Uh Huh / John Couger Mellencamp Released:1983
権力を背景に力づくでモノを言う奴が大っ嫌いだ。
そういうモノ言いには虫酸が走る。
もちろん仕事には常に変革と自己研鑽が必要で、傷をなめあうような甘っちょろい集団は結果的には淘汰されるし、時と場合によってはそれを力づくでも動かす必要があることは確かだろう。
けどその効果は結局のところはカンフル剤的でしかなく、それをやり続けることは長期的にはよい結果をもたらさない、ということを知るべきだ。
脅しで人の本質は変えられない。
いくらビビらされたって、本気のやる気は湧いてこないのだ。
♪奴等はいつもおまえを危うい場所に置いておきたがる
そうやって窮地に追い込んでほくそえんでいやがる
そんなふうに人を追い込むのが抜けめがないやり方だと思っているんだな
俺に言わせれば薄汚い破廉恥そのものだぜ
俺は権力と戦う
なぜって権力がいつも勝ちやがるから
ガキの頃からそうしてきたんだ
でんぐり返りで登場だ
俺は権力と戦う
なぜって権力がいつも勝ちやがるから
(
Authority Song )
ジョン・クーガー・メレンキャンプの1983年のアルバム"Uh-Huh!"は、初めて聴いた高校生の頃からずっと大好きな一枚。
当時、ブルース・スプリングスティーンを筆頭に、ヒューイ・ルイス&ザ・ニューズやブライアン・アダムスといったシンプルなアメリアン・ロックがかなりヒット・チャートに上ったけれど、そんな中でもジョン・クーガーが一番好きだったのは、何ていうんだろうか、彼の持つ荒っぽくて喧嘩っぱやそうなファイティング・ポーズを意気に感じたからだ。
チープで粗野な演奏の中に、反骨心や負けてられるか感があふれまくっているのがたまらなくかっこいい。
アーシーでワイルドなギターのカッティングで始まる1曲目の
Crumblin' Down は、こんな風に歌い始められる。
♪どうしょうもない奴らがいる
信用なんてできっこないし、到底好きにはなれない
俺だって善いことをしているわけではないけど、罪になることはしちゃいない
奴らの身代わりになることくらいはどうてっことはない
そんなことは身に沁みついたもういつものこと
けど、俺が罪人だったことはたったの一度もないってことよ
苦みの効いた、しかしやんちゃさを失わないボーカル、ザラザラでゴツゴツとした埃っぽい感触のギター、そして意外とファンキーなリズム隊。
ジョン・クーガーといえば大ヒットした"
Hurts So Good "や"
Jack and Dianne "、この後にヒットする"
Small Town "みたいに、フォーキ―でミディアムなリズムとちょっとセンチメンタルで良くも悪くも田舎っぽい素朴さがパブリック・イメージになってしまっていて、まぁそれはそれで好きなんだけれど、このアルバムにはそういう雰囲気の曲はシングルヒットの
Pink Houses くらいで、全体としてはもっとチープでワイルドでやんちゃくれたロックンロールが満載なのだ。
Crumblin' Down や
Authority Song はもちろんのこと、ストーンズ張りの荒々しさといかがわしさを持った
Play Guitar や
Serious Business 、尖がったファンキーさがかっこいい
Warmer Place To Sleep や
Lovin' Mother Fo Ya 。
いやぁー、これ、ほんと文句なしにかっこいい。
大ヒットを出したら、その次は当然同じ路線でその次のヒットを狙うのが業界としては当然のこと。
にもかかわらず、こんなにもチープなアルバムをリリースしてしまうことそのものに、この人の「長いものには巻かれない」反逆精神が垣間見えるのだ。
おそらくはインディアナの田舎町からニューヨークに出てきた頃に、よっぽど嫌な目に会ったんだろうな。
目先の儲けに群がる奴等の反対を持ち前の反骨精神で振り切って、自分の信念を曲げない。
ここで日和ったら一生日和り続けてしまう、一生嘘をつき続けてしまう、ただのポップスターに成り下がってしまう。力を持っている奴らは、持ち上げるだけ持ち上げて搾り取るだけ搾り取ったらあとはお払い箱にしてしまうんだ、ということがよくわかっていたのだろう、と思う。
Crumblin' Down は、その後こんな風に続いてゆく。
♪俺がどうするかなんていちいち覗きこもうとするなよ
誰だって問題は抱えている
そんなことニュースにもなりやしない
いつもながらのよくあるトラブルさ
問題をややこしくしちゃいけないぜ
わかりきっていることだからな
奴らはこれからも権力を背景にして無理を迫ってくるのだろう。
でも、ビビる必要はない。大切なものを捻じ曲げられてまでしがみつくことはないはずだ。
要らなくなればいつでもお払い箱にすればいいや、ってなくらいの開き直りが必要だ。
奴らのごり押しにではなく、自らの使命に誠実にやる。
結局はそのことが誰にとっても一番いい結果をもたらすはずなのだ。
活きのいいロックンロール・アルバムは、落ち着いたスロウ・ナンバー、
Golden Gates で締めくくられる。
♪簡単に開く天国の門はない
真珠で彩られた舗道なんてない
ハープを持って歌いながらやってくる天使なんていない
いずれにしてもこの世界は決して甘くはない
不確かな未来しか見えない世の中だ
偉い方々のやることなんて誰が知るかよ
でっかい賭け事にはまり続けている奴ら
俺やあんたには何のおこぼれもありはしない
俺たちにとってあてになる約束っていうのは
心から出た誠実な約束事だけさ
心から出た約束、信じられる言葉を頼りに、もうしばらくは折れずに踏んばってみたい。
ジョン・クーガーなんぞを聴きながらね。
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ジョン・クーガー、頑固一徹なイメージがありがすが、意外と常に変化、成長を続けている人ですね。その時々の自分に忠実に、って感じがロックです。