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♪GP -My Vintage(87)-

GP
GP / Gram Parsons

Released:1973

すっかり秋ですね。
秋はいいな。
ゆるい風が気持ちいい。
薄水色の空の高いところで雲が舞っている。
こういう気持ちのいい秋の日に聴きたくなるのは、からりと爽やかなカントリー・ロックなのだ。
この何とも乾いた感じがいいんだな。
アコースティック・ギターやバンジョーやフィドルや、スティール・ギターのゆるくて穏やかな音に癒される。
ほんの少しの間、慌ただしい日常を忘れてほっこりする時間。

カントリー・ロックの立役者、グラム・パーソンズは1946年フロリダ生まれ、1968年にインターナショナル・サブマ リン・バンドでデビュー、その後バーズに加入し『ロデオの恋人』でカントリーとロックの融合で時代に新しい風を吹き込み、クリス・ヒルマンとフライング・ブリトー・ブラ ザーズを結成・・・などということはとりあえず置いておいていいだろう。
若くして命を落としたグラム・パーソンズがわずか2枚遺したソロ・アルバムのうちの1枚がこの「GP 」。
1曲目、フィドルが活き活きと伴奏を奏でスティール・ギターやバンジョーとの絡みも楽しいStill Feeling Blueでアルバムは幕を開ける。

  時が経てば傷は癒えるもの
  なのに、まるで時が過ぎてはくれないみたい
  もうずっとずっと前のことなのに
  なぜ君は行ってしまったの
  それを知ることはもう叶わない
  淋しい日々、淋しい夜
  全然だいじょうぶじゃない
  君が行ってしまってから時の流れはあまりに遅く
  僕は今もずっとブルー

カラリと晴れた演奏、ビートはなくても心地よくなるゆったりとしたリズム。
でも、そんなほっこりと和む演奏とは裏腹に、歌われているのはヘヴィーな悲しみの感情なのだな。
ブルースの世界とも共通するような、やるせなくどうしようもない感じに、キュッと切なくなる。
じんわりとしみてくる。
このアルバムにはそんな切ない歌がたくさん収められている。
エミルー・ハリスとのデュエットで歌われるカントリー・スタンダード、We'll Sweep Out The Ashes In The Morningはもうこれ以上愛してはいけないと思いながら深みにはまっていく背徳の恋の物語。
同じくスタンダードのStreets Of Baltimoreは、彼女にせがまれて田舎での暮らしを捨てて都会に出て、工場であくせく働らく男の物語。やがて男は疲弊し、都会の魅力に取りつかれた彼女を残して故郷に帰ってしまう、そんな苦い結末のドラマ。
How Much I've Liedは、嘘ばっかりついて生きてきた男の懺悔の歌。
そして、ギュッと切ないバラードのSheはこんな感じの歌だ。

  彼女はコットンの地からやってきた
  誰からも忘れられていたような土地から
  彼女は働いた まるで奴隷のように
  デルタの太陽の下、だだっ広い畑が彼女の庭だった
  でも彼女は歌うことができた
  彼女には歌があった

  彼女はよく歌を歌いながら川沿いを歩いていたものだった
  彼女が自分の運命を悟った時でさえも
  人生が彼女に何を与えてくれるのかさえ知ることもなく
  けど、彼女は何も思い悩むこともなかった
  彼女には歌があった
  彼女は歌うことができた

  彼女には信仰があった
  彼女は信じていた
  彼女はすべての人々を導き、ともに歌った
  毎晩天の神に祈りを捧げた
  ハレルヤ

過去形で歌われる彼女の物語は、彼女が今はもうこの世にいないことを暗示している。けれど彼女には信仰があり歌があり、彼女は救われたのだと。いやボロボロの暮らしの中で何もいいことがないままそれでも神様を信じたまま逝ってしまった彼女は救われたのだと信じたい気持ちがそこにあふれている。
グラム・パーソンズのちょっと不安定な歌がまた尚更、切なさをより増幅させる。
それぞれの歌の向こうに、名もなく貧しい日々を送った人々の暮らしの中の小さなドラマが垣間見える。
束の間、思うようにならない人生の機微に思いを馳せる。

カントリーなんて古くさくてかっこ悪い音楽だと思っていたしそもそも聴く機会すらそんなになかったけど、そんな日々の暮らしに根ざした物語が歌い込まれていることを知ってから親近感を持つようになった。
そもそもカントリーを支持していたのは、農業者を中心とした田舎の貧しい白人たちで、働いても働いても楽にならない暮らしの中で嘆いたり酒で憂さを晴らしたり、そういう部分の根っこはブルースとまったく同じで、貧しく虐げられたどうしようもない今を抱ええつつ底辺で生きる人々の、嘆きや悲しみが歌に託されている。
時には自分を笑うような余裕も持ちながら、あるいは笑うしかないくらいに追い込まれて。
しかしそこには、悲しくてちょっと滑稽ですらある人々の暮らしへの愛情にあふれた眼差しがある。

演奏陣はジェームス・バートン(g)をはじめとする当時のエルヴィス・プレスリーのバンドを中心にしたメンバーで、ゆったりしながらもタメが効いていて、演奏全体に艶や張りがあって豊かだ。
アップテンポのStill Feeling Blueで始まって、いかにもカントリー・テイストの We'll Sweep Out The Ashes In The Morning、ペースを落としてしっとりしたA Song for You、感傷的できゅっと切ないStreets Of Baltimoreを経て、美しいバラードの Sheへと流れるA面。
再びほっこりカントリー・テイストのThat's All It Took、イーグルスなどの西海岸らしい爽やかでクールなサウンドのThe New Soft ShoeKiss The Childrenときて、一転、泥臭いサックスがR&B臭いCry One More Timeは、実はJガイルズ・バンドのカバー。フィドルの響きも穏やかなHow Much I've Liedでしんみりして、ラストはロックンロールのBig Mouth Blues でぶっ放すB面。
そんな起伏に富んだ流れも実に素敵だ。



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コメント

[C2357]

GAOHEWGⅡさん、こんばんは。
今年は残暑がゆるくて、その分ちょっと秋が長くてありがたいです。
例年、こないだまで30℃だったのに一気に15℃みたいなことが多いですからね。

>後悔を抱えつつも小気味よいアップテンポで元気に生きていこう、という感じがいいですね。

ほんとそうですね。
切ない歌も多いですが、悲しみに暮れるという感じではないのがいいです。

  • 2014-09-23 23:42
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C2356]

golden blue様 こんばんは

おっしゃる通り秋はいいですね。
近年は、ただでさえ短い秋が
更に短くなっている感じもするので
改めてかみしめたいです。

確かにグラムパーソンズのこれは秋にぴったりですね。

>でも、そんなほっこりと和む演奏とは裏腹に、
後悔を抱えつつも小気味よいアップテンポで元気に生きていこう、という感じがいいですね。

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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