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♪廻る命 ‐My Vintage(83)-

廻る命(DM008)
廻る命 / 古謝美佐子

Released:2008

 夏ぬ真昼間に 鳴ちゅるサンサナー
 短世の命 なふぃんふきり
      (夏ぬサンサナー)

サンサナーとは沖縄方言で蝉のこと。
夏の間に短い命を尽して鳴く蝉のせつなさを人の命にたとえることは万葉の昔からあるけれど、古謝美佐子姉ぇの慈しみ深い声で歌われるとより深くしみじみと感じ入ってしまう。
わけもなく泣きそうになってしまう。
心の底から何とも名前の付けようのない感情が湧き上がってくる。
そして、癒される。
良いことも悪いことも、悦びも悲しみも、ささやかなうれしいことも打ちひしがれるような辛いこともたくさんたくさんあったであろう彼女の生きてきた道程の深みが、その声の中に深くしみ込んでいる。

天じゃら
ポメロイの山々
太陽ぬ子
黒い雨
黄金ん子
海ぬチンボーラ〜赤山
夏ぬサンサナー
秋の踊り
冬の花影
アメイジング・グレイス
国頭サバクイ
廻る命

この作品は2008年に発表された2作目のソロ・アルバム。
いろんな人に歌われて代表作になった「童神」が収録されたソロ第1作の『天架ける橋』ももちろん大好きな大名盤で、それに比べるとこの2作目はやや地味ながら、より深みが増しているように思います。

古謝さんと夫・佐原一哉さんの作り出す音楽の魅力は、その歌の深みもさることながら、伝統的な沖縄音楽をギターやピアノはもちろん弦楽団や胡弓や二胡などをも組み合わせた現代的でワールドワイドな音にしてしまうところ。
このアルバムでも、アイルランド民謡のポメロイの山々やゴスペルのアメイジング・グレイスを沖縄風に響かせたり、オーソドックスな沖縄民謡の海ぬチンボーラ〜赤山秋の踊りにヴァイオリンやチェロをミックスさせたりで、これが意外なほどによくマッチして心地よいのです。心に響く音楽っていうのは全世界共通の何かがあるんだな、と。
ちなみにネーネーズ時代もよく演っていた国頭サバクイでは古謝さん自身の11歳の時の録音と現在の声とのコラボになっていて、これがまたとても壮大で時の流れの深みを感じさせてくれる。
原爆についての歌、黒い雨や子守唄の黄金ん子も素晴らしいのだけれど、一番グッとくるのは一曲目の天じゃら とラストの廻る命

 泣ちゃんていちゃすが あの世旅立ちや
 皆なある事でむぬ 迷てぃ呉るな
    (天じゃら)

「泣いてばかりでどうするの、あの世への旅立ちは皆にあることだから迷わないで、悲しみは一時、死んだ人は天の星になってあなたが行く道を照らしてくれるでしょう。」、そんな意味の歌詞。そして廻る命では春夏秋冬それぞれに花や海や夕暮れや風の美しさや厳しさを詠みながら、季節が巡る中で繰り返されていく命の営みの儚さを歌っている。
しみる。

お盆には父のお墓参りに行ってきた。
あちこちのお墓に供えられたほおずきがとてもきれいだった。
ほおずきは、お盆の間、現世に帰る魂を照らす提灯の代わり。
あれ?ってことはお盆にお墓にお参りしても魂はそこにいないのか?
まぁいいか。お墓は現世とあの世を繋ぐ中継基地みたいなもんだから。
もう一年半。
母もまぁいろいろありつつ元気で暮らしているようだ。
娘はもう母の背丈を軽く越していた。
日々、時は流れてゆく。



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コメント

[C2333]

Okadaさん、こんばんは。
娘ももう中学生、このブログを始めた頃はまだ5歳でしたから、ほんと早いものです。
クラスの中では小さい方ですが、うちは母親もかなり小さいので。特に足の長さが全然違いますね。。。

古謝さんのメールの話、古謝さんらしくていい話ですね。

[C2332]

娘さん、もうお母様より大きくなられていたんですね。
なんとなく、まだまだ小さいお子さんのイメージでした。

古謝さんのライブはぼくも何度か足を運んだことがあります。
ライブに行く度、感想を古謝さんにメールをしたんですけど、
その都度律儀に返事をくれて、ファンを大事にされているんだなぁ、と感動しました。
尼崎で観たライブでは御自宅の電話番号だったか住所だかを言って、「沖縄に来たら、うちに遊びにおいで」なんて言ってなぁ。
素晴らしい唄者であり、とても魅力的な女性だと思います。

[C2331]

まりさん、こんばんは。
ほんとこういう音楽は貴重です。癒やされます。
佐原さんとのかけあいは、夫婦漫才みたいで最高ですよね。
こういう歳のとりかたは素敵だと思います。

[C2330]

こういった安らげる音楽は貴重ですねえ

私が古謝さんのライヴを見に行ったときは 彼女の豊かな髪は黒々としていました。
今のご主人と再婚したばかりでした。
素敵に年齢を重ねてますね♪
  • 2014-08-20 21:13
  • ひるのまり
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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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