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♪TOO RYE AY -My Vintage(97)-

Too-Rye-Ay
Too-Rye-Ay / Dexys Midnight Runners

Released:1982

“Ladies and Gentleman,I give you the Celtic Soul Brothers...”
そんなアナウンスで始まるデキシーズ・ミッドナイト・ランナーズの1982年のアルバム。
バンドのテーマ曲のようなThe Celtic Soul Brothers で幕開け、ホーンセクションがソウルフルなLet's Make This Preciousへと軽快に続いていくご機嫌なオープニング。
それぞれの曲が切れ目なく続いてひとつの物語を織りなしていくような感じは、映画のサウンドトラックというか、ミュージカルやオペラみたい。
ケヴィン・ローランドの独特の声質とやや芝居がかった歌い方は好き嫌いのハッキリしたタイプ だけど、聴けば聴くほどに味わいの出る魅力的な声だと思う。どこかいい加減でありながらも意志を持って演じているような歌い方。そう言えばこの人の怪しげな風貌はインチキ芸術家を思わせるものがある。
3曲目、All In All (This One Last Wild Waltz)でぐっとペースを落としたあと、続くJackie Wilson Said (I'm In Heaven When You Smile)がアルバムのひとつめのハイライト。ジャッキー・ウィルソンをはじめとするソウルへの賛歌を歌ったヴァン・モリソンの曲を敬意を込めてカバーするこの選曲に、このバンドのケルト音楽とソウルへの姿勢がはっきりと表れている。
そしてA面のラストだったOldがまたいいんだ。
お爺さんのそのまたお爺さんのそのまたお爺さんの時代からずっと変わらない、貧しくもつつましい暮らしを憐れみつつも愛しむような視線、穏やかに枯れた歌。ほのぼのとのどかでじんわりと哀愁を感じさせるメロディーにほろっとする。

60年代のソウル・ミュージックをベースに、フィドルを中心にケルト音楽で多用される楽器をミックスさせた彼らの音楽、ホーンセクションの威勢のいい音や、フィドルやバンジョーやマンドリンやアコーディオンのどこか懐かしさを感じるような温もりのある音は、イギリスの田舎のお祭りを見物しているみたいな楽しさだ。
しかし、彼らの音楽は決してただのリラックス系田舎音楽ではないのだ。
ケヴィン・ローランドはイングランド中西部のウルヴァーハンプトンの出身で両親は共にアイルランド人。鉱工業が盛んだった中西部の各都市はイギリス経済の長引く不況の影響で沈滞していた。その真っただ中の決して裕福ではない育ちの中でお決まりのように不良少年として育ち、やがてロキシー・ミュージックに影響されてロックバンドを結成。1977年にはThe KILLJOYSという、ピストルズ風のパンク・バンドでデビュー、その後結成したデキシーズのファースト・アルバムでは、ホーン・セクションを大胆に取り込んだパンク風のソウル・ミュージックをプレイしているわけで、その音楽姿勢は実はかなり攻撃的なのだ。
ジャムのポール・ウェラーがどんどんとソウルに接近していったように、イギリスの貧しい労働者階級の中にはソウル・ミュージックへのシンパシーが潜在的にあった。
彼らにとって、アメリカの黒人の演奏するブルースやR&Bはとても親しいものだったに違いない。虐げられた歴史の中で解放への叫びや、貧困や逆境の苦しみや悲しみや、そんな暮らしの中での小さな喜びを歌ったり、憂さを晴らすための陽気なステップを踏ませる音楽としての黒人音楽と、小さな頃から親しんできたケルト民謡の共通項。それらの融合は、彼らの中でごく自然にあったのではないだろうか。
いわば貧しい階級に生まれたからこその存在証明をソウルとケルト音楽に託している、それが彼らの音だ。

そんなケヴィンのパンク魂が炸裂しているのがB面の1曲目、Plan B

You've always been searching for something
But everything seems so so-so
Tightly close your eyes, Hold out your hand
We'll make a stand
Forget their plans,and their demands
Plan B
They're testing you - but don't worry

 きみはいつも何かを探し続けてきたけれど
 結局見つけたものはそこそこのもんでしかなくって
 固く目を閉じ きつく拳を握り締めるしかなかった
 けど、立ち上がろう
 奴らの計画や奴らの要求なんて無視して
 別の計画を立てるんだ
 奴らはきみを試したりする
 でもそんなの関係ねぇ!

なんていうかね、痛快!
PlanBからそのままメドレー的につながるI'll Show YouLiars A To Eと圧巻のパワフルでソウルフルな演奏がまたとってもかっこいい!
そして7分にも及ぶUntil I Believe In My Soul

I'll need tonight to sit and think about this
Think what to do
I'll take some strength to banish hollow sorrow
Hollow sorrow's nothing new
Just enough strength to last until tomorrow
Till I believe in my soul, till I believe in my soul

 ちょっと落ち着いて真剣に考えてみたいんだ
 いったい何をすべきなのか
 落ち込みや痛みが消えてしまうような強さを手に入れたい
 落ち込みも痛みもなんてことはないありふれたこと
 明日まで続けられる力があればいい
 自分の魂を自分で信じることができるまで

この曲に込められた懺悔のような誓いのような、ギリギリの場所まで魂を持っていったソウルフルさったら。
インチキ芸術家がここ一番で心情を思いっきり吐露するみたいななんともいえないインチキリアルさにグイグイと持っていかれてしまいます。
最も卑しいものこそ最も聖なるものであるというパラドックスみたいな強烈なサムシングがこの人の歌にはあります。

そしてお祭りのフィナーレ、Come On Eileen で大団円。
良質なお芝居を観たあとみたいにとても満足感が残ります。

ワンマンでいかにも我がままそうなケヴィン・ローランドのこと、このアルバムがヒットしたにも関わらずバンドはその後空中分解。この人の性格の悪さや、一度成功したスタイルを簡単に棄てる思い切りのよさと偏屈なまでのチャレンジ精神はジョン・ライドン張りで、3枚目ではキリッとしたイタリアン・スーツに身を包んで端正なソウルを演ったものの見事にヒットせず、その後、自身のソロ・アルバムもまるでシーンから無視され、とうにくたばったかと思っていたら、一昨年にDexysとして実に27年ぶりの新しいアルバムをリリース。
これがなかなかいい感じで、この30年がまるでなかったみたいなインチキ芸術家っぽさは変わらずのいかがわしい爺さんになって・・・そうでなくちゃね。反省なんてしてたまるもんかい!いかれたまんまジジイになってくたばるのが一番!なんて妙な元気をいただきました。
そんな後日談も込みで、このアルバムに刻まれたストイックなまでのやんちゃさが最高なのです。






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[C2397] Re: 天才ケヴィン・ローランド

deacon blueさん、こんばんは。
確かにこの方は天才だと思います。天才が故の狂気みたいなものをはらんでいますね。
ファーストの頃もかっこいいんですが、後のソロ・アルバムも結構好きです。
女装した気持ち悪いジャケでカラオケ大会みたいなカヴァーを披露した"MyBeauty"も、しょぼいんだけどなぜかグッときます。
  • 2014-11-08 17:27
  • goldenblue
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[C2395]

yuccalinaさん、こんにちは。
僕もこれはリアルタイムでインパクトがあったバンドです。夜中に実家の居間で、ぼろぼろの乞食ルックでダンスする PVをベストヒットUSAで見ていました。
当時から古くさい音だっただけに、今聴いてもまるで古びていないですよー。
  • 2014-11-06 08:33
  • goldenblue
  • URL
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[C2394]

こんばんは。
これ、リアルタイムで愛聴してましたよ。
アメリカでもヒットしたんですよね。
ツバキハウスのロンドンナイト(by 大貫憲章)でも、よくかかってますたわ。
でも、当時はケルティックって何や?と、全然分かってませんでした。久し振りに聴いてみようと思います。
  • 2014-11-05 21:05
  • yuccalina
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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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