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♪EXTENSION OF A MAN -My Vintage(37)-

愛と自由を求めて +1
Extension Of a Man / Donny Hathaway

Released:1973

日に日に寒さが増してくる今日この頃。
寒いのは苦手。
冷たい風は心まで縮こまらせてしまうから。
ちょっと後ろ向きというか、内向きにこもった気分が持ち上がってくる。
今年はもう、年明けからガンガンに突っ走ってきたから、さすがにバテてきた感じ。
まして、そんな苦労なんぞお構いなしにさらにビシバシと鞭を入れられた日にゃぁ、もう全部投げ出したくなったりもするわけで。疲れてるな、少し。
ただ、よく冷えてキリッと張りつめた朝の空気や夜の澄んだ星空のピンと張りつめた感じは、世界に対して敬虔な気持ちにもさせてくれる。
ここらでちょっと頭を冷やして心を落ち着けて、これまでを振り返った上で次のディレクションを練ってみるのも悪くないんじゃないかって、そんな気分にもさせてくれる。

幼い頃から教会でゴスペルに親しみ、ハワード大学ではクラシックを学んだというダニー・ハサウェイの73年の4作目のアルバム『愛と自由を求めて』は、弦楽団を交えたインストの I Love The Lord; He Heard Me Cry (Parts I & II) で始まる。
クラシックを思わせる荘厳で起伏に富んだ調べは、やがて自由への祈りを込めたSomeday We All Be Freeへと連なっていく。(I Love The Lord; He Heard Me Cry (Parts I & II)~Someday We'll All Be Free)
いつ聴いても感動する名曲だけれど、ちょっと疲れ気味の晩秋に冷たい空気に触れながら聴くとさらに心が洗われるような気がするんだな。どこまでも伸びていく美しいメロディー、哀しみや憤りの感情を押し留めて願いへと昇華させていく音楽。
美しい。
なんだか泣けてくる。

代表曲であるSomeday We All Be Freeや、ボーナス・トラックとしてラストに収められたLord Help Me の印象が強くて、このアルバムにはゴスペルっぽい重さの印象が強いけれど、各楽曲はダニーの活動の集大成的にバラエティー豊かだ。
コーネル・デュプリーのギターのカッティングがカッコいいフュージョン系のファンクなインスト・ナンバーValdez In The Country、The Ghettoの続編のような重いファンクのThe Slums、ジャズっぽいセッション的感覚もあるCome Little Childrenあたりには、黒人としてのアイデンティティや伝統の継承と発展への意識が強く現れているし、どすんとヘヴィでブルージーなI Love You More Than You'll ever Knowにしてもそう。
ホンキートンク調の弾むピアノやチューバやクラリネットが楽しいMagdalenaではまだジャズが成立する以前に黒人たちに愛された音楽のような懐古っぽさを新しさとして捉えるような雰囲気もあり、ダニーの音楽的姿勢ー根っこのところで人々の暮らしや人が生きる根源的なものをしっかりと持ちつつ、新しいものを取り入れていくーがよく現れているように思う。
一方で、どこまでも伸びていくような晴れやかなメロディーのFlying Easyや、コンガの音がかわいらしいラブ・ソングのLove, Love, Loveは、ビートルズにも通じるようなポップさと高い精神性がある。
そしてオリジナルアルバムでは最終曲にあたるリオン・ウェア作のI Know It's Youでのソウルフルな歌唱。後のブラック・コンテンポラリーにも大きな影響を与えたような洗練されたバラードだけど、これがもう、ものすごくグッとくる。甘いラブ・ソングなんだけど、誰かを好きになればなるほどどこか満たされない気持ちが残ってしまうようなせつなさや淋しさがつきまとってしまうような感覚ってあるよね、なんて思ってしまう、そんな感じ。

ある意味器用貧乏と思えるくらい、どれひとつとして同じようなパターンの曲がないこのアルバムの幅の広さと、一方でどれをとっても一聴してダニーの作品とわかるようなテイスト、その人にしか出せない味わいや気持ちの入り方が感じられるようなところが好きだな。
祈り、願い、哀しみ、怒り、幸福、絶望、失望、希望。
ロックンロール一直線、ブルース一筋というような作品を作る人のスタンスには憧れはするけど、僕が深く共感するのは、こういうあらゆる感情を塗り込めたような起伏に富んだ作品の方。
だって、毎日の生活の中にはいろんな感情はいつも複雑に交差しながら自分の中にあるんだもの。それは生きている限りずっと。
どこへ行っても何をやっても結局つきまとってしまう自分らしさ、それは時々自分でも嫌気がさしたりすることもあるけれど、やっぱりそれこそが自分自身なんだとつきあっていくしかないわけだからね。
よく冷えた冷たい空気を感じながら、そんなことを思う晩秋なのです。





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コメント

[C2056]

ひるのまりさん、こんばんは。
ありますねー、聴いた時期によってその良さが感じ取れたり感じ取れなかったり。
このアルバム、最初はちょっと散漫な気もするかもしれませんが、ひとつひとつの曲はすごくいいです。
今ならきっと気に入っていただけるのではないかと思います。

  • 2013-11-27 00:09
  • goldenblue
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  • 編集

[C2055]

mono-monoさん、こんばんは。
えー、お誉めいただきありがとうございます。mono-monoさんとはどこか好みが似ているところありますよね。
mono-monoさんの紹介されるジャズのレコードも、聴いてはないけど多分気に入ると思います。

僕も最初はこのアルバムはあまりピンと来てなかったのです。ずいぶんとっちらかってちぐはぐな印象で、Liveばっかり聴いていました。
でも、Liveでのホットな印象の裏にある、インテリジェンスや割と弱気で情けない感じはむしろこっちの方がダニー・ハサウェイの本質なのかな、と。


  • 2013-11-27 00:03
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C2054]

私も ダニー・ハサウェイはライヴ盤ばかり聞いてます。
このアルバムもたしかあったので 探し出して聞いてみます。
好きなアーティストでも タイミングが合わなければ スルーするってことも多いですね♪
  • 2013-11-26 21:56
  • ひるのまり
  • URL
  • 編集

[C2053]

ダニー・ハサウェイの場合、ライブ盤ばかり聴いてしまうのです。
このアルバムは、シフォニックな冒頭が非常に退屈に感じられ、完全に聴かず嫌いになってました。
今回あらためて聴き直し、全体の素晴らしさにようやく気付きました。
もったいないですね、我ながらどうかしてます(笑)

最近では「日々の糧と回心の契機」で取り上げられるアルバムを聴き、その素晴らしさを再確認する日々です。
ありがとうございます!

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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