YELLOW BLOOD / A.R.B Released:1984
いつからだろう
雨が降り出し 風が体を突き抜けていた
歩き疲れてずぶ濡れになり
俺はすべてをなくしてたんだ
(
ONE WAY TRIP )
文字にしてみたら、まるで中学生が書いたようなシンプルな歌詞だな。
でも、これがとてつもなくガツンときた17才の高校生。1984年、一番どん底な時期だった、ってことは前にもどこかで書いたっけ。
今聴いてもしびれる、名曲「魂こがして」と肩を並べるかっこよさだ。
こんな直球一直線の歌を気恥ずかしさなしに本気の言葉として響かせることができるのが、石橋凌の、そしてARBの真骨頂だと思うのです。
この曲でベースを弾いているのは、ストラングラーズのジャン・ジャック・バーネル。
一郎が抜けサンジがヤクがらみのヤバい事件で首になって ARBが最悪の危機を迎えていたときに、世話になったキースとの仁義を果たして参加したっていうから、男っぽいよね。
で、このベースがめちゃくちゃかっこいい。疾走感。負けてられっか感、あおりまくり。
もう一曲ジャンが参加しているのが、ラストの
闘い抜くんだ! (FIGHT IT OUT!) 。
ときどきラップみたいになりながら青筋立てて唸る石橋凌、ファンカブルな細かく尖ったカッティングでぐいぐい押していく斉藤光浩のギター、シンプルなキースのドラム、そしてうねりまくるベース。
少数派なのかもしれないけれど、僕はARBの第三期が大好き。
田中一郎に代わってBowWowの斉藤光浩がARBに加入すると聴いたときは???だったけど、シャープで硬質な光浩のギターはよりARBのソリッドさとストイックさを際立たせたし、岡部滋のベースはぶっとくってファンキーで、よくもわるくもモノクロームだったARBの音にぐんとカラフルさを持ち込んだと思う。
たった3人の演奏なのにものすごく立体的なんだよね。
光浩のギターはよく切れるカンナ、キースがリズムよく杭を打って、滋のベースは電動ドリル、で大工の頭領が威勢良く吠える。第二期までが木造のあばら屋なら第三期は鉄筋だ。第四期になると左官屋やインテリア関係がでしゃばってきて妙に大仰になっちゃうんだけど、まぁそれはともかくこの第三期メンバーの音は僕の思うロックバンドの理想形のひとつなのだ。
アルバムはいきなり怒涛のテンションを持った
TOKYO PRISON で始まる。この時代特有のゲートエコーを効かせたキースのドラムがビシバシ響く中で、ギターとベースがうねりながら緊迫感を高めていく。 次いでシャープなカッティングで煽ってい
Let’s ”REVOLUTION” 。〇〇〇ション、という単語で韻を踏みながらメッセージを織り込んでいく石橋凌のシャウト。
3曲目はぐっとソウルフルにグルーヴィーな
彼女はチャーミング 、このカラフルかつチャーミングなサウンドは岡部滋加入の賜物。4曲目
HIT MAN 、5曲目
ダン・ダン・ダン とARBらしからぬポップな展開が続くけれど、歌われている中身はARBそのもの。底辺から上の方へ一発逆転を狙って牙を研いでいるようなHIT MANや、今虐げられている人へのエールのようなダン・ダン・ダン、ちょっとへばった心には効くね。
B面はまたうって変わって、日本人としてのハードなメッセージ・ソング、
YELLOW BLOOD 、そして言わずもがなの
ONE WAY TRIP 、ARBの大きなテーマである労働者に光をあてた
HOLIDAY 。
ARB流の憂歌、
飲まずにいられない で憂さを吐き出して、ラストの
FIGHT IT OUT へとなだれ込む。
Boys & Girlsもユニオン・ロッカーももちろん大好きなんだけど、第二期での行き場のない不良少年少女たちへの裏通りからのメッセージよりも、ドカンとメインストリートに出て勝負を挑んだようなこの時期のサウンドが、大人になった今、より心を奮い立たせてくれるのです。
いろいろと悔しくて歯をくいしばることも思い通りにならなくて歯ぎしりすることもぶん殴ってやりたい気持ちをぐっと堪えたりすることも下手すりゃ17歳の頃以上にたくさんある、ままにならないことだらけの47才の夏には、17才の頃と同じようにこんなのを聴きながらなんとか自分を鼓吹していく必要があるわけで。
♪死ぬまで、闘い抜くぜ、っていう石橋凌の確信に満ちたシャウトとタフで筋の通ったサウンドは、ちょっとした栄養ドリンクみたいなもの。バテバテのアタマとココロをシャキッとさせて、とりあえずは今日一日をしのぐ魂を注入。
何にしろへこたれちゃ終わりだよなぁ。
僕は僕のフィールドで、タフに、筋を通しながら闘っていくことにしよう。
スポンサーサイト
ARBは燃えます。この暑さを乗りきるためにはこれくらいの熱さが必要。
一郎時代ももちろん好きですが、バンドとしてのグルーヴは光浩時代の方がかっこいいかな、と。