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♪愛があるから大丈夫 -My Vintage(92)-

愛があるから大丈夫
愛があるから大丈夫 / 上々颱風

Released:1993

お祭りの季節、祭り太鼓や笛の音がどこからともなく響いてくると、ついついむずむずした気分になってしまうのはやっぱり日本人だからだろうか。
日本人に生まれたとはいえ僕らの世代はすでに元々あった日本的なものからは少し縁の切れた育ち方をしてきたから、例えば和食が世界文化遺産だとか、そういう見直しを外国人と同じような感覚で再評価しているような感じさえする。
そんな日本らしさを代表して、外国の方に一番日本らしい音楽を聴いてもらえる機会があるとすれば何をおすすめするだろうか?
僕なら真っ先に上々颱風、ですね。
バンジョーに三味線の弦を張った三弦を操る紅龍氏をリーダーに、庄内弁を操る白崎映美さんのコブシのころころ回るやや演歌的な歌唱と、中国歌曲のようなピンと張った歌声の西川郷子さんのツイン・ヴォーカルに、どんなリズムでもこなす鉄壁リズム隊。
レゲエ有り沖縄民謡有り、昭和歌謡、ソウル、ロック、かと思えばジャズ的なリズムの展開有り、インドネシアにアフリカ、サンバにルンバ、スカにカリプソ、ブルースにカントリー、と何でも有り。
いわゆる無国籍なごちゃ混ぜチャンプルー・ミュージック。
ワールド・ワイドなお祭りミュージック。

極東の端っこにある孤立した島であるこの国は、古来から世界中の文化の終着点だった。
大陸を渡って、或いは海から流れ着いた様々な文化は、この国でごちゃ混ぜにミックスされて熟成し、独特の文化を生み出してきた。今、日本の文化と呼ばれるもののほとんどは、古代に中国や朝鮮を通じて入ってきたものがベースになっている。その中国や朝鮮からのもののルーツを辿れば、インドだったりアラビアだったりモンゴルだったりで、それらをこの国の気候風土に合わせて伸ばしたり縮めたり丸めたり削ったりして変容させながら受け入れてきた。それだけではなく、あとから来る文化も同じように取り入れ日本的に変容させてきたのだ。16世紀のポルトガルやオランダ、19世紀のイギリスやフランス、ドイツ、そして戦後のアメリカ文化。元々あったものに新しいものをミックスさせて新しいものを作り出す、この国の文化はそうやってずっと培われてきた。
さまざまな文化の吹き溜まり的ミックス、或いはおいしいとこどり的ミックス。
上々颱風の音楽にあるワールド・ワイドなミクスチャー加減は、そういう意味でとても日本的だと思うのだ。 

このアルバムは上々颱風の4作目。
衝撃のファーストやライヴの定番レパートリーがずらっと並んだ3rdに比べるとややおとなしめではあるけれど、言い換えれば安定感があるというか熟成されたというか、そんな感じで落ちついて聴けるアルバム。
それぞれの曲が粒ぞろいでいいんです。

1曲目、銀の琴の糸のようには、このアルバムのカラーである落ちついた和やかな雰囲気を象徴する一曲。やわらかな風のように優しさを運んでくるメロディーとハーモニー、ストリングスがいい味を出しているけれど、リズムはかなり複雑な変拍子。
2曲目は郷子さんの中国歌曲的歌唱が素敵な上海我愛称。この方の声は張りがあって伸びやかで心洗われますね。美しさだけじゃなく、ちょっとおちゃめな感じも好き。
3曲目、映美姉さんの山形弁の語りも飛び出す演歌パロディ的な一曲、愛があるから大丈夫 。これは紅龍さんの三弦のリズムが効いてる。演歌的とはいっても、ピアノのソロではジャズっぽくなったり、リズムは裏だったり、一筋縄ではいかないのが上々らしさ。
黄昏酒場でまた会おねは、ガード下や赤ちょうちんの昭和的風景が見えるコミカルな曲。ブリッジで急にシリアスになってまたコミカルに戻る、こういう楽しさやおふざけ感も上々の持ち味。ベースがソウルフル!
アビシニアを遠く離れては、遠い国の広い大地のある風景が見えてくるような大らかな曲。パンフルートやケーナ、そして子どもたちのコーラス。アビシニアとはエチオピアの古い呼称なのだそうだ。
B面は、レゲエ調のハロ・ハロ・ヨコスカ 。これも郷子さんがかわいい。レゲエなんだけど昭和的情緒。で、後半どんどんリズムが早くなるとともにジャズ的な展開が始まってアルト・サックスがむせび泣く頃にはすっかりダンス・パーティー状態の盛り上がり。
Saraも晴れ渡った青い空や緑の豊かな農村の風景が見えるような大らかで懐かしさが込み上げてくるような曲。澄んだ水の流れが聞こえてくるみたいに美しく穏やかな世界。歌の舞台、アユタヤが出たかと思えば南十字星が出てきたり?
続いては、このアルバムの白眉、なんじゃもんじゃの木の下で
秋田民謡西馬音内温度をベースにしたジャズ的ダンス・ナンバー。或いは土着的ジャパニーズ・ファンク。
これはほんとかっこいい。民謡や和太鼓とジャズの融合なんて60年代からあるテーマではあるけれど、頭でっかちではなく気持ちからすっかり一つになっているから、そりゃあ体も自然に動くってもんです。
そしてこのアルバム一番の名曲、いつでも誰かが
これはゴスペル。というか、黒人霊歌、スピリチュアルですね。オルガンが気持ちいい。思わず手足でクラップしたくなるよね。そして込められたらメッセージ。
ラストはほっこりと穏やかにメトロに乗って浅草。 猪野陽子さん、ここではアコーディオンがレトロないい雰囲気。

こうやって聴いていくともうひとつ上々の日本的な良さが浮かび上がってくる。
それは、四季がある国ならではの情緒。
儚さも含めていろんなものを受け入れてきたが故の多様性。
一信教的に異教徒を排斥するのではなく八百よろずの森羅万象に神を宿らせるように、日本人は外から来るものを受け入れながら多様性や、変化に柔軟な対応力を培ってきた。その多様性は、実は優しさや思いやりにつながっているのだと思う。
グローバリズムというのは決してアメリカナイズ、ヨーロッパナイズされることではなく、ローカリズムから始まるものなんだろうな。グローバルであるためには、ローカルである原点を知り愛することが大切なんだろうな、なんてことを思ったり、今この国が進んでいこうとしている方向が果たしてこの国本来の持ち味に沿ったものなのだろうか、なんてことを思ったりしつつ、日本に生まれ育ったことをかみしめたい気分。




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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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