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♪春の朝

時は春、

日は朝(あした)、

朝(あした)は七時、

片岡に露みちて、

揚雲雀 なのりいで、

蝸牛 枝に這ひ、
 
神、そらに知ろしめす。
 
すべて世は事も無し。
  

    ( 上田敏 訳詩集 「海潮音「より ロバート・ブラウニング “春の朝” )

         The year's at the spring,
         And day's at the morn;
         Morning's at seven;
         The hill-side's dew-pearl'd;
         The lark's on the wing;
         The snail's on the thorn;
         God's in His heaven--
         All's right with the world ! 
             (Pippa's Song by Robert Browning)

やや古めかしい日本語の意味もよくわからないままなんとなくリズムが良くて好きだなぁ、と思っていたこの「春の朝」という詩。
正確にはどんなだったっけ、と調べる過程で英語の原文を知り改めて、この世のありとあらゆるものを肯定したくなるような心持ちを与えてくれる清々しい春の朝のイメージがくっきりと浮かんできた。
翻訳者上田敏は明治7年(1874年)生まれ、この『海潮音』が刊行されたのは明治38年、原作者のロバート・ブラウニングは、1812年にロンドンに生まれた詩人なのだそうだ。
生まれた国が違っても、春の爽やかな朝に感じることはそんなに違いがあるわけじゃない。
そしてひとつの真理のような言葉は、時代を下っても人の心の中に受け継がれてゆく。

お祈りの言葉のように反芻し、心の中で唱えるうちに、体の奥から何ともいえないエネルギーが湧いて出てきそうな気がしてくる。それは、決して「この世の素晴らしさを肯定する」といった能天気な意味合いだけではなく、「なんであれこの世の中に在るあらゆる事柄はすべて肯定されるべきなのだ」とでもいうような圧倒的なポジティヴさ故のことだ。

これ以上言葉にするのはもどかしい。
だから、春の朝の清々しさ、爽やかさ、快さ…を音楽に託してみることにする。
そんなわけで、春の朝の5枚。


パーフェクト・エンジェル    ベスト・オブ・ジョージ・ハリスン    Take Ten

VARIETY    RECYCLE Greatest Hits of SPITZ


Perfect Angel / Minnie Riperton
天使の歌声、と賞賛され、5オクターブ以上もの広い声域を持つというミニー・リパートン。
例えば有名な“LOVIN' YOU”のサビの小鳥のさえずりのようなハイトーン・ヴォイス。
でも素晴らしいのは技術じゃない。その技術で何を伝えようとしたか、だ。
ミニーの声には世界に対する優しい眼差しがある。それはあえて“愛”と言い換えても構わないと思う。

The Best of George Harrison/George Harrison
ジョージ・ハリソン3本の指に入る名作"Here Comes the Sun"をはじめ、“My Sweet Lord”やら“Something”やらジョージの曲にはなんとなく朝が似合う気がする。
ジョージ本人に無断でビートルズ時代の楽曲込みでべスト盤にまとめられたこのアルバム、僕は結構好きです。ジョージの温厚な人柄がそのまま出ているようで。

Take Ten/Paul Desmond
ジェントル、リリカル、ソフト、マイルド…そんな形容詞が浮かぶ流麗なアルトを吹くポール・デスモンド。
複雑なリズムの上をマイ・ペースで吹き鳴らす姿は、どこか孤高の詩人のような凛々しささえ漂っている。
依怙地に孤独に陥らず、かといって戯れず群れず、自分の言葉を淡々と紡いでゆく。

VARIETY/竹内まりや
♪ウーウー ウゥゥゥウー ウゥゥウゥゥゥー♪という、ぱっと聴いてすぐ達郎とわかるあのコーラスで始まる“もう一度”。この曲には明らかに、POPSの魔法がある。この曲を聴いて心がキュッとならない人はきっといない。このアルバムが出た頃にはなんだかこのPOPさが照れくさくて友達に隠れてこっそり聴いていた記憶があるのだけれど、今思えば実はみんなそうだったんじゃないのだろうか。心がキュッとするのが恥ずかしい年頃ってあったのだ。

RECYCLE Greatest Hits of SPITZ/スピッツ
“ロビンソン”“チェリー”“涙がキラリ☆”“空も飛べるはず”…老若男女、どんな人でもついつい口ずさんでしまうようなPOPな名曲の宝石箱。
もちろんPOPなだけじゃなく、そこはかと儚さを感じる詩とメロディーがあって、その奥にはどうしようもない絶望ややりきれなさが深く横たわっていて、それでもなおかつPOPで在り続けようとする健気さのようなものも含まれていて…そんなふうに幾重にも折り重なったいろんな想いを全部ひっくるめてのPOPさだからこそ、使い捨てではなく、宝石箱の中でいつまでもキラキラと輝き続けていくのだろう。

         
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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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