パティ・スミスの作品の中から一枚を選ぶのはとても難しい選択だ。 ファースト“Horses”、パティ・スミス・グループ名義の“Wave”までの70年代の4枚はいずれもキレキレだし、夫の死後にシーンに復帰した“Gone Again”は儚くも美しく力に満ちていているし、翌年の“Peace and Noise”のシャープで硬質なサウンドも、近作の“Trampin'”や“Banga”のある種の高みに達したような崇高さも言葉を失うくらいに素晴らしい。 そんな中で敢えて選んだのは80年代の唯一の作品、1987年の“Dream of Life”。 リアルタイムで初めて聴いたパティ・スミスということもあって個人的にも思い入れが深い。
8年ぶりの作品の一曲目が、このPeople Have The Power。 力強いドラムの連打で始まる力強いサウンド、凛として意志に満ちたパティの声。 「人々には力がある」 どこぞのアホな若造がこんなことを歌っても鼻で笑われてしまうのがオチだけれど、パティ・スミスが歌うとガツンと来る。 ほんとうに、人々の力が集まれば、世界は変わるのかもしれない。 そんな力が湧いてくる。 繰り返し繰り返し聴きたくなる。
そんな言葉通りに、このアルバムの作品群は、力と明るさに満ちている。 以前のギスギスと尖った鋭さは影を潜め、柔らかく穏やかでふくよかさすら感じられる。 そのことには賛否両論あるだろうけれど、僕は好き。 Going Underや Up There Down There、Where Duty Calls といった以前のスタイルに近い曲では、いかにも80年代的な音づくりがやや物足りない感じもあるのだけれど、Dream Of Lifeや Looking For You (I Was)といった曲では、ふっきれたような、開き直ったような、いや違うな、生きていく上での大切なものを見つけてそれ以外のものにこだわることがなくなったような、という感じかな、そんなポジティブなエネルギー、その明るさと力強さを感じることができる。そしてそのポジティブなエネルギーはもちろん、僕の心にしっかり届いてプラスのエネルギーに変換される。
Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。 “日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。 自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。
うーん、そう聞くと尚更行くべきだったか、と(笑)。
2003年のときもぎりぎりまで段取り考えていて、結局行けなかったんですよねー。
次の機会があるのならばぜひ!