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♪ふわふわと漂う春の夜

朝、昼と書いたので、お次は春の夜。

春の夜は心なしかふわふわする気がする。微妙にカラダが宙に浮く感じ。自分の体の隅々に力がこもりきらない感じ。微妙に熱っぽい感じ。
真冬や真夏は、外気の寒さや暑さとのある種の戦いであって、自分の内側と外部をしっかり隔てておかないといけないから逆に「自分」というものを自覚しやすい。春はその辺、つい油断してしまうのだ。どこまでが自分でどこからか外部なのかが危うくなるような感じでついだらりと自分が延びていってしまうからついついボヤッとしてしまうのかもしれない。
或いは、命芽吹き鳥さえずり猫がさかりにつくように、大いなる自然の力が何かをけしかけているのか。
それとも単に、冬の間に閉じてしまった汗腺が急な環境変化に適応できずに、気温が上がっても汗をかきにくくてカラダに熱がこもってしまうからなのだろうか。

何にしても春は何か気合いが入らない。できることならふわふわした気分のまんまだらだらと過ごしたい。
いつもはあまり聴かない種類の音楽が聴きたくなる。
ロックやブルースはどちらかというと、自分の輪郭をくっきりさせるために必要な音楽。
でも今は、自分と外部の境界線を見失うくらいの音楽が聴きたい気分なのだ。
ふわふわと漂う感じに身を委ねて、しばし見知らぬ世界へトリップする、そんな春の夜。


アストラル・ウィークス    逃避行    バンドネオンの豹(紙ジャケット仕様)

アヴァロン(紙ジャケット仕様)    Blossom Dearie


Astral Weeks/Van Morrison
不思議な浮遊感を漂わせるアコースティックな楽器たち、とりわけベースの太い響きや、フルートのさえずりや、キラキラした月光のように響く弦楽器、そしてヴァン・モリソンの深くこだまする歌…すべてが意味ありげで神秘的な雰囲気を漂わせるこのアルバムは心の逃避行には最適だ。

Hejira/Joni Mitchell
浮遊感漂うといえば、このアルバムのジャコ・パストリアス。グルーヴを支えるベースとはまた別の、詩を奏でるかのような独特の演奏。ジョニの歌との間に流れる何ともいえない親密感と緊張感の奇妙なバランス。

バンドネオンの豹/あがた森魚
学生の頃に少し出入りしていた劇団の主催者があがた森魚が好きでよく聴かされた。当時何の興味もなかったけれど、こういう記憶は案外あとあとまで残るものだ。
この人の世界はいずれもどこか奇形だが、いつの間にかいつの時代ともどこの国ともいえない不思議な異郷へ連れていかれてしまう。そして、不思議な懐かしさに包まれてしまう。誰にでもお薦めできる類の音ではないけれど。

Avalon/Roxy Music
ブライアン・フェリーやロキシー・ミュージックの作り出す世界はそんなに得意ではないのだけれど、この“AVALON”は別格。滑らかで、幽玄で、奥行きが深くて、気品があり、オーロラの光のようにゆらゆらと輝いて神秘的かつ壮大だ。なんとなく天空に浮かんでいる気分になれる気がする。

Blossom Dearie/Blossom Dearie
ちょっと鼻にかかったコケティッシュなヴォーカル、小粋なピアノ。
“春の如く”や“A Fine Spring Morning ”といった春をテーマにした曲が入っているから、というわけでもないけれど、この人のアルバムは春になると聴きたくなる。いや、むしろ甘ったるすぎて春でないと聴けないと言った方が正しいのかもしれない。春という季節には、何かどこか甘い香りがするようなものを引き寄せる不思議な雰囲気があるようだ。



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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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