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♪EMOTIONAL RESCUE -My Vintage(54)-

Emotional Rescue
Emotional Rescue / The Rolling Stones

Released:1980

2月21日のアブダビを皮切りに始まったストーンズの14 ON FIREツアーは3回の東京ドーム公演を終え、ストーンズ一行は次の公演地、マカオへ向かった。
僕は今回、仕事のドタバタもあってなんとなく気乗りしないまま見送ってしまいましたが、界隈の盛り上がりを見るとやっぱり行けなかったのはちょっと残念、というかかなり残念。大阪追加公演、あるんじゃないかとちょっとだけ期待していたのですが(笑)。

ストーンズの50年に及ぶ長い歴史の中で「最高傑作だと思うアルバムは?」と問われると、一瞬答えに窮しつつもおそらく『Begger’s Banquet』だと答えると思う。
では「一番好きな作品は?」と問われると、実はこれかもしれない。
少なくとも聴いた回数ではこれが一番多いのではないかしら。
世間的には決して評価の高いアルバムではないし、突出した名曲が入っているわけではないけれど、ファンクからレゲエ、ブルース、ロックンロール、カントリーといったストーンズが影響を受けてきたさまざまな要素がバラエティ豊かにぶちこまれているのがいい。
ある意味ストーンズの見本市的な感じ。

アルバムの白眉はなんといってもオープニングのDance (Part 1)
前作の“Miss You”を更に発展させたストーンズ流のファンク・ナンバー。ぶりぶりとしたベースがたまらない。
そして煽るようなミックの語りとシャウト。
「キース、何してんだ?表へ出かける時間だぜ。
 起きろ、表へ出て、何か新しいものを手に入れようぜ!」
ちょっとヒップホップっぽいスクラッチやパーカッション、その合間を縫うギターも実にかっこいい、ストーンズならではの黒さがたっぷりと詰まった一曲だと思う。

黒っぽいといえば、タイトル曲のEmotional Rescueがこのアルバムのもうひとつのハイライト。
最初はミックのファルセットがどうにも気持ち悪くて何なんだこれは?と思ったけれど(笑)、聴くたびに気持ちよくなってきていつの間にか中毒的になってしまうような一曲。
ベースラインがとにかく気持ちいいんだな。そしてうねうねとしたサックス、タメの効いたチャーリーのドラム。
この2曲のかっこよさは、改めてストーンズが「リズムのバンド」だということを思い知らせてくれる。
超絶華麗なテクニックや、がっちり決まったバンドアンサンブル、或いは泣かせる美しいメロディーやハーモニー、ではなく、リズムと間。決して「リズム隊主体のバンド」という意味ではなく、キースとロニーのギターも、ミックのヴォーカルも(ついでにダンスも)、リズムと間にこそかっこよさがあるのだ。

Send It To Meは、ちょっとダブっぽい要素も入ったレゲエ・ナンバー。
Down In The Holeはストーンズには珍しいタイプのストレートなブルースで、ここもチャーリーの重めのドラムとリズムのタメが肝。
いかにもストーンズらしいロックンロールは、Summer RomanceLet Me GoWhere The Boys GoShe's So Cold と4曲が収められている。いずれもストーンズのロック・ナンバーとしては物足りなさを感じるかも知れないけれど、オーティスやウィルソン・ピケットの演っていたようなR&Bの80年代ストーンズ的解釈と考えればすっきりする。音はパンク以降の時代に適応してミック・テイラーの時代に比べるとソリッドでシャープというか、ぎゅっと引き締まってエッジが立っているけれど、根本にあるものはR&Bのスタイルだ。
ストーンズ独特のルーズさを好む人からはこのキリッと立った音が支持されないところなのかも知れないけれど、ロートル扱い、おっさんバンド扱いされはじめたことに対して「俺たちはまだまだ現役だ」と宣言するような潔さを感じたりもする。当時ストーンズの面々は40前後、あの当時40過ぎてもバリバリロックを演っていた奴なんて誰もいなかったのだから。
そしてそれらの曲の合間を縫うようにレコードでのA面・B面の締めくくりに配置されているのが、カントリータッチのIndian Girlと、キースが渋くかみしめるように歌う、ちょっとトム・ウェイツみたいな世界観のジャジーなバラードAll About Youというスロウ・ナンバー。どっちも大袈裟に盛り上げるんではなく、淡々とした中にドラマがあって思わずキュンとしてほろっときてしまうようないい曲ですよね。

いやぁ、やっぱりいいアルバムですよ、これは。
どの曲も粒ぞろいで、聴くたびに発見があるようで飽きないのだ。
ファンクもソウルもレゲエもブルースもカントリーもバラードも、という全体のバランス感がいい。
そして、貪欲に新しいものを取り入れていこうとするフレッシュさというか明るさもいい。
世間的に余り評価が高くないのは、おそらくだけど、古くから「不良の代表」としてストーンズを聴いてきた世代の人たちにとっては、この整ったバランス感であったり、明るさであったりが、どうも受け入れにくい部分があったのだろうけれど、『Black&Blue』辺りから顕著になったストーンズのファンク/ブラックミュージックの取り込みを確立させたひとつのピークだと思う。
僕にとってはこのアルバムは、80年代当時に流行っていたパンク以降のニュー・ウェーヴ的なかっこよさやハードロック的な華麗さや演奏力云々とはまるで違う価値観、スカスカな音だからこそのかっこよさ、「リズムと間」の奥深さを知るきっかけになったという意味でも重要なアルバムでもあります。




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コメント

[C2162]

LA MOSCAさん、毎度です。
同じもの何度も取り上げますよー。ネタ切れ気味だしね(笑)。
書いてみて改めて、このアルバムの存在の大きさを実感しています。
リズムと間、黒人音楽への入り口。
これをこき下ろしたのは古い評論家筋ばっかりで、同世代からの支持はかなり高い、と思っています。

ストーンズ、次の来日こそは必ず参戦しますです。

[C2161] 貴方も(笑)

何度も取り上げますねぇ、このアルバム。
俺も何度も書いてます(笑)
好きだから。
最後の3行は驚くほど同感。
そうしてストーンズにハマっていった同世代の人って沢山居るのかもね。
ライヴは大丈夫だと思いますよ、きっとまた来ます。

[C2160]

Okadaさん、毎度です。
東京まではるばる出向いただけのことはあったようですね。
悔しいので僕も、来月オーストラリアまで出向いて観てきます。いや、ウソです(笑)。

このアルバムはこのスカスカさがいいんですよね。
スカスカさの向こうにあるグルーヴに気づいてからは、一気に世界が広がったというか、ちょっと大人になったような気がしました。19歳くらいの頃ね。

Let it Bleedは、正統派のOkadaさんらしい選択だと思います。

[C2159]

ezeeさん、毎度です。
ストーンズ、めっちゃよかったみたいですね。正直うらやましいっす。
以前にezeeさんがこのアルバムのことを書いていたのを読んだ覚えがあります。
これ、評価低いとされていますが、同世代の間ではかなり人気高いですよね。
本文にもちょっと書いたけど、ブライアン時代やテイラー時代がリアルタイムだった世代と我々の世代は、ちょっとストーンズ観が違うのだろうな、という気がしてます。
ハードロックやヘヴィーメタルがロックのデビューだった僕らの世代にとっては、ストーンズはブラックミュージックの気持ちよさを教えてくれた兄貴たち、って感じが強くあります。

[C2158]

確かに数あるアルバムの中では地味な存在かもしれませんが
ぼくも大好きな一枚です。
テイラー期では味わえない、聴きやすさがありますね。
このスカスカな音は定期的に聴きたくなってしまいます。
ぼくの一番は月並みですが「Let It Bleed」かなぁ。

[C2157]

あんまり人気無いですけど
自分の中では最高傑作ですね
いろいろ気分によって好きな音楽は日々変わりますが
コレは揺るぎない! 全然、飽きんですわ

[C2156]

GAOHEWGⅡさん、こんばんは。
うーん、一番好きかと改めて問われると、ファーストもベガーズもレットイットブリードもスティッキーもエグザイルもサムガールズもダーティーワークも、ってなるのですが(笑)。
リズムのかっこよさと、聴きやすさですかね、聴きやすさがストーンズの本質ではないようにも思いますが、意外とストーンズが重視しているポイントのような気もしたり。

アフターマスは、アルバム単位ではあまり聴きこんだ記憶がなく・・・ちゃんと聴いてみます。

[C2155]

golden blue様
こんばんは

このアルバムが一番好きなのですね。
正直に言いますと、
聴いた回数が全体の中では
かなり少ない方に入るアルバムなので、
この記事を読みながら
もう一度聞いてみようと思います。
(ダンスとタイトル・トラックは覚えていますが)

リズム主体のグループがこれだけ日本で
支持されるって、やはり凄いですね。

ちなみに、自分は『Aftermath』が一番好きです。

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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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