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♪EAST OF THE SUN -My Vintage(75)-

The West Coast Sessions
The Best of West Coast Sessions / Stan Getz
Recorded:1955-57

スタン・ゲッツに関しては、どのアルバムがどう、というよりも全部まとめて好き。曲名なんかも実は全然覚えていない。
ただそこにスタン・ゲッツの音色が流れているだけでいい、っていう感じ。
やはり素晴らしいのは50年代の所謂ウエストコースト・ジャズと呼ばれた一連の録音で、そこで選んだのは、1997年にヴァーヴから発売された1955年~57年ハリウッドでのスタン・ゲッツのセッション集。本当は3枚組のボックス・セットで発売されたものをおすすめしたいのですが、そこから10曲を選りすぐったコンピレーション盤がコンパクトでいい。とにかくかっこいい選りすぐりの演奏集なのだ。

Four
Of Thee I Sing
A Handful Of Stars
Suddenly It's Spring
Blues For Mary Jane
You're Blase
How About You?
East Of The Sun (And West Of The Moon)
But Beautiful
S-h-i-n-e

スティディな演奏の中を、まるで流星のように、まるで稲妻のように、かっとんでいくスタン・ゲッツ。
その音色は柔らかくとても穏やかでありながらフレーズはとてもスリリング。
どこまでも高く昇っていって空の上まで連れて行ってくれる。夢見心地にさせてくれる。

セッションのメンバーは、Stan Getz (tenor saxophone)、Conte Candoli (trumpet) 、Lou Levy (piano)、Shelly Manne (drums)、Leroy Vinnegar (bass)。
ジャズは黒人の文化から生まれた音楽だけど、この録音のメンバーはLeroy Vinnegerを除いては白人、所謂黒人のジャズにある泥臭さがない。ドロドロしない、汗臭くない。
例えるならば関東の落語みたいな感じ?関西風のコテコテの笑いやバタ臭い人情がない代わりに、“粋”な味わいがある。
それが好きかどうかは好みだとしか言いようがないしそれぞれに素晴らしいのだけれど(不毛な文化論争には組しないのだ)、泥臭くないからといってスタン・ゲッツたちの演奏が黒人音楽の本筋からはずれているかといえば、そうは思えない。
小粋で甘やかなその音には、しかしながら確かにブルースがあるのだ。
ここ大事なところなのだけど、アクのない美しくも甘美な音なのに、そこにはブルースとしか呼びようのない感情が確かに息づいているのだ。
スゥイートなブルース。 甘い憂鬱。
そんな矛盾する感情そのものが、実はブルースと呼ばれる感情そのものなんじゃないか、とふと思う。
そしてその感情こそ、人生そのものなのではないのか、と。

Of Thee I Singのほんわかとハッピーな演奏や、愁いを帯びたSuddenly It's Spring、がっつりとホットな演奏のHow About You?S-h-i-n-e なんかも大好きだけど、一番好きなのはA Handful Of Stars
この甘やかな音色にいつまでも酔いしれていたくなる。
とっぷりと日が落ちて、幾分涼しげな風がそよぎ、空には夏の星。
気の合う人とビールでも飲みながら、ちょっと感傷的な思い出話でもしたくなるような。
ちょっとせつなくて、ちょっと儚げで、ちょっとほろ苦くて、でもとっても甘い時間。
そんなひとときを幾つかでも持つことができたのなら、生きることはそんなに悪いことじゃないと思えるんじゃないかな・・・なんて気分にさせてくれる、珠玉のバラード。

残念ながら梅雨の真っ只中、星空ははっきりとは見えないことが多いけれど、せめて心には夏の星空の煌めきを。



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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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