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♪MARVY ‐My Vintage(29)-

MARVY
MARVY / RCサクセション

Relaesed:1988

 わけもわからずに
 追いかけ回されて
 逃げ回らなきゃならないとき
 かくまってくれるかい?
 僕を
    (“共犯者”)

 何の罪もないはずなのに何らかの罰を受けている
 自分でまいた種でもないのに
 咲き乱れた花 摘まされる
    (“遠い叫び” )

重い。
なんとなくこういう重いのがしっくりする今日この頃。
MyVintageシリーズにRCサクセションのアルバムをどれかひとつ、と考えたときに一番に思いついたのは『シングルマン』でも『PLEASE』でも『BLUE』でも『OK』でもなくこのアルバムだった。
清志郎の『RAZOR SHARP』、チャボの『THE仲井戸麗市BOOK』というそれぞれの渾身のソロ・アルバムを経て1988年に発表されたアルバム。発表時にはLPは2枚組、CDは1枚という変則的なスタイルで、LPにはそれぞれFISHサイドとWOLFサイドと名付けられていて、清志郎自筆のイラストが表裏のジャケットにプリントしてあった。
このアルバムを選んだ理由は単にリアルタイムで一番よく聴いたということ。よく聴いた理由は、実はRCのアルバムとしては録音状態がとても良かったから。残念ながらRCのアルバムはどれも録音の質が今ひとつよろしくないのが多いのですよね。
それから曲が粒ぞろい。RCの好きな曲ランキングBest20には入らないかもしれないけれど、30位から50位くらいにはずらっと入りそうな、名曲じゃなくても佳曲ぞろいな感じ。

アルバムに収録されている曲は、大きくは4つのタイプに分かれる。
①・“Midnight Blue”や“HONEY PIE”、“Dance”のようなRCお得意のスタイルのロック・ナンバー。
②・清志郎の得意とするかわいらしいラブ・ソング。
涙あふれて”や“ありふれた出来事 Part2”など。
③・“GIBSON(Chabo's Blues)”、“俺は電気”など『THE仲井戸麗市BOOK』以降の流れに沿ったチャボのソロ作。
④・当時のリアルな清志郎の心境が歌われた曲。
Shelter of Love”、“Naughty Boy”。

バリバリのロック・ナンバーからかわいいラブソングから、絶望的な歌、社会的な歌を含め、ここにはある意味RCの集大成的にRCのいろんな側面が散りばめられている。
と考えて、待てよと思った。
中学生の頃だったかに出ていた清志郎の詩集、『エリーゼのために』だったかな、それに収められていた詞の曲があったりして、実はずいぶん若い頃に作った曲がいくつか含まれていたのだろうとは当時から思っていたけれど、実はこのアルバムの曲の半分以上は過去のボツ曲で、新曲は③と④の分類だけだったのではないだろうか?
もう長いことアルバム作ってないしレコーディングしろよとレコード会社にせっつかれてスタジオに入ったものの、ソロ活動を経て、清志郎とチャボのやりたいことは実は決定的に違ってしまっていた。方向の違う作品たちをつなぐために古い曲たちが掘り起こされて録音された・・・というのは深読みしすぎだろうか?
ただ、経過はなんであれ図らずもこのアルバムはRCの集大成となり、リリースを待たずして清志郎は次作『COVERS』の制作に取りかかった。乗り気ではないメンバーを尻目に清志郎はひとり別の方向へ走り出し、その後、G2が抜け、新井田耕造が抜け、『BABY A Go-Go』を最後にRCは解散してしまった。
あんなにばっちりと息が合っていたメンバー同士のすれ違いは、もう『MARVY』の頃には明らかになっていた。
誰が悪いというわけではなく、人と人が関わりあっていく中には、そういうこともあるのだろうな。
そんな思いで聴く冒頭に挙げた2曲には、とてもヒリヒリとするものを感じる。
そして信じられないことに、すれ違いが始まっているにも関わらず、バンドの演奏はものすごくかっこいい。





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コメント

[C1973]

LA MOSCAさん、こんばんは。
僕もこのアルバムはそんなに思い入れがあるほうではなくって、でも振り返ればよく聴いたな、聴き直してみてやっぱりいいな、と。
とくにカッコいいのがチャボの3曲で、これは「BOOK」に入っていても違和感ない、っていうか、その方がほんとはしっくり来そうな気もしますよね。
深読みかもしれないけど、清志郎・チャボそれぞれのソロ活動以降の変化がはっきり現れていて、当時ピンと来なかったことが今ならわかる感じがしています。

[C1972] 思わず熱くなってしまいました(笑)

読み応えありました、この記事。

俺は実はコレ、思い入れ浅いです、RCのアルバムの中では。
goldenblueさんの言うように音の良さはここまでの作品との差が歴然ですよね。
もしかしたら、その音の良さに違和感を感じたのかもしれない(笑)

確かに佳曲揃いですけどね。
あと「共犯者」と「遠い叫び」は俺も強烈に印象に残ってます。それと「ノーティー・ボーイ」も。
音の質感からアッパーなアルバムって思いがちだけど意外とこういう重めの曲が残りますね。

深読みの部分は俺もまったく同感。
演奏がえらいカッコイイのも。
ファンでそういう思いを持ってる人は多い気がします。





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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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