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♪ALL THAT YOU CAN'T LEAVE BEHIND -My Vintage(47)-

All That You Can't Leave
All That You Can't Leave Behind / U2

Released:2000

  この世界の中で恐れるべきものなんて何にもない
  僕に投げつけられる言葉なんて全部どこかで聞いたことのあることばかり
  僕はただ素敵なメロディーを見つけたいだけ
  仲間たちと口ずさめるような

  君が愚かだとは思わない
  だけどよく見てみてごらん
  まっすぐに立って
  君の荷物は君が運ぶんだ
  泣いたってしょうがない
  自分自身を取り戻すんだ
  ちょっとはまってしまって抜け出せないでいるだけ
       (Stuck in a Moment You Can't Get Out Of

1月30日は、中国の天洋食品で餃子に農薬が混入された事件が発生した日。
あれからちょうど6年がたって、昨年末のアクリフーズの事件。
当時散々に中国バッシングをした人たちは、日本国内で日本人が起こしたこの事件をどのように考えているのだろうか。
僕個人に関して言えば、あの事件以降、安全に関する考え方は変わったと思う。
それはつまり、絶対の安全をシステムに求めることは不可能なんじゃないかということ。
結局は人間がやること。現場で携わる人間だけが安全を維持することができるんではないか、ということ。
自分のすることに意味があって、誰かの役に立っていると思うことが出来たら、製品に毒を入れようなんていうことは思いついたとしても実行することなどできないはずなのだ、と考えるのは甘いのか?
世間の声では「もっと厳重な管理を」という意見が聞こえてくるけれど、人は監視され管理されればされるほど、孤立していくものではないのか、という気がする。
犯人が何を考えていたのかはまだよくはわからない。
給与や待遇に不満があったにせよ、会社自体が大きな損害を受けてしまえば元も子もないこと。
そんなことはちょっと冷静になって考えればわかること。
だけど、人は孤立すればするほど、そんなふうに冷静に考えることの出来ない境遇に陥ってしまいがちなものだ、ということはわからないでもない。
自分にだって危うい時期はあったし、これから先にそうならないとも限らない。
そんなときに、こんな歌のようなことを言ってくれる人がいればいいのにな。
或いはせめて、こんな歌が救いになればいいのにな。

例によって前置きが長いですが(笑)、今回のMy VintageはU2。
僕は実はU2はそんなに好きではなかった。
高校生の頃に聴いた「WAR」の硬質なサウンドやステージで白旗を振り回すような熱さはけっこう好きだったのだけれど、大名盤として扱われる「JOSHUA TREE」なんかは、どうも説教くさい感じが鼻についてしまってのめりこめなかった。
なんだかなぁと思いつつ「ACHTUNG BABY」も「ZOOLPA」も聴いたけれどやっぱりそんなに好きにはなれなかった。
で、すっかり遠ざかっていた頃に出たこのアルバム。
ボノの説教くさい感じは相変わらずではあるけれど、何かが違うと感じたのだ。
それは、ある種の「乗り越えてきた」感、とでもいうようなもの。
U2のアルバムを順に聴いていくと、元々何にも持っていなかったアイルランドの田舎の少年たちが、思いだけを武器に世界に出て、闘ったりおもねったり、叩かれたり目を見開いたりしながら得てきたものを作品にしてきた過程がよく見えてくる。彼らは元々何も持っていなかっただけに、出会ったものを貪欲に取り入れることができたし、小さいこだわりにしがみつくことがなかった。
このアルバムには、そんなふうにして得てきたものを一度全部ひっくり返してまとめてみたら、自分たちのたどり着いた場所はこういう所でした、というような感じがあって、タイトルの「置き去りにできないもの全部」という言葉には、ここまでで荷物をまとめてまたここから再出発、というような意味合いも感じられる。
そうして残された「置き去りにできないもの全部」には、数々の経験を糧としたある種の自信、揺るがない確信のようなものに満ちている。
冒頭のStuck in a Moment You Can't Get Out Ofの歌詞は、自殺した旧友に捧げられたものだとされているけれど、ボノの中には自分もそうなってしまっても不思議はなかった、自分たちは紙一重で乗り越えることができた、といった思いがあったのではないか。
このアルバムにはU2の歴史をひもとくようないろんなタイプの曲が収められているけれど、とりわけこの曲やKite In a Little WhilePeace on Earth といったゴスペル的な楽曲が特に深く心に響く。
それからフォーク・ロック調のWild Honey、90年代のエレクトロニクス時代を彷彿とさせるElevation 、アウンサン・スーチー女史のことを歌ったと言われる、力強いWalk On、と並ぶ秀逸な楽曲は、このアルバムがまるでベスト盤であるかのよう。
そして「これぞU2」というような名曲Beautiful Dayが燦然と輝く。
まるでよく冷えた冬の朝を照らす朝日のように、ポジティブで新しい希望が湧いてくるような。

U2というバンドが凄いのは、20年間を第一線でずっと活動しながら、こんな凄い名曲群を生み出してしまう底力なのです。
普通、長いこと創作や表現活動に携わり続けていれば、ネタ枯れにもマンネリにもなって当然。
ある程度のキャリアを積んだあとに、それまでの自分を超えることは並大抵のことではないはずだ。
にもかかわらず、彼らのキャリアを重ねるたびに成長していく姿の原動力になるものは一体何なんだろうか。
きっとあったであろう危うい時期をどうやって乗り越えてきたのか。
自信過剰や傲慢不遜にもならず、才能の枯渇を嘆くこともなく、過去の経験主義に陥らずかつ過去の経験を踏まえながら新しいものを取り入れて成長し続けていく力。
そういう強さを手に入れることができれば、恐れるものなど何もなくなるだろう。

最後にもう一度、 Stuck in a Moment You Can't Get Out Ofから。

  生半可じゃないことくらいは知っている
  決して充分に満ち足りることがないことも知っている
  でもそれは、今本当に必要なものじゃないからなんだってこと




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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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