真夜中の裏通りのバー、酔いつぶれた男。転がった酒瓶。煙草の吸い殻。 気怠くやるせないミュート・トランペットが響くVirginia AvenueやMidnight Lullaby、Little Trip To Heaven (On The Wings Of Your Love) あたりのジャジーな楽曲もあれば、Old Shoes (& Picture Postcards)みたいにディラン風のギター弾き語りもありで、ピアノ・マンの印象が強いけれど実はヴァラエティーに富んだ曲たち。 明け方の薄い灯りの中でひとり車を走らせるOl' '55、バーでの出会いを歌った小粋なI Hope That I Don't Fall In Love With You やRosieなんか意外にもギターがいい味を出しているし、唯一のアップ・テンポのナンバーでのガサツな感じにはIce Cream Manなんかは後のアヴァンギャルドさの片鱗が垣間見えたりする。 で、そんな曲の中で一際グッと来るのは、やっぱりピアノ弾き語りのMarthaやGrapefruit Moon。 いやぁ、いいなぁ。五臓六腑にしみわたる。 切ないねぇ。 悲しみや、怒りや、嘆きや諦めやため息。 そういうものも含めて、過ぎてしまった過去の過ちを後悔したり、今の自分の姿を嘆いたりという歌が大半であるにもかかわらず、この音楽は美しいのです。 悲しみや怒りや嘆きや諦めを歌いながらも、どこかにそれでいいんだぜ、と肯定する視座がある。 いろんなことがあるけれど、全部ひっくるめて、それでいいんだよ、みんな大変なんだ、でもそれでいいんだよ、そういうもんなんだ。そんなことはおいといて酔っぱらってしまおうや。一夜明ければそんな苦い思いも消えてしまうさ。どんなことも、やがては赦せるようになるもんさ。 年老いた酔いどれのじいさんに、そんな風に諭されているような気持ちになれる。 あぁ、きっとそうなんだろうな。やがて何もかも赦せるようになる。だから俺のことも赦してくれよな、なんて気持ちになって、すっと肩の荷を降ろせるような感じになれる。
Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。 “日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。 自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。
朝晩は冷えますね。先日コタツで初うたた寝をしたら汗びっしょりかいてしまいましたが。
お酒、普段はあんまり飲みません。
でも、言いたいことを無責任に言えなくなってくたせいでしょうか、だんだんお酒の機会が増えてきてしまっています。
いい音聴いて気持ちよい程度に飲んで(人と外で飲むとつい飲みすぎて愚痴っぽくなる)いい気分になれるならそれもよし、という感じです。
Marthaは泣けます。
40年ぶりの昔の恋人への電話。っていうシチュエーションだけで泣けます。