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♪EXTRAS -My Vintage(39)-

エクストラズ
Extras / The Jam

Recorded:1978-82

TheJamは、リアルタイムで聴く機会があったにも関わらず聴きそびれてしまったバンド。
当時はその良さを知ろうともしなかった。というのも、当時クラスにジャム贔屓の女の子がいてキャーキャー騒いでいたから。ベイ・シティ・ローラーズとかと同じ類のアイドル・バンドだと思っていたのだ。
何しろ高校生の頃の僕はまるで女の子にモテなかったから、女の子にキャーキャー言われるようなカッコいい男はみんな敵だったのだ(笑)。もちろん今思えば、当時の自分のような男子高校生が女の子にモテるわけないと断言できるし、出来るものであれば当時の自分にアドバイスしてあげたいくらいなのですが、まぁその話はともかくとして、そんなわけで僕がちゃんとジャムを聴いたのは、スタイル・カウンシルが大ヒットしてから後のこと。『SNAP』という二枚組のベスト盤だった。「おーっ!めちゃくちゃカッコええやん!」としびれてしまって、以来ポール・ウェラーは密かに僕のアイドルの一人になったのだった。

この『EXTRAS』というアルバムはジャム解散から十年を経て出された編集盤。
時代で言えば79年『Setting Sons』~80年『Sound Affects』~82年『The Gift』の頃のデモ音源やシングルのB面、アウトテイクなんかを集めたもので、僕はブートレッグや発掘音源の類には基本的には興味が湧かないのだけれど、これはちょっと別扱いになってしまうくらいのお気に入り。
とにかくカッコいいのです。
特にこの盤で改めて認識したのは、収められたいくつかのデモ・バージョンで聴くことの出来るポール・ウェラーの弾くギターのカッコよさ。スタイル・カウンシルから入っているから、ポール・ウェラー=ギタリストという認識がそもそもなかっただけに、こんなに巧かったんだと思ったんですよね。
もちろん華麗なフレーズをチャラチャラ弾くスタイルではなく、シャープなリフをジャキジャキと演るだけなのだけれど、実に骨太で、シャキッと一本筋の通った音の質感がすごい。
例えばThick As Thieves。ポール・ウェラーの歌とギターだけなのにまるでベースもドラムも入っているかのようにはっきりと曲の輪郭が浮かび上がってくる。歌とギターだけなのにぐいぐいと引っ張られてしまうグルーヴがあるのだ。
弾き語りっぽいBurning Skyもただの弾き語りではなく確かなビートが聴こえてくる。ベースのブルース・フォクストンを加えたSaturday's KidsThe Eton Riflesも、正規のアルバムに収録されたバージョンとはまた違う、むき出しになったカッコよさがある。
音楽というものはシンプルであればあるほど実は難しい。ごまかしが効かない。演奏者の素が全部出てしまう。
だからこそポール・ウェラーの歌とギターにある、スカッとした芯の強さ、ビシッと筋が通った潔さにはただただ恐れ入ってしまうのです。
もちろん、リック・バックラーを加えた3人での演奏こそがジャムの本来のカッコよさ。
そこには、たった3人で演奏しているとは思えないほどの強度がある。
むしろたった3人だからこそ成し得るのかもしれない、誰も言い訳できない緊張感による絶妙のコンビネーションがたまらないのだ。
But I'm Different NowSmithers-Jonesの疾走感、いかにもジャムらしいBoy About TownWe've Only Started。モータウンへのリスペクトが感じられるPop Art Poemも地味ながらとてもいい曲だし、The Great Depression Pity Poor Alfie/Feverではスタイル・カウンシルにつながるソウルフルな要素がたっぷり。
Beat Surennderと並んでラスト・シングルの候補曲だったというA Solid Bond In Your Heartは、後にスタイル・カウンシルとして再度レコーディングされることになった。

そしてこのアルバムの最大の楽しみは、全部で8曲収められているカバー曲。
ビートルズのAnd Your Bird Can Sing、フーのDisguisesSo Sad About Us(めちゃくちゃカッコいいっ!)、スモール・フェイセズのGet Yourself Togetherといった、少年の頃から大好きであったであろういわゆるブリティッシュ・ビートバンドのやや埋もれた名曲をなりきり状態で嬉々として演奏するポール・ウェラーはほんとうに楽しそうだし、一方でカーティス・メイフィールドの名曲Move On Upや、シャイ・ライツのディスコ・サウンドを見事に昇華したStoned Out of My Mind、JBにチャレンジしたI Got You (I Feel Good) には、ソウルに傾倒していくポール・ウェラーの憧れが垣間見える。

どの曲もビシッと芯が通っているんですよね。
男気?いや、そういうのに男も女もない。
スタイルこそ変わっても変わらないキリッと引き締まった潔さ。真っ直ぐな誠実さ。

冬の冷たい風が心にしみる12月に、そんなポール・ウェラーの潔さは、ともすれば沈み込んでしまいそうな僕の心を蹴り上げてくれる。
シャキッとせーよ、と背筋を伸ばさせてくれる。
おうっ、そうだった、背筋伸ばして、真っ直ぐに、ひとりでちゃんと立って歩くんだった、甘えてばかりはいられない。そんな思いにさせてくれる。
まだまだやるべきことはいくらでもあるもんなー。






おまけ:ジャムのカバーは他にもたくさんあります。
ビートルズのSlow Down:1st収録
ウィルソン・ピケットのIn The Midnight Hour:2nd収録
マーサ&ヴァンデラスのHeat Wave:4th収録
アルバムに残されていないものには、テンプテーションズのMy Girlやベン・E・キングのStand By Meなんかもあります。
どれもほんとカッコいいなぁ!

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コメント

[C2062]

ezeeさん、毎度です。
ジャム、かっこいいっすよ。スタカンでもWalls Come Tumbling DownやSolid Bond In Your Heartが好きだったので、すんなりジャムにはまりました。
特に後期ですね、黒いのは。Town Called MaliceにBeat Surrender。言うことなしのカッコ良さです。
  • 2013-12-09 01:08
  • golden blue
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  • 編集

[C2061]

スタカンも好きですけど、ジャムもやっぱいいですね。
己は最後の頃のTown Called Maliceが最初だったですかね〜
今、思えばソウルっぽいですな。ファッションもそうですが、音作りやカヴァーのセンスもいいですね!
  • 2013-12-09 00:07
  • ezee
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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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