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♪UH-HUH -My Vintage(74)-

Uh Huh
Uh Huh / John Couger Mellencamp

Released:1983

権力を背景に力づくでモノを言う奴が大っ嫌いだ。
そういうモノ言いには虫酸が走る。
もちろん仕事には常に変革と自己研鑽が必要で、傷をなめあうような甘っちょろい集団は結果的には淘汰されるし、時と場合によってはそれを力づくでも動かす必要があることは確かだろう。
けどその効果は結局のところはカンフル剤的でしかなく、それをやり続けることは長期的にはよい結果をもたらさない、ということを知るべきだ。
脅しで人の本質は変えられない。
いくらビビらされたって、本気のやる気は湧いてこないのだ。


♪奴等はいつもおまえを危うい場所に置いておきたがる
  そうやって窮地に追い込んでほくそえんでいやがる
  そんなふうに人を追い込むのが抜けめがないやり方だと思っているんだな
  俺に言わせれば薄汚い破廉恥そのものだぜ

  俺は権力と戦う
  なぜって権力がいつも勝ちやがるから
  ガキの頃からそうしてきたんだ
  でんぐり返りで登場だ
  俺は権力と戦う
  なぜって権力がいつも勝ちやがるから
        (Authority Song

ジョン・クーガー・メレンキャンプの1983年のアルバム"Uh-Huh!"は、初めて聴いた高校生の頃からずっと大好きな一枚。
当時、ブルース・スプリングスティーンを筆頭に、ヒューイ・ルイス&ザ・ニューズやブライアン・アダムスといったシンプルなアメリアン・ロックがかなりヒット・チャートに上ったけれど、そんな中でもジョン・クーガーが一番好きだったのは、何ていうんだろうか、彼の持つ荒っぽくて喧嘩っぱやそうなファイティング・ポーズを意気に感じたからだ。
チープで粗野な演奏の中に、反骨心や負けてられるか感があふれまくっているのがたまらなくかっこいい。
アーシーでワイルドなギターのカッティングで始まる1曲目のCrumblin' Downは、こんな風に歌い始められる。

♪どうしょうもない奴らがいる
  信用なんてできっこないし、到底好きにはなれない
  俺だって善いことをしているわけではないけど、罪になることはしちゃいない
  奴らの身代わりになることくらいはどうてっことはない
  そんなことは身に沁みついたもういつものこと
  けど、俺が罪人だったことはたったの一度もないってことよ

苦みの効いた、しかしやんちゃさを失わないボーカル、ザラザラでゴツゴツとした埃っぽい感触のギター、そして意外とファンキーなリズム隊。
ジョン・クーガーといえば大ヒットした"Hurts So Good"や"Jack and Dianne"、この後にヒットする"Small Town"みたいに、フォーキ―でミディアムなリズムとちょっとセンチメンタルで良くも悪くも田舎っぽい素朴さがパブリック・イメージになってしまっていて、まぁそれはそれで好きなんだけれど、このアルバムにはそういう雰囲気の曲はシングルヒットのPink Housesくらいで、全体としてはもっとチープでワイルドでやんちゃくれたロックンロールが満載なのだ。
Crumblin' DownAuthority Songはもちろんのこと、ストーンズ張りの荒々しさといかがわしさを持ったPlay Guitar Serious Business、尖がったファンキーさがかっこいいWarmer Place To SleepLovin' Mother Fo Ya
いやぁー、これ、ほんと文句なしにかっこいい。
大ヒットを出したら、その次は当然同じ路線でその次のヒットを狙うのが業界としては当然のこと。
にもかかわらず、こんなにもチープなアルバムをリリースしてしまうことそのものに、この人の「長いものには巻かれない」反逆精神が垣間見えるのだ。
おそらくはインディアナの田舎町からニューヨークに出てきた頃に、よっぽど嫌な目に会ったんだろうな。
目先の儲けに群がる奴等の反対を持ち前の反骨精神で振り切って、自分の信念を曲げない。
ここで日和ったら一生日和り続けてしまう、一生嘘をつき続けてしまう、ただのポップスターに成り下がってしまう。力を持っている奴らは、持ち上げるだけ持ち上げて搾り取るだけ搾り取ったらあとはお払い箱にしてしまうんだ、ということがよくわかっていたのだろう、と思う。

Crumblin' Downは、その後こんな風に続いてゆく。

♪俺がどうするかなんていちいち覗きこもうとするなよ
  誰だって問題は抱えている
  そんなことニュースにもなりやしない
  いつもながらのよくあるトラブルさ
  問題をややこしくしちゃいけないぜ
  わかりきっていることだからな

奴らはこれからも権力を背景にして無理を迫ってくるのだろう。
でも、ビビる必要はない。大切なものを捻じ曲げられてまでしがみつくことはないはずだ。
要らなくなればいつでもお払い箱にすればいいや、ってなくらいの開き直りが必要だ。
奴らのごり押しにではなく、自らの使命に誠実にやる。
結局はそのことが誰にとっても一番いい結果をもたらすはずなのだ。

活きのいいロックンロール・アルバムは、落ち着いたスロウ・ナンバー、Golden Gatesで締めくくられる。

♪簡単に開く天国の門はない
  真珠で彩られた舗道なんてない
  ハープを持って歌いながらやってくる天使なんていない
  いずれにしてもこの世界は決して甘くはない
  不確かな未来しか見えない世の中だ
  偉い方々のやることなんて誰が知るかよ
  でっかい賭け事にはまり続けている奴ら
  俺やあんたには何のおこぼれもありはしない
  俺たちにとってあてになる約束っていうのは
  心から出た誠実な約束事だけさ

心から出た約束、信じられる言葉を頼りに、もうしばらくは折れずに踏んばってみたい。
ジョン・クーガーなんぞを聴きながらね。


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コメント

[C2285]

ezeeさん、毎度です。
ジョン・クーガー、頑固一徹なイメージがありがすが、意外と常に変化、成長を続けている人ですね。その時々の自分に忠実に、って感じがロックです。

  • 2014-06-28 12:48
  • goldenblue
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[C2284]

ジョン・クーガー! (最初メレンキャンプなしでしたね)
最近めっきり聴いてないですが、やっぱええ男ですな
ベストヒットUSAを思い出しますヨ
近所のうどん屋の友達も大絶賛でした!
  • 2014-06-27 00:26
  • ezee
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[C2283]

deaconblueさん、こんばんは。
スケアクロウ、僕も持ってましたが最近とんと聴いていないなぁ。いっぺん引っ張り出してみよう。

邦題はね、苦肉でしょうね。
今の時代なら無理にタイトルつけずに「Uh-Huh」のままいったんじゃないでしょうか。
  • 2014-06-26 00:32
  • goldenblue
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[C2282] 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

[C2281]

名盤さん、こんばんは。
来日公演行ったんですね。うらやましい。
そもそもでかいホールよりも小さなライヴハウスが似合う人ですよね。
PVもダサいの寸前のところでこの人だからこそ出せるかっこよさを保っていると思います。
近作は聴いていないですが、この頃の粗くて怖いものなしの感じが一番かと。
  • 2014-06-23 22:54
  • goldenblue
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[C2280]

GAOHEWGⅡさん、こんばんは。
実はこのアルバムのspecial thanks欄にローリングストーンズの名前が出てきているのです。
このアルバム、前後の作品からは際立ってアーシーでスワンピィでロックンロール度満点なので大好きなのですよ。

  • 2014-06-23 22:49
  • goldenblue
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[C2279]

「Crumblin' Down」大好きでした。もちろん今聴いてもカッコイイ!
アコギの使い方が上手いと思います、この人。
PVもかっこいい。
当時来日公演も行きましたが、全米NO.1アーティストとは思えない、シンプルなステージでした。
この人、いい意味でずっと土臭いですよね。
ファンです。

[C2278]

golden blue様 こんばんは

ジョン・クーガー・メレンキャンプは、何枚か持っているのですが、本作は初めて聴きました。

ストーンズに例えられていたのが新鮮でしたが、なるほど泥臭くてスワンプ期のストーンズにイメージが重なりました。

月曜日に聴くには威勢がよくていいですね。

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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