Sailin' Shoes / Little Feat Released:1972
さて、5月も後半に差しかかると気温は25℃越え当たり前、湿気もずいぶん高くなって、さわやかな初夏というよりも蒸し暑い夏の様相が日増しに強くなってくる。
そうなると途端にビールが旨く感じるのだから、気候や風土と食の関連性というのは密接なものだと思う。
そして音も。
というわけで今回のMyVintageはリトル・フィート。
ブルースもジャズもニュー・オリンズR&Bもごっちゃまぜのドロドロさで、それでいてカリフォルニアの空みたいにスコーンと抜けた感じと、どこかぶっとんだ感じのコントラスト。
これ聴きながら飲むビールが旨いんだ(笑)。
いつだったか、朝の通勤時にこれ聴いたら、もう朝から飲みたくなって仕方がなくなってしまった(笑)。
滑り落ちていくのはかんたんなこと
墜ちていくのはとてもたやすいもの
記憶は流れ出し
何にもすることもない
おまえがなくしてしまった愛
誰も取り戻すことなんてできはしない
それらは本当に存在しているのか??
俺の暮らしは毎日寒い
魔法は全部どっかへ消えちゃった
いっしょに過ごした日々ももう溶けてなくなった
俺の弾く悲しいメロディーみたいにね
永久に漂流し続けるなんてまっぴらごめん
おまえに捨てられた陰の中でずっとなんて
だからタバコにもう一本火をつけて
忘れるために思い出そうとするってわけさ
豪快で勢いのあるギターで始まる
Easy To Slip 、さわやかな曲調からは思いも依らないこのやさぐれた世界観がリトル・フィートのおいしいところ。ブルーでヘヴィーな歌詞の中に、どこか自分を嗤うユーモアがあるところが、ブルースが彼らの音楽の中に息づいている証だと思う。
引き続きずしんとヘヴィーな
Cold, Cold, Cold 、そして気怠くやるせない雰囲気の
Trouble 。
この歌の歌詞もおもしろい。
車が動かなくなってしまったお前は叫び声をあげた
ナーヴァスになったお前は、はち切れるまで食べ始める
そして今じゃ、お前はでっぷり太って、靴だって足に入りはしない
トラブルを抱え込んでしまったね
オーダーメイドのトラブルを
4曲目は一転、ハードなブギーの
Tripe Face Boogie 。ロウェル・ジョージのスライドが唸り、ビル・ペインのピアノが跳ね回る。
Willin' はリトル・フィートの代表曲のひとつ。
国境あたりでヤバい仕事をするトラック・ドライバーの嘆きが、カントリー・タッチのしんみりとした演奏に乗せて呟かれる。せり上がってくるようなやるせない感情がまたなんとも妙。
続いて、ロウェル・ジョージのスライドがぐっと渋い重たいブルースの
A Apolitical Blues 、そして、アルバム・タイトル曲、
Sailin' Shoes はちょっとクスリでイカれてしまった匂いのする、奇妙に歪んだブルージーな曲調。
Teenage Nervous Breakdown は打って変わって、ハード・ロック的な暴走ロック。っていうか、このベース・ラインとかキリキリしたギター・ソロと金切り声のシャウトは実際ハード・ロックそのものだな。
Got No Shadow ではちょっとサイケデリックな匂いを漂わせ、ビル・ペインのラグタイムっぽいピアノがいかれた
Cat Fever ではもうずいぶんとへべれけで、ラストの
Texas Rose Cafe がまたヘンな曲。この曲の中盤、ふわっと雰囲気が変わってふわりふわりと舞い上がるようなインプロビゼーションの部分なんて実にジャズ的で、こういうこの人たちの一筋縄ではいかないところがかっこいいんだな。
世間一般的には3rdの『ディキシー・チキン』が最高傑作とよく言われていますが、個人的にはこっち。
このごちゃ混ぜ感、何でもアリ感と、なんともやけっぱちというか、やさぐれた感じが堪らなくいい。
僕自身、普段は生真面目で細かいキャラで通っているけれど、自分の中にはルーズでテキトーでぶっ飛んでいて、へべれけにやさぐれた感じへの憧れっていうのがどこかにあるんだろうな。
リトル・フィートを聴いていると、そういう自分の裏キャラがむずむずしだして、うーむ、これはあんまり健全な日常生活にはおすすめできません(笑)。
なんて、うだうだ言いながら一本記事が仕上がった。
さぁ、飲もう。
まだ日の高いうちから飲むビールは格別だ。
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おっしゃるとおりそういう一服なんでしょうね。
another cigaretteに巻いてあるのは、文字通りanotherなものだったのでしょう。