FC2ブログ

Entries

♪BOOGIE-WOOGIE STRING ALONG FOR REAL -My Vintage(57)-

ブギ・ウギ・ストリング・アロング・フォー・リアル
Boogie-Woogie String Along For Real / Rahsaan Roland Kirk

Released:1977

異端のジャズ・マン、ローランド・カーク。
盲目の大男で、口に2、3本のサックスを突っ込んでさらに鼻でフルートをいっぺんに吹き鳴らすような大道芸的な奏法で知られていて、音楽としては決してアバンギャルドばかりではないのに、正統派のジャズからはほど遠い音楽性が災いしてゲテモノ扱いされているような感じがあるけれど、ゲテモノどころか、「ジャズ」という言葉ではひとくくりにできないような、自らのルーツと世界観に忠実な、極めてまっとうなアーティストだと思う。
そんなカークの1977年の録音、「Boogie-Woogie String Along For Real」が今回のセレクト。
シュールなイラストのジャケットからは抽象的でよくわからない混沌とした音がイメージされるかもしれないが、1920年代や30年代の古いジャズの伝統的な香りも漂わせた、意外にも落ち着いてほっこりした音。
春らしいのどかさも感じたりして。

タイトル曲、Boogie-Woogie String Along For Realはそのタイトルどおり弦楽団を交えながらもブギウギとストライドするピアノやウォーキング・ベースが楽しい一曲。まだ気難しくなる前の、古き良きジャズの世界の匂いを感じさせてくれる。
Make Me A Pallet On The Floorもコロコロ転がるピアノがのどかでほっこりする感じのスローなブギ。温泉でハナウタを歌っているようなコルネットがかわいらしいし、ローランド自身によるヴォーカルもかなりソウルフルで味がある。
Hey Babebipsではブリブリとファンクなリズムに混沌としたムードを漂わせ、続くIn A Mellow Toneはデューク・エリントンのナンバーを泣きのサックスで歌い上げつつ徐々に舞い上がっていく。
Dorthaan's Walkは、黒っぽいベースのうねりを主軸としながらも物語性のある展開があり、ラストのWatergate Bluesではカークが師事し敬愛したであろうチャールズ・ミンガスを思わせるようなユーモアを含んだ政治的なメッセージに託した静かな怒りが感じられる。
そしてそんな曲をつなぐように置かれたスタンダードのI Loves You Porgy とSummertime の、ひっそりとして可憐な演奏が実に味わいを醸し出している。

ローランドはこの頃、脳卒中で倒れた後遺症による半身不随の不自由な体だったそうで、元々のこの人が持っていた破壊的なエネルギーこそ減少しているものの、その分力みが抜けているのか、わけのわからない感じが少なくて聴きやすくていい。
この人の音楽は、重くてヘヴィなものですらどこか呑気というかすっとぼけたところがあって、そこがいいな。
ジャズは眉間にシワを寄せて難しい顔をして聞くもんだ、みたいなことがいわゆる「正統派のジャズ」なんだとされていた世界があって、そういう人たちのせいでジャズという音楽の本質はずいぶんと歪められてしまったような気がするのだけれど、呑気でのどかだからと言ってブルースが表現されていないわけではないのだ。

残念ながらローランド・カークはこのアルバムの録音の後、脳溢血で再び倒れ、わずか42歳で帰らぬ人となってしまうのだけれど、こういう人がヒップホップなんかと出会っていたら、とても面白く刺激的な音楽を作ってくれたのだろうな、と思うととても残念だ。
初めて聴いた「The Inflatedo Tears」の“Black and Crazy Blues”の深くブルージーな演奏や、「Volunteered Slavery」での“My Cherrie Amor”や“I Say a Little Prayer”のポップでファンキーでユーモアたっぷりの要素なんかも含めて、この人の出す音には常にブルースの伝統がある。
ブルースという言葉が狭い意味に捉えられてしまうならば、黒人音楽の伝統というべきか。
むしろダニー・ハサウェイやスティーヴィー・ワンダーやジョージ・クリントンに近いような、総合的な黒人音楽の伝承者であり、それを狭い黒人の世界だけでなく世界中の人々にある種の共感を持って響かせることのできる、いわば世界音楽のアーティスト。
言い換えれば、それこそがそもそも「ジャズ」が本来持っていたものであり、広い意味での「ジャズ」だったはずなのだけれど、と、そんな問いかけも浮かんできたりもするのだけれど。



スポンサーサイト



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://goldenblue67.blog106.fc2.com/tb.php/912-32e06e6e

トラックバック

コメント

[C2184]

わんわんわんさん、はじめまして。
こちらこそ、時々ブログ拝見させていただいています。
今後ともよろしくお願いします。

ローランド・カーク、生きておられたらすんごいことになってたんじゃないかと思います。
今でこそ再評価されていますけど、生きているうちにもっと評価されるべき人でした。

[C2181]

こんばんわ。わんわんわんと申します。
もしローランド・カークが存命ならば面白い音楽をたくさん作っていたかもしれませんね。
  • 2014-03-26 21:34
  • わんわんわん
  • URL
  • 編集

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

Profile

golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

Calendar

07 | 2020/08 | 09
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

Gallery

Monthly Archives