さてこのゴキゲンなアルバムは、イギリスのロックの大御所たちによる古いロックンロールやリズム&ブルースのカバー集で、首謀者はあのビル・ワイマン。 多発性脳脊髄硬化症という難病に冒された元スモール・フェイセズ~フェイセズのロニー・レーンを救うためのチャリティとして組まれたARMSプロジェクトの一環だったのだそうです。 中心メンバーはビルとチャーリー・ワッツの他はP:ゲラント・ワトキンス、G:ミッキー・ジー、G&B:アンディ・フェアウェザー・ロウ、Ds:テリー・ウィリアムズ(Ex.ロックパイル)という英国R&R畑の地味渋な人たちなのですが、ゲストにはクリス・レアやケニー・ジョーンズ(Ex.スモール・フェイセズ~フェイセズ~フー)、そして当時TheFirmを結成していたジミー・ペイジ(Ex.ヤードバーズ~レッド・ツェッペリン)とポール・ロジャース(Ex.フリー~バッド・カンパニー)も参加している。 ペイジとロジャースが参加しているのは、オーティスの名バラードのカバーThese Arms Of Mineと、リトル・リチャードのSlippin' and Slidin' の2曲。ポール・ロジャースは TheFirmでも“You've Lost That Lovin' Feeling”を演っていたけど、堂に入ったソウルフルな声はほんま渋いですねー。 クリス・レアはオープニングのBaby Please Don't Goのみ。
そもそもこういった50年代のロックンロールのカバー集は、ジョンの『ROCK AND ROLL』を筆頭に、ザ・バンドの『ムーンドッグ・マチネー』、ロバート・プラントのハニードリッパーズ『Volume1』、ストレイキャッツの『オリジナル・クール』やヒューイ・ルイス&ザ・ニューズの『バック・トゥ・ルーツ』などなどいずれも大好物なのですが、中でもこのアルバムはかなりゴキゲン度が高い。 ポール・ロジャースの2曲はもちろん素晴らしくかっこいいのだけれど、それ以外の曲もそれはそれでかなりいい感じ。それぞれのバンドマンが交代で歌うヴォーカルは実に味があるし、バンドっぽい和気あいあいとした雰囲気があってたまらないのだ。 ピアノのG・ワトキンスが、Saturday NightとChicken Shack Boogie、ミッキー・ジーがRevenue Man (White Lightning) 、アンディ・フェアウェザー・ロウがCan You Hear Me?、Let's Talk It Over、Sugar Bee、Poor Boy Boogieのリード・ヴォーカルを担当。ビル・ワイマンもYou Never Can TellとAll Night Longの2曲でいなたい喉を聴かせてくれている。 とにかくゴキゲンで楽しさにあふれる一枚。 そういえば選曲も、ストーンズやキンクスやアニマルズがカバーしていたチャック・ベリーやチェスのシカゴ系のブルースよりも、リー・ドーシーやロイ・ブラウン、エイモス・ミルバーンといったニュー・オリンズ~テキサス、ジョージア方面の元ネタが多いのが特徴。
Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。 “日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。 自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。
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