Briefcase Full of Blues / The Blues Brothers Released:1978
ブルース・ブラザーズ!
その名前を聞いただけで、なんだかウキウキと楽しい気分になる。
わぁぁぁぁーっとわめきながら跳びはねたくなる。
気分がハイになりテンションアゲアゲになる。
エンターテイメントに徹しながらもスピリットがビシバシと感じられる二人のヴォーカル、ツボをつきまくりのギターとグイグイと突き進んでいくタフなリズム隊、そして煽りまくるホーン・セクション。
文句なしにかっこいい!
元々はブルース好きのダン・エイクロイドの発案によるものだったらしい。コメディアン仲間のジョン・ベルーシは天啓に触れたようにブルースとR&Bの虜になり、出演したサタデー・ナイト・ライヴでウケまくって、そのままアルバム・デビュー、そして映画に進出して世界中をそのぶっ飛んだパワーで席巻し、ブルースとR&Bのスピリットの種を蒔き散らかしたのだ。
そういう僕ももちろん、映画を見てぶっ飛んだうちのひとり。
アレサやレイ・チャールズやジョン・リー・フッカーやJBのかっこよさも含め、そのパワフルさに圧倒された。
当時、主流の音楽はニューミュージックとハード・ロックとAORで、黒人の音楽と言えばディスコだった。そのバタ臭さとバカみたいな脳天気さはあまり共感できる種類のものではなかったし、もっと古い黒人音楽に対しては、古臭さやカビ臭さを感じてなんとなく敬遠していたのだ。そんな80年代前半のティーンエイジャーにとってブルース・ブラザーズは目からウロコのかっこよさで、おそらくはその時の印象がやがてストーンズを通じてブルースやR&Bにはまっていく土台になったことは間違いない。
映画のサントラ も、この後出た『
メイド・イン・アメリカ 』も大好きなんだけど、一枚選ぶとすればやっぱりコレだな。
日本盤タイトルは『ライブ・デビュー/ブルースは絆』とされているけれど、実際はライヴっぽい観衆の音を重ねた疑似ライヴだったらしい。
とはいえ、音そのものはほぼ一発録りのライヴ感がビシビシとあふれる生々しさで、そのときスタジオにあふれていたであろう楽しさや勢いまでそのままパッケージされていると感じさせてくれる。
Opening: I Can't Turn You Loose Hey Bartender Messin' With The Kid (I Got Everything I Need) Almost Rubber Biscuit Shot Gun Blues Groove Me I Don't Know Soul Man 'B' Movie Box Car Blues Flip, Flop & Fly サム&デイヴの“Soul Man”、キング・フロイドの“Groove Me”、ジュニア・ウェルズの“Messin' with the Kid”といったそうそうたる名曲をのりのりで歌うジェイク・ブルースことジョン・ベルーシ。決して巧いとは言えないけれど、大好きなシンガーへのリスペクトをとことんなりきってしまうことで表現する、そこに音楽への深い愛情を感じるのだ。
そしてエルウッドことダン・エイクロイドの魅力は、低音とハープ。"Hey Bartender"や“I Don't Know”
でのソロや"Shot Gun Blues"でのバッキングのかっこよさ、そして"Soul Man"でのコーラスのかっこよさ、"Rubber Biscuit"での早口のラップみたいなトーキング・ヴォーカル。芸人魂、ですよね。
そしてもちろん、バンドのメンツが凄い。
全盛期のスタックス/メンフィス・サウンドを創ったスティーヴ・クロッパーとドナルド・“ダック”・ダン、それにバリバリのブルース・ギタリスト、マット・マーフィー。ドラムは後にチャック・ベリーやキース・リチャードとも共演することになる若き日のスティーヴ・ジョーダン。バンドのミュージカル・ディレクターであったポール・シェーファー、それにルー・マリーニ、トム・マローンらによるホーン・セクション。
これらのミュージシャンたちは今でこそリヴィング・レジェンドとしてリスペクトされているけれど、当時はフュージョン系のテクニックに秀でたいわゆるスタジオ・ミュージシャンが全盛の時代で、MGズの二人などは古いタイプの音楽しか演奏できない職にあぶれたロートル・ミュージシャンでしかなかったのだ。
黒人音楽はディスコ一辺倒で、ブルースなどは懐メロ扱いの前時代的な音楽だった時代に、ブルースやR&Bへの再評価の場を作ったという意味で、このアルバムは重要な作品なのだと思う。
そしてもうひとつ重要なのは、本来ブルースが持っていた感情表現の豊かさの側面を再び浮かび上がらせたこと。
鍛え抜かれた技術を持った凄腕のミュージシャンたちが演奏する高度な音楽は、結果的に音楽への敷居を高くしてしまっていた。ブルース・ブラザーズの音楽からは、ブルースやR&Bへの愛情と敬意、それを素直に表現していることへの親近感が感じられる。「ひょっとして俺にもできるんじゃないか」と思わせてくれるような親しみ。
そういう意味でこのアルバムはブルース/R&Bにおけるパンク・ロック的な役割を果たしたのではないかと思うのです。
まぁそういう諸々はともかく、理屈抜きにかっこよくて楽しいよね。
元気が出る。
いろんなことがなかなかうまくいかなくて空回りばっかりの毎日で、無条件に元気が出るということはとても大切なことなのだ。
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確かに、今聴けばよくある普通のR&Bかもしれませんね。
これは世代によるものなのかなぁ、とも思いますが、僕らの世代が音楽に興味を持った頃って、ほんとフュージョンやAORが大全盛で、とにかくテクがなけりゃ楽器を持つな、みたいな時代だったのです。天下のストーンズだって当時はクソミソ扱いでしたからね。ロックは進化していくもの、みたいな幻想もまだまだありましたし、こういう古いタイプの音楽は端もの扱いでした。
そーゆうテク至上主義、進化至上主義な感じへの反発がルーツ系の見直しにつながっていったのかな、なんて思うのですが、ブルース・ブラザースなんかはまさにそのトップバッターだったのではないか、と。