FC2ブログ

Entries

♪富山デイズ。

富山デイズ。
富山デイズ。 / 福田ユウイチ with ウォーラス
Released:2014

福田ユウイチ(Vocal,Electric&Acoustic Guitar,Drums)
ウォーラス:
ヒノヒデキ(Electric&Acoustic Guitar)
岡部ワタル(Drums,Djembe)
表現太郎 (Bass)

うららかな初夏の陽気だというのに、頭の中にある男の声がぐるぐると渦を巻いてしまって正直とても困っている。
その男の声は、穏やかな春の陽気にはまったく似合わない、けだるくてどす黒くだらだらと倦怠感を誘うような独特の重みと澱みがあって、そんな声で「こそこそ逃げ回っているのはどこのどいつだ!」だの「死んだの誰だっ!死んだの俺だっ!」などと意味の解らん言葉をのたうち回るように連呼されると、まったく何をどこから手をつけたものか気もそぞろになって、意味もなく冷蔵庫を開け閉めした挙句に残っていたおさかなウインナーの切れ端をぐらぐらと噴きこぼれているインスタントラーメンの鍋にほうりこんで満足している自分自身を私は確認したのです。、などと意味の分からない言葉の連鎖に苛まれてしまう、というわけなのです。
福田ユウイチというシンガーのことを知っている人になら、この感じはわかっていただけるだろうか。
どこまでが本気でどこまでが冗談なのか、どこまでが現実でどこまでが夢の世界なのか、福田の歌は、その境界線をあいまいに残したままに突きすすんでいく。
ふわふわと雲の上を歩いているような気分から一歩足を踏み外してまっさかさまに急降下、気を失うかという寸前に目が覚めてあぁ、これは夢の中の世界のことだと安心したその瞬間に、どすんと現実を突きつける言葉にぶつかっていきなり断崖絶壁に追い込まれてしまう、そんな感じが繰り返されながら、そもそも生きるということそのものが夢と現を繰り返し行ったり来たりする所在ないものなのではないか、つまりは夢は現実であり現実は夢なのである、ならば今このあたたかい蒲団の中において襲い掛かるとてつもない眠気に抗う必要などあろうわけがないとその眠気に身を委ねたまま改めて目を覚ました時には時計は午前11時を指し示し、その後当たり前のように空いた電車に乗って出勤したら上司に激怒された。当たり前だ。現実とはかようにそのようなものであるらしい、ということを私は確認したのでした。



富山のシンガー・福田ユウイチが、実に14年ぶりに録音したアルバム『富山デイズ。』。
ほとんどはこの数年に作られたものと思しき楽曲は、それぞれに研ぎ澄まされ、ごつごつとした手触りと耳に馴染まない異物感を残しつつ、ひたひたと脳味噌の中に深く浸み込んでくる。
意味のないひとつひとつ断片が、幾重にも折り重なったときに、まるで仕組まれていたかのように大きな意味を持つような言葉の数々が、投げやりでぶっきらぼうでありながら実は繊細さを忍び込ませた声で歌われる、そこに福田ユウイチならではの世界が浮かび上がってくる。
その福田の世界をより立体的に、時には4次元的に構築して見せるのが、京都のプログレ・バンド、ウォーラスだ。
一見異種格闘技的なこの取り合わせの音を聴いて最初に思い浮かんだのは、ルー・リードの「Live In Italy」というアルバムのサウンドだった。それから、80年代半ばのトム・ウェイツのいくつかのアルバム。つまりは、ずっしりと手応えのあるリズム隊の心地よさと、マーク・リボーやロバート・クワィン的に変態的かつ内省的なギター。
音的な強者たちの繰り広げるリズムとアンサンブルの世界と、言葉と声で作り上げられた世界が真っ向から対峙するときに生まれるひとつのマジックがここにある、と思う。


<各曲メモ>
01・「監獄テレビ」
盛り上がりそうなロック・ナンバーなのにキリキリと歪んでいく、ひとすじなわではいかないひねくれたズレがかっこいい。
02・「千早ふる」
おそらくアルバム収録曲ではもっとも古い曲。ファンクなリズムに乗って連射される言葉の存在感。
03・「半鐘blues」
どろどろとへヴィーでどっぷりとダークなリズム。ピリピリと痙攣しながらずぶずぶとノックアウトされる。
04・「頭脳内周遊」
チンドン屋的に猥雑なサキソフォンのフレーズと、♪ズノーナイ、シューユーというフレーズがずるずると頭の中にこだまし続ける。
05・「sounds good!」
皮肉と揶揄を二枚も三枚も塗り込めつつもどこかニヤリとさせられてしまう、ルー・リード的名曲。
これはシングル・カットしてほしいくらい。元気や優しさの安売り的なポップスややたらとかっこつけた自称ロックな曲が流れるFMラジオからふとこんな曲が流れてきたら、と想像するだけで楽しい。
06・「富山デイズ。」
フリー・ジャズ的にゴツゴツした違和感のある演奏に乗せて、遠藤ミチロウ的もしくは友部正人的に意味不明な詩の連呼の不愉快さが痛快。
07・「FACTER」
アルバム中一番のストレートなロック・ナンバー。
“打ち出の小槌”の暗喩に、2011年3月13日の映像が重なる。
08.「必然マイノリティ」
昭和的なメロディに場末っぽい音のサキソフォンと、奇妙にねじれた孤独の風景。
09.「屋根裏部屋の密会」
フィドル、ブズーキ、バンドネオンが繰り広げる異国的情緒に忍び込ませた小さな日常の憂鬱。
10.「夢の中、君をみた」
しっとりとしたアコースティック・ギターの響きと、妄想的なシュールな情景のコントラスト。
「原発が爆発したときに、まるで自分まで吹き飛んでしまったような気がして言葉ばっかりが出てきた。」という福田の歌世界が7分以上にわたって展開される、ある意味アルバムのハイライト的楽曲。
11.「雲の行列」
ラストは、楚々としたフルートが美しいアコースティックなナンバー。
悪い夢のような情景をすっきりと洗い流していくような、ほっこりとどこかかわいらしさもある佇まい。


実は福田ユウイチとは、かれこれ30年近くのつきあいになる。
先日行われた京都・陰陽でのウォーラスとのライヴは、このディスクに収められたよりも何倍も素晴らしかった。
できることなどたかが知れていたくせに鼻っ柱ばかり強くて生意気ばっかり並べても結局は尻尾を巻いて逃げ帰らざるをえなかったパンク少年たちがごろごろといたあの街の日々からずいぶんと時間が経ったけれど、時間の経過とともに熟成され研ぎ澄まされていくものが確かにある、とひとりごちながら、僕はその夜、すっかり酩酊してしまった。

NCM_1865.jpg 


残念ながらこのアルバム、福田のライヴ会場のみでの販売なのですが、詳しくは、福田ユウイチHPでライヴを確認いただき、ぜひとも足を運んでみていただきたいと思っています。



スポンサーサイト



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://goldenblue67.blog106.fc2.com/tb.php/948-cd637920

トラックバック

コメント

[C2215]

とりあえず思いつくまま書き散らかした感じですが。ライナーノートのイメージで(笑)。

  • 2014-05-04 12:42
  • golden blue
  • URL
  • 編集

[C2213]

見透かされたなあ。流石。解説、だいたいその通りかなあ。うん、ウォーラス。数年前ならば融合出来なかっただろうなあ。直感的な閃きがプラスに作用したんだろうね。
  • 2014-05-02 23:52
  • 福田ユウイチ
  • URL
  • 編集

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

Profile

golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

Calendar

09 | 2020/10 | 11
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

Gallery

Monthly Archives