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♪MUSICAL ROMANCE -My Vintage(103)-

Musical Romance
Musical Romance / Billie Holiday、Lester Young

Recorded:1937-41

Man I love
This year's kisses
Mean to me
Back in your own backyard
I'll never be the same
Me myself and I
Time on my hands
Who wants to love
I must have that man
Foolin' myself
When you're smiling
Sailboat in the moonlight
He's funny that way
Laughing at life
Without your love
Fine and mellow

ビリー・ホリデイとレスター・ヤングの名義で出ているこのCDは、10枚組で出たコロンビアのビリー・ホリデイのボックス・セットからの編集盤で、1937年~41年にかけてレコーディングされたテディ・ウィルソン楽団をはじめとするビッグ・バンドの録音の中から、ビリーとレスターが参加しているものをピックアップしたもの。(※一曲のみ58年のマル・ウォルドロンのバンドでのセッションを含む。)
録音の主なメンバーは、ベニー・グッドマン(cl)、バック・クレイトン(tp)、テディ・ウィルソン(p)に当時オール・アメリカン・リズムセクションと呼ばれたジョー・ジョーンズ(ds)、ウォルター・ペイジ(b)、フレディ・グリーン(g)など錚々たるメンバーで、禁酒法時代に唯一規制の緩かったカンザスシティの酒場で鍛えられ、禁酒法の廃止とともに職を求めてニューヨークへ出てきた強者たちばかり。
ビリー・ホリデイはフィラデルフィアに生まれ、不幸な生い立ちを背負いながらニューヨークの非合法のクラブで歌っているところをジョン・ハモンドにスカウトされたそうで、この録音の頃は22歳。
ビリー・ホリデイといえばもう名前だけで伝説化されてしまっていて、若く貧しいカップルに望まれずに世に産みだされ、10歳のときに性被害にあい、黒人だから合意と見なされて感化院に送られ、売春婦になり、やがて酒と麻薬に溺れ・・・そんな暗いイメージがつきまとっているのだけれど、この録音から聞こえてくるのは、そういった伝説とはほど遠い、歌うことが嬉しくて仕方がないような少女のような姿だ。
ブルースを歌っても決してメランコリックでも陰鬱でもなく、むしろ愛らしさすら感じられる。
ビリーのレパートリーの多くは当時のミュージカルの挿入歌だったり職業作家が書いたとるに足らないラブ・ソングだったりがほとんどだけれど、ビリーの歌はそれらの歌に奥行きと深い陰影を作り出している。

そしてレスター・ヤング。
カンザスシティでカウント・ベイシーの楽団でデビューしたレスターの吹く音色やフレーズは、とてもソフトでクール。
それは、当時全盛だったコールマン・ホーキンズやベン・ウェブスターらの野太く荒々しい奏法とはあまりにかけ離れていたため、客やミュージシャン仲間からは白い眼で見られていたのだそうだ。ニューヨークでレスターと出会ったビリーはそんなレスターに対して「今に見ていなさい。そのうち誰もがあなたのプレイをマネするようになるわよ」と励ましたのだそうだ。
ここに収録されているのは、 そんな二人が一番輝いていた時期の輝かしい演奏。
二人が惹かれあい、ともに支えあう姿は、単なる恋仲以上の、なんでもいろんな想いを共有しあえる同志とでもいうべき存在だったことがこの録音からも聞こえてくる。

Someday he'll come along
The man I love And he'll be big and strong
The man I love And when he comes my way
I'll do my best to make him stay
He'll look at me and smile
I'll understand Then in a little while
He'll take my hand and though it seems absurd
I know we both won't say a word

 いつの日か彼は私に寄り添って
 私の愛する男 大きくて強い男
 いつか彼が現れたなら
 どんな手を使っても彼を引き留めるわ
 彼は私を見つめ微笑むの
 ほんの少しですべてわかりあえる
 彼は私の手をとるの
 とてもおかしなことだけど
 ふたりには言葉なんていらないの
     (Man I love

まるでレスター・ヤングのことを歌ったみたいなこの歌。
しなやかなレスターの音色に支えられたビリーの歌はとてもチャーミングだ。

そして最高に素敵なのはこの歌。

When you're smiling
When you're smiling
The whole world smiles with you
When you're laughing
When you're laughing
The sun comes shining through
But when you're crying
You bring on the rain
So stop your sighing be happy again
Keep on smiling 'Cause when you're smiling
The whole world smiles with you

 あなたが微笑めば、世界が微笑みかける
 あなたが笑えば、お日様が顔を出す
 けど、あなたが泣いているときは
 世界中が雨なのよ
 だから微笑んでいてね
 あなたが微笑めば、世界が微笑むのだから
    ( When you're smiling

こんな風に誰かを、そして世界を愛せたらいいよね。

しかし、残念ながら幸せな時間はずっとは続かなかった。
売れっ子になったビリーは、その華やかさとは裏腹にすさんだ生活を続け、酒とドラッグに溺れていく。
レスターは44年に徴兵にとられ、軍隊での暴力的な扱いの中で心を病んでドラッグに逃避し、心も身体もボロボロになってしまう。
このアルバムには一曲だけ、晩年の58年に録音されたFine and mellow という曲が収められているけれど、すでに若き日のチャーミングでドリーミーなビリーとレスターの姿は失われてしまっているのだ。

レスター・ヤングは59年の3月に病をこじらせてわずか50歳で死去。
後を追うようにビリー・ホリデイも同じ年の7月に亡くなってしまう。
レスターを失ったときのビリーの気持ちはこの歌みたいだったのかも知れない。

Without your love
I'm like a song without words
Just like a nest without birds
Without your love
Fine sun above
Will never shine at my door
My life holds nothing in store
Without your love
I rode the crest of a wave
With you beside me
Now who's to guide me
Because I'm lost at sea
Without your love
I'm like a plane without wings
A violin with no strings
Without your love
   (Without your love

  あなたの愛がなければ
  わたしはまるで歌詞をなくした歌のよう
  巣をなくした鳥
  あなたの愛がなければ
  わたしの部屋にお日様は届かない
  何にも売っていないお店みたい
  あなたに寄り添って波のてっぺんではしゃいでいたの
  誰がわたしを導いてくれるの?
  わたしは大海原の迷い子
  あなたの愛がなければ
  わたしは翼をなくした飛行機
  弦のないヴァイオリン
  あなたの愛がなければ



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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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