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♪PIPES OF PEACE -My Vintage(38)-

Pipes of Peace
Pipes of Peace / Paul McCartney

Released:1983

ポール・マッカートニーの来日でお祭り騒ぎだった11月ももうお終い。
実はポール・マッカートニーにはあまり深い思い入れはないのです。
どこか能天気なお坊っちゃん的だったり、きれいにまとまりすぎた楽曲の印象を含めてやや鼻につく優等生的なところがどうもロック的ではないというかね、、、だからポールの来日にはあんまりときめいてはいなかったのです。「ふーん、ポール来るんだー。」って感じだったかな。
僕のCD棚にあるポール・マッカートニーのアルバムは、この『パイプス・オブ・ピース』と『タッグ・オブ・ウォー』、『公式海賊版』と『オール・ザ・ベスト』の4枚。それほど思い入れの強くないアーティストのアルバムが4枚も5枚もあるということ自体がポール・マッカートニーのすごいところではあるけれど、ポールの長いキャリアからすればまるで聴いているうちに入らない。
で、なんだか世間は盛り上がっているなぁ、なんて思いながらこれらのアルバムを引っ張り出して聴きなおしてみたら、いやー、やっぱりいいんですよねぇ。
考えてみれば、仕事場から歩いて行けるくらいの距離の所に、時代を変え、世界中の人を長い時代にわたって夢中にしてきたスーパースターが来ていたというのはものすごいこと。うーむ、これは大変なものを見逃してしまったのかもしれないな。まぁ今更どうしようもないことだけれど。

そんなわけで『パイプス・オブ・ピース』。
名盤度で言えば明らか『タッグ・オブ・ウォー』なんだろうけれど僕はこっちの方が好きだな。
そもそもこの『タッグ・オブ・ウォー』と『パイプス・オブ・ピース』は同時期に録音されたもので、ポールやプロデューサーのジョージ・マーティンは二枚組を計画していたが実現できず、『タッグ・オブ・ウォー』の収録から外れた曲を中心にして編まれたのがこのアルバム。世間的な評価としてはこちらの方が低いようだけれど、小じんまりと粒ぞろいの曲が揃ったいいアルバムだと思う。肩の力の抜けた感じ、それでいて全体的にバランスよく配置されたまとまりのよさがいい。

オープニング、平和への願いが込められたPipes Of Peaceと、ラストの大袈裟に盛り上げていくバラードThrough Our Love はいかにもポールらしい優等生的ではあるけれど、やはりグッと心に染み入るものがあります。
ボードヴィルっぽいおどけた感じのSweetest Little Showや、ロカビリーっぽさの残るAverage Person、そして、スローに始まった後にストリングスが入って急展開するKeep Under Coverもビートルズ時代からポールが得意としてきた曲調で、親しみやすさがポールらしい。
一方、『タッグ・オブ・ウォー』の表題曲をアフリカ的なリズムを取り入れてリメイクしたTug Of Peaceには、新しい時代の音を取り入れて自らのメッセージとしていく意思を感じることができるし、歌なしのスタンリー・クラークやスティーヴ・ガッドとのセッション曲、Hey Heyにも、ただのポップ・スターに留まらないミュージシャン・シップがあふれている。
当時人気絶頂だったマイケル・ジャクソンとの共演曲、Say Say SayThe Manがこのアルバムの一番の目玉ではあるけれど、前作でのスティーヴィーとのEbony and Ivoryに比べればどうってことのないポップソング。ただそのなんでもなくただポップなところこそにポール・マッカートニーのすごさがあるのだと思う。
The Other Meは大好きな一曲。デモ・テープみたいにチープでスカスカなアレンジが物足りない感じがしていたのだけれど、どことなく自信なさげで情けない感じが、スーパースターではないありふれた一人の男としてのポールに触れるような気がする。
そして、このアルバムで一番大好きなのは、So Bad
ファルセットで歌われるかわいらしくてキュートなラブ・ソング。ポールらしくなくシンプルにR&Bっぽくって、ほわっとあったかくてキュンと切なくなる感じが好き。

ポール・マッカートニーの作品としては可もなく不可もないどうということのないレベルの作品なのかもしれない。
けど、僕はこのなんでもなさが好きだな。
己の主張を声高に宣言することがそもそもカウンター・カルチャーとして生まれたロックの持つ“らしさ”だとしたら、ポールのやり方はそうではない。奇をてらわず叫ばずわめかず、どんな人にも受け入れられるような耳あたりのよいなんでもない音楽を信念を持って作り続けている。
なんでもないということは、実はとても難しいことだ。
そして世界は、そんなたくさんのなんでもないことが寄せ集まって少しずつ変わっていくのかもしれない。





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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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