンズっぽさ満点。」
b:「いいね。」
g:「続いて
Holy Cow 。これはリック・ダンコ?」
b:「いいね。」
g:「リック・ダンコといえば、サム・クックの名曲
A Change Is Gonna Come も最高。」
b:「いいね。」
g:「そして、ザ・バンドならではのほっこりした魅力としてはこれ、
The Third Man Theme 。」
b:「いいね。」
g:「ここではガース・ハドソンが大活躍。この曲を聴くと某ブランドのビールが飲みたくなるのは僕だけではないはずです(笑)。 」
b:「(笑)。」
g:「お前も何か言えよ(笑)。」
b:「ベスト・トラックはやっぱり
Mystery Train かな。プレスリーも彼らにかかればこんなにファンキーな味付けになるんだって。ロビー・ロバートソンが言っていた“単なるオールディーズのカヴァー集ではない”というのはこういうところなんやろうな、と。」
g:「ロバートソンの言うことって、けっこうハッタリじゃね?」
b:「(笑)、ま、そうなんだけど、そういうところも含めてロバートソンのクールさ、理屈っぽさと、レヴォン・ヘルム、リック・ダンコ、リチャード・マニュエルらのいわゆる音楽的身体能力の高さがこのバンドの大きな魅力なんやと思うんよね。」
g:「そこに最後、ガース・ハドソンがエッセンスを加える、と。」
b:「その後のヘルムやダンコのソロやロバートソン抜きの再結成ザ・バンドが、どっかひなびたただの田舎のバンドみたいに感じたのも、もちろんあれはあれでいいんだけど、やっぱりロバートソンのカッチリとした魅力の有り無しによるもんなんだろーな、なんて。理屈と肉体、頭脳と身体が絶妙のバランスをとっていたのがザ・バンドだったんだな、と。」
g:「なるほどね。しかしそう考えると、ザ・バンドの肉体を担っていた3人が先に鬼籍に入ってしまったというのは、皮肉でもあり必然でもあるものかもな。」
b:「うーむ・・・」
(両名、しばし沈黙)
g:「音楽的身体能力という点でも、このアルバムはロックンロールなザ・バンドの魅力がたっぷりなんだよね。」
b:「チャック・ベリーの
The Promised Land 。」
g:「 ファッツ・ドミノの
I'm Ready 。」
b:「そしてラ・ヴァーン・ベイカーがオリジナルなのかな?
Saved 。」
g:「このSavedは、リチャード・マニュエル?」
b:「たぶん。」
g:「リチャードもリックもレヴォンも歌い方のクセが似てるんだよね。もちろんよく聴けば全然違うんだけど。」
b:「うん、なんていうかな、同じ時代に同じ釜の飯を食って育ってきた、みたいな感じの共通っぽさを感じるね。」
g:「レヴォンはちょっと泥臭くて南部っぽいのが似合うけど、リチャードはやっぱりスロウがいい。」
b:「
The Great Pretender なんて、プラターズのオールディーズをレイ・チャールズ張りのソウルにしてしまってるもんね。」
g:「それに、なんといってもあれよ、ボビー・ブランドの
Share Your Love With Me 。これはね、自分のお葬式で流してほしいくらい好き。」
b:「(笑)。こんなんかかったら泣いてしまうやんか。」
g:「いや、泣いてくれよ!そういうときくらい(笑)。」
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最初にザ・バンドを聴いた頃は、アメリカ~!って感じしかしなかったのですが、あとになってブラック・ミュージックのおいしいところを実にうまく取り入れていることに気づいたというか、このアルバムが一番わかりやすく黒っぽいですね。
リチャード・マニュエル、レイ・チャールズが好きだったんだろうなー。