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♪THE TRACKS OF MY TEARS -My Vintage(59)-

tomt
The Tracks of My Tears / Smokey Robinson & The Miracles ,The Temptations,Others
Recorded:1960-1987

ソウル・レジェンド、スモーキー・ロビンソン。
ミラクルズのリード・シンガーとしてヒットを連発する一方で、初期のモータウンでプロデューサー兼ソングライターとしても才能をフルに発揮して、モータウン・レコードの草創期にメアリー・ウェルズやテンプテーションズはじめ、軽く1ダース以上のヒット曲を世の中に送り込んだ偉人である。
そしてボブ・ディランが「アメリカでもっとも素晴らしい詩人のひとり」と評したことでも知られている。
そのことは日本人には少しわかりにくいのだけれど、例えばMy Girlはこんな感じです。

 I've got sunshine 
 On a cloudy day
 When it's cold outside
 I've got the month of May

  お日様の陽射しを手に入れたんだ
  こんな曇り空の日に
  外は寒くても
  気分は5月の晴れ間

歌詞のmonth of Mayっていう言葉から5月の陽気な一日の歌だと思っていたら、寒い日でも好きな人がいれば暖かい、っていう歌だったんだな。
二番もかわいい。

 I've got so much honey
 The bees envy me
 I've got a sweeter song 
 Than the birds in the trees  

  いっぱいの蜂蜜
  ミツバチもうらやむくらいの
  甘い歌を口ずさむよ
  木々の小鳥のさえずりよりも

詩的というか、直截的に全部を語らずに、比喩や言い回しで心の内側をぽっこりと浮かび上がらせるような表現が絶妙なのですね。
行間から気持ちをにじみ出させる方法は、ちょっと俳句的でもあるような気がします。

 Now if there's a smile on my face
 It's only there trying to fool the public
 But when it comes down to fooling you
 Now honey, that's quite a different subject
  
 But don't let my glad expression
 Give you the wrong impression
 Really, I'm sad
 Oh, I'm sadder than sad
 You're gone and I'm hurtin' so bad
 Like a clown I pretend to be glad

  もし今、僕の顔が微笑んでいるとすれば
  世間に合わせておどけているだけ
  けど、きみのことを想うとちょっとせつない気持ち
  あぁ、なんかちょっと違う感じ

  楽しそうに見える現象
  それはちょっと違う印象
  ほんとはとっても悲しいんだ
  悲しいよりももっと悲しい
  きみが行ってしまってひどく苦しい
  ピエロみたいに嬉しいふりをしているけれど
      (The Tears of Clown)

このニュアンスを日本語に置き換えるのは難しいな。
expressionとimpression、sad-bad-gladの韻の踏み方。
ピエロに例えて、悲しみを隠そうとすればするほど悲しみがより深く浮かび上がってくるという言い回し。
もちろん素晴らしいのは歌詞だけではない。
ギターを含めたリズム隊が際立っていながらとてもやわらかく洗練された曲調、ソフトで物腰やわらかく伸びと張りのあるヴォーカルとコーラス・ワークは、ブルースやゴスペルの泥臭さとは一線を画した都会的なサウンドで、当時としてはものすごく新しかっただろうし、それがちょうど豊かさのピークを迎える60年代初頭のアメリカ社会と見事にシンクロしたのだろうと思う。

紹介する盤は、このMyVintageシリーズではちょっと掟やぶりのコンピレーション盤。
ミラクルズのヒット曲を中心に、テンプテーションズやマーヴィン・ゲイ、フォー・トップスにメアリー・ウェルズに提供したヒット曲、さらに70年代以降のスモーキーのソロからもいくつかピックアップしたスグレモノ・アルバムです。

The Tracks of My Tares / Smokey Robinson & The Miracles
The Tears of a Clown / Smokey Robinson & The Miracles
My Guy / Mary Wells
Going to a Go-Go / Smokey Robinson & The Miracles
Ain't That Peculiar / Marvin Gaye
I Second That Emotion / Smokey Robinson & The Miracles
Ooh Baby Baby / Smokey Robinson & The Miracles
Still Water / The Four Tops
Crusin' / Smokey Robinson
Being with You / Smokey Robinson
My Girl / The Temptations
You've Really Got a Hold on Me / Smokey Robinson & The Miracles
Shop Around / The Miracles
Get Ready / The Temptations
More Love / Smokey Robinson & The Miracles
The Way You Do The Things You Do / The Temptatons
Don't Look Back / The Temptations
What's Too Much / Smokey Robinson

You've Really Got A Hold On Meはビートルズのカバーで、Going To A Go-Goはストーンズのライヴ盤でもおなじみですね。最初はどちらもロック・バンド的にアレンジしているんだと思っていたから、原曲が思いのほかそのまんまだったことに(逆か・・・笑)びっくりしたことを覚えています。
ゆっくりと花びらが開くようなイントロで始まるTracks Of My Tearsやコーラスも美しいOoh ,Baby Babyのキュンとするような切なさや、I Second That EmotionやMy Girlのかわいらしさ。More LoveやGet Readyのかっこよさ、Crusin'やBeing With Youでのアダルトな魅力。
どの曲もいずれ劣らぬ素晴らしい曲で、しかもどこかにスモーキー印とでも言うべきやわらかさが織り込まれています。
気温はいよいよ20℃越え、穏やかな陽気の中で聴くと、ピュアでイノセントな気持ちになって和めます。



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コメント

[C2200]

yuccalinaさん、 Child Brideのシングルの動画は発見してました。
なるほど、リクエストしてみたらいいんですね。
ありがとうございまーす。

[C2199]

Child BrideってシングルのB面にライヴが入ってたんです。かなり緩めの演奏でしたが。楽しそうな感じが伝わってきたんです。
Child Brideの動画主にリクエストしてみたら、アップしてくれるかもしれませんね。
  • 2014-04-18 14:21
  • yuccalina
  • URL
  • 編集

[C2198]

yuccalinaさん、こんばんは。
レニー・ケイがスモーキー・ロビンソンのカバーを演ってるんですか!?
意外な取り合わせ、Youtube検索してみましたが見つかりませんでした (/_<) 。
  • 2014-04-17 01:24
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C2197]

こんにちは。
スモーキーはルックスも声のトーンも優しげですが、書く詞にもそういった雰囲気がありますね。私はTracks Of My Tearsが好きなんですが、レニー・ケイがソロシングルのB面にカップリングしてた時は、ホント、色んなアーティストから愛されてるんだなあ、と思いました。
  • 2014-04-16 14:48
  • yuccalina
  • URL
  • 編集

[C2196]

GAOHEWGⅡさん、こんにちは。
70年代のスモーキー、かなりよさげですが実はアルバムは未聴でして。このベスト盤でじゅうぶん満足しちゃってる感じもあります。ぼちぼち聴いてみようと思うのですが、残念ながらジャケットがいまいちで購入意欲が(笑)。

ピエロとクラウンは違うんですよね、確か。ピエロもクラウンの一種で、涙のマークが描かれたクラウンがピエロだと聞いたことがあります。

[C2195]

golden blue様
こんばんは

ピエロにはいくつかのキャラクターがあって
それぞれ性格が違うんですよね。
昔、勉強で調べたのですが忘れちゃいました。

スモーキー・ロビンソンは70年代以降のものも
素晴らしいので
それも抑えたベストというのはナイスだと思います。

[C2194]

ezeeさん、こんばんは。
バックスクリーン3連打ね(笑)、確かにそれくらいの偉業かもしれません。
このベスト盤は他のアーティストへの提供作品も含めて、歴代最強ラインナップのオールスター級の素晴らしさです。

[C2193]

まりさん、こんばんは。
リンダ・ロンシュタットのもいいですねー。
サザンソウルももちろん好きなのですが、春にはモータウンの軽やかさが心地よいです。

[C2192]

いや〜スモーキーズ・ソングはまさにVintageっすな
Going To a Go-Goに入ってる、Tracks of myTears、 Ooo Baby Baby、 My Girl has Goneはバース、岡田、掛布のバックスクリーン3連打に匹敵の偉業やと思ってます!
  • 2014-04-10 22:29
  • ezee
  • URL
  • 編集

[C2191]

「Tracks Of My Tears」「Ooh ,Baby Baby」はリンダ・ロンシュッタット嬢のほうを 何度もリピートして聴きました♪
どストライクな青春ソングです!

モータウンよりサザン・ソウルのほうを聞いていたので 好みではあるけれど さほどくわしくないのです。
「マイ・ガール」は 中学生のときに聞いて  胸きゅんきゅんした覚えがあります♪
  • 2014-04-10 21:25
  • ひるのまり
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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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