オープニング、平和への願いが込められたPipes Of Peaceと、ラストの大袈裟に盛り上げていくバラードThrough Our Love はいかにもポールらしい優等生的ではあるけれど、やはりグッと心に染み入るものがあります。 ボードヴィルっぽいおどけた感じのSweetest Little Showや、ロカビリーっぽさの残るAverage Person、そして、スローに始まった後にストリングスが入って急展開するKeep Under Coverもビートルズ時代からポールが得意としてきた曲調で、親しみやすさがポールらしい。 一方、『タッグ・オブ・ウォー』の表題曲をアフリカ的なリズムを取り入れてリメイクしたTug Of Peaceには、新しい時代の音を取り入れて自らのメッセージとしていく意思を感じることができるし、歌なしのスタンリー・クラークやスティーヴ・ガッドとのセッション曲、Hey Heyにも、ただのポップ・スターに留まらないミュージシャン・シップがあふれている。 当時人気絶頂だったマイケル・ジャクソンとの共演曲、Say Say SayとThe Manがこのアルバムの一番の目玉ではあるけれど、前作でのスティーヴィーとのEbony and Ivoryに比べればどうってことのないポップソング。ただそのなんでもなくただポップなところこそにポール・マッカートニーのすごさがあるのだと思う。 The Other Meは大好きな一曲。デモ・テープみたいにチープでスカスカなアレンジが物足りない感じがしていたのだけれど、どことなく自信なさげで情けない感じが、スーパースターではないありふれた一人の男としてのポールに触れるような気がする。 そして、このアルバムで一番大好きなのは、So Bad。 ファルセットで歌われるかわいらしくてキュートなラブ・ソング。ポールらしくなくシンプルにR&Bっぽくって、ほわっとあったかくてキュンと切なくなる感じが好き。
Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。 “日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。 自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。
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