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♪レザー・シャープ -My Vintage(62)-

RAZOR SHARP
RAZOR SHARP / 忌野清志郎 & Razor Sharps

Released:1987

世間ではゴールデンウイーク・ムード漂う5月2日の深夜、久しぶりに夜更かししながら聴いている清志郎。
誰かの命日を思い起こして感傷的になったり、普段は忘れているくせにこれみよがしに思い出したりするのは好きではないのだけれどやはりこの人だけは特別だろう。
いや、そもそもこれみよがしに思い出したわけではない。清志郎は今も僕の中では普通に生きている。ただ、もう新しい曲が聴けないというだけのことだ。

忌野清志郎、1972年にRCサクセションでレコード・デビュー。芸能活動は実質35年。
その活動を振り返ってみると、ガンガンに攻めまくるアッパーな時期ととてもナーバスでダウナーな時期が何度か繰り返されている気がする。
高校生のときに組んだトリオでそのままデビューして↑、しかしまるで売れずに↓のどん底時代、チャボと組んでロックバンド化して↑、ブレイク後忙しさと音楽関係のギョーカイのめんどくささに嫌気がさして↓、その後、ブロックヘッズと組んでのこのソロ、カヴァーズ、タイマーズと↑↓↑を暴走気味に突っ走ったあと、地下に潜ってインディーズでの活動でも、ゴキゲンなバンドだったり気まぐれなソロだったり新しいバンドを組んだりやめたりを繰り返しながら、「KING」以降の王道路線復活で↑。
そんなふうに清志郎の活動を俯瞰したときに、「ラプソディー」と同じくらいポイントになっているのがこの「レザー・シャープ」だったのだな、と改めて思う。
発表当時、僕は大学生。
いきなりのぶっといベースから始まるWATTATA(河を渡った)を聴いてぶっとんだ記憶がある。なんだ、また清志郎がやんちゃなことし始めたな、どうせミック・ジャガーのソロにでも刺激されたんだろう、まぁ今までも梅津和時や早川岳晴とDANGERやったり、ジョニ-・ルイス&チャーと組んだりもしていたから気まぐれな課外活動なんだろう、みたいに思っていたのだけれど。
演奏はイアン・デューリーと組んでいたブロックヘッズの面々で、gはジョニー・ターンブル、bはノーマン・ワット・ロイ、Keyにミッキー・ギャラガー、Drのみ元クラッシュのトッパー・ヒードンが参加していたけれど、ヘロヘロで結局途中から正規メンバーのチャーリー・チャールズに戻ったらしい。
御大イアン・デューリーはラストのBoo-Boo-Booにちょこっとだけゲスト参加している。
演奏はもちろんファンキーでヌケがよくて、RCのもっちゃりしたバンドっぽさとは違う、タイトル通りのシャープな切れ味とタイトさがめちゃくちゃかっこいいのだけれど、曲もつぶ揃い。
先行シングルだったAROUND THE CORNER/曲がり角のところでは清志郎得意のダブル・ミーニングがビンビンのポップ・ソウル。90 DAYS-免停90日もクルマの歌で、大嫌いだった交通関係の取り締まりを揶揄しているようにも聞こえるけれど、警察官の俗称に聞こえる部分は歌詞カードでは“my poor baby”となっています。
Boo-Boo-Booもクルマ関係の歌だな。清志郎ならではのユーモアが冴えている。
RAZOR SHARP・キレル奴はこのアルバムでは唯一のRCっぽいロック・ナンバー、逆にSEMETE(GOING ON THE ROAD)はRCでも演らないような複雑なリズムのフリーキーな感じ。
この頃清志郎はキレキレだったのか、CHILDREN’S FACEあそびとか、絶妙にとげとげしい攻撃的な言葉が並ぶ。

 子供の顔した大人より信用できるぜ、大人の方が
 約束なんかは真に受けたほうだけが覚えてるのさ

 あの娘とはただの遊び 遊びでやったのさ 
 大切なものを僕にくれたんだと 捨ててからそう思ったくせに

この毒々しさは清志郎ならでは。いや、誰でもそんなひねた部分はあるんだろうけれど、そのことをこんなふうに言葉と音楽で表現できる人はそうそういない。
でもその一方で、スロウな曲がソウルフルでいいんだ。
ワザトFEEL SO SAD(CANADA SEVEN)IDEA、そしてMELODY MAKER

 愛するきみのメロディー・メーカーになりたい
 この気持ち、このギターで、君だけに伝えたい僕なのさ

MELODY MAKERあそびの幅、それこそが清志郎なんだと思う。
かっこいいな。
こんなブリッとしてかつソウルフルでファンキーな音、今じゃなかなかお耳にかかれない。
ついでにもう一曲、曲がり角のところでのB面に入っていたファンキーなChopped Tomato Pure。どう聴いたってチョップド・トマト・ピューレ、とは歌っていないけど(笑)。


そもそもこのアルバム、RCとしてのロンドン・レコーディングの話をメンバーが嫌がったことから「じゃあ一人で行ってやる」ってことになったんだってことを知ったのはずいぶん後のことだったけれど、ここでのロンドンでの体験が、その後のRC解散に及ぼした影響は実は大きかったのだろうな。
もしリンコさんやチャボがロンドン行きを承諾していたら?
いや、どっちにしても清志郎はWATATTAんだろうな、河を。

 おれは考え方が変わった Oh変わった
 いくつもの河を渡った
 向こう岸の奴らがまたなんだかんだ言ってんだろう
 あいつは変わっちまった
 そう、おれは河をまた渡った
    (WATTATA(河を渡った)) 

誰の人生にも、アップな時期もあればダウンな時期もある。
僕のたかが知れているどこにでもあるような普通の人生にも、アップな時期とダウンな時期はある。
調子に乗ってイケイケドンドンでやってきてふと振り向いたらついてきてくれているはずの仲間が誰もいなかったとか、逆におぼれてもがいているときに意外にも手を差し伸べられて助けられたり、その助けてくれた相手にやっぱりいいように利用されたり、まぁそんなこんなもありながら幾度かそうして河を渡ってきた。
多分また幾度目かの河を渡ろうとしている時期なのだと思う。
向こう岸の奴らになんだかんだ言われたって、まずは渡って次の岸にたどり着くしかない。
河を渡った先では、きっと違う風景が見えるだろう、今までいた岸辺がきっとちっぽけなものに見えるだろう。
そうやって、河を渡っていくのだ。




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コメント

[C2228]

波野井さん、こんにちは。
ノーマン・ワット・ロイ、かっこいいですよね。ファンキーなのからハードなのまで何でもこなすし、どこか陽気でやんちゃなところがいいですよね。

ターニングポイント、うーん、そう言われると考えちゃいますね。。。

[C2225]

ハードロックばかり聴いてた頃は実はピンと来なかったのですが、大学行った頃から、好きになりました。

なんかRCとも違うなあって最初思ってました(^^;)

2日のNHK、録画して見ました。

やっぱりターニングポイントだったんですね!

自分の人生、いつがターニングポイントだったのかなあなんて
今考えちゃいました(^^;)

ウィルコ行った後、しばらくこれ聴いてました(^^)

ノーマンつながりで(^^;)!
  • 2014-05-11 21:16
  • 波野井露楠
  • URL
  • 編集

[C2216]

LA MOSCAさん、毎度です。
そういば「WATTATA」の記事、読んだ記憶が。
イアン・デューリーたちに出会って、当時イギリスのアーティストたちが社会的なことをストレートに歌っていたことに刺激を受けたことが「カヴァーズ」につながった、と2日夜に放映されていたNHKの番組でも触れられていて、ちらっとジョニー・ターンブルやミッキー・ギャラガーが出演していましたが。
もう5年経つんですね。何年経ってようが、清志郎はずっと歌の中で生きているから、もはやあんまり意味ないけどね。
  • 2014-05-04 12:53
  • golden blue
  • URL
  • 編集

[C2214] ずっと最後まで

楽しく読みました。
何度も強く頷きながら。
そして読んでたら物凄く聴きたくなって久々に聴きました。
俺もコレは大きな分岐点だったと思います。
「WATTATA 」は清志郎の最重要曲のひとつですよね。
手前味噌だけど、ブログで「人生に影響を与えた45曲」ってのを書いた時に選んだ1曲です(笑)
  • 2014-05-03 21:34
  • LA MOSCA
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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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