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♪ROCK AND ROLL -My Vintage(108)-

Rock N Roll
Rock'n'Roll / John Lennon

Released:1975

MyVintageシリーズ、いよいよこの108枚目が〆。最終回はこのアルバムです。
ジョン・レノンの1975年作品「ROCK'N'ROLL」、ジョンが子どもの頃から好きだった50年代のロックンロールのカヴァー集だ。
チャック・ベリーやリトル・リチャードやジーン・ヴィンセントらの、古くさいオールド・スタイルのロックンロールは、今聴いてもけっこう古くさいアレンジだけれど、これはこの当時でもかなり古くさく感じられたはずだと思う。
ピアノやサックス主体のアレンジは、壮絶なテクニックのギター・バトルや丁々発止のインプロヴィゼーションもない、リズムももっちゃりして疾走感もカタルシスもない、かといって黒人音楽の魅力であるファンキーさやスイング感、いわゆるノリがすごいわけでもない。歌われているのはほとんどがかわいいあの娘的なラヴ・ソングかハート・ブレイク・ソングで、ハッと人生を鋭くえぐるような言葉が歌われているわけでもない。
でも、このアルバムからは確かにロックンロールとしか呼べないようなスピリットを感じることができる。
それは多分、ジョン・レノンという人そのものが、ロックンロールを体現しているからだ。
ジョン・レノンという人、そもそも決して二枚目ではない。ギターを弾く姿だってガニマタでかっこよくもないし、とびっきりに歌が上手いわけでもないし美しい声を持っているわけでもない。
それでも多くに人々が強く惹きつけられるジョンのかっこよさとは、つまりそういうことだ。
これはもう言葉では説明できないな。
そのかっこよさは、例えばオープニング曲のBe-Bop-A-Lulaの始まりの♪ウェ~~~ル、のひと声や、Medley: Rip It Up / Ready Teddyの爆発するみたいな♪ウワァ~ウッ!っていうシャウトや、Peggy Sueの間奏の直前の♪アウッゥっていう掛け声や、続くコード・カッティングだけのギターのキレ、Stand By Meの終盤に耐え切れずに叫ぶような♪Whennever you're in trouble won't you~というアドリブのシャウト・・・例を挙げればキリがないけど、こういうちょっとした何気ないところにどうしてもジョンでなければ出せないかっこよさがあって、それはジョン自身がロックンロールを生きているからこそ生まれてくるかっこよさなのだろう、と思うのだ。

それにしてもここに収められた13曲、全部大好きだな。
原曲にある黒っぽさこそ薄まってはいるもののニュー・オリンズらしい楽しげなノリのあるAin’t That A ShameYa Ya、リトル・リチャードなりきりのSlippin’ And Slidin’ では原曲への憧れを最大限に、一方ちょっとヘヴィーなアレンジを施したSweet Little SixteenBony Moronie、レゲエっぽいルーズさを取り入れたDo You Wanna Danceらはこの当時ジョンの中で個人的に流行っていた原曲換骨奪胎アレンジの流れのもののようだ。
サム・クックにチャレンジしたMedley: Bring It On Home / Send Me Some Lovin’は後半一瞬ぎゅっとせまってくる狂おしさに胸締めつけられる。
そして、このアルバムが録音される発端となった"You Can’t Catch Me"。そもそもはビートルズ時代に録音した"Come Together"が、チャック・ベリーの版権管理者よりYou Can’t Catch Meの盗作だと訴えられ、チャックの曲をカヴァーすることを和解の条件にされたことによるのだそうだけれど、そういった経緯を踏まえて原曲を敢えてCome Together風のテンポで演ってしまうジョンの諧謔精神に敬服したり。

この頃、ジョンは明らかに行き詰まっていた。
ファンやマスコミは未だにビートルズの幻影を求め、政治的なメッセージはFBIに睨まれ、ヨーコとも別居していわゆる“失われた週末”を迎えていた時期。
満たされないままぎりぎりまで追い詰められて方向性を見失ってしまいそうになったジョンは、自らのルーツに立ち返ることで何とか自分を立て直そうとしたのだと思う。
これから先どこへ向かうべきなのか?そのことを再確認するために、ルーツに立ち返ってみる必要があった。
そしてそこで得た答えは、きっととてもシンプルなものだったのだと思う。
思いのままに、自分らしく生きること。
それこそが少年時代にジョンがロックンロールから受けとったメッセージそのものだった。
そして僕たちがジョンから手渡してもらったメッセージも。

ラストはこの曲、ロイド・プライスの"Just Because"。
曲の冒頭、DJ風にジョンがこんなことを語っている。それをおしまいのご挨拶に代えさせていただこうかと思います。

「思い出すよ、13歳だったっけ。いや、14だったかな?それとも22だったっけ?いや、やっぱり確か12の頃だ。
こちら、ワシントン・オ・ブギー。ニューヨーク東通りのレコード・プラントから皆様におやすみのご挨拶を。
ちょっとでもいい時間が過ごせることを願っています。みんなでよおっ!って言いあえるようなね。それではごきげんよう。」



原曲リスト
Be-Bop-A-Lula / Gene Vincent
Stand by Me / Ben E. King
Rip It Up~Ready Teddy / Little Richard
You Can't Catch Me / Chuck Berry
Ain't That a Shame / Fats Domino
Do You Wanna Dance? / Bobby Freeman
Sweet Little Sixteen / Chuck Berry
Slippin' and Slidin' / Little Richard
Peggy Sue / Buddy Holly
Medley: Bring It On Home to MeSend Me Some Lovin' / Sam Cooke
Bony Moronie / Larry Williams
Ya Ya / Lee Dorsey
Just Because / Lloyd Price


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コメント

[C2499]

LA MOSCAさん、毎度です。
引退ね、そう言われればそうかもしれないですね。カッコ付きの「ジョン・レノン」でいることに疲れて、素のジョン・レノンになろうとしていたというか。
いずれにしてもこれで一区切りだ、という意味合いが“Just Because”には込められていると思います。お別れに際してのかっこのつけ方、かっこいいです。

“Stand by me”は、またいずれ機会があれば(笑)。


  • 2015-03-04 08:05
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C2498] 思うに

CDが普及して過去のモノも新しいモノも分け隔てなく楽しめる今より当時の方が古く聴こえたような気がします。意識的にそうしたんだろうけど。

それはgoldenblueさんの言うように行き詰ってた反面、もしかすると引退を考えてルーツに還ったからじゃないかなぁ?と。

そうなると、「ジャスト・ビコーズ」のお別れの言葉も深い意味があるような気が。

ちなみに一番、好きなんですけどね、この曲が。

あっ、東中野で聞き逃しちゃったな、「スタンド・バイ・ミー」

いつか聞かせてくださいね!(笑)

[C2493]

ezeeさん、毎度です。
Stand by meといえば東中野の節はサンキューでした。あれはかなり楽しかったっす。
シャウトひとつで他の誰にも出せないようなロックンロールをバシッと決める、ほんまかっこええ男です。

[C2491]

stand by meはジョンので初めて知りました。
感動して何回も聴きましたよ。シングル盤で!
やっぱ声そのものが、ロックンロールですな〜

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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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