アルバムはジミー・リードばりのゆるめのブルース、 “You're The One”で始まる。 55年の録音。ドラム:フレッド・ビロウ、ベース:ウィリー・ディクソン、ピアノ:オーティス・スパン、そしてハーモニカにビッグ・ウォルター・ホーントン、というシカゴ・ブルースの大御所ぞろい。同時期のマディ・ウォータースの録音のバンドメンバーとほぼ同じなんだけど、マディの録音に比べると実にゆるい。 なんとなくだけど、御大マディのレコーディングが一段落してはマディが帰ったあと「ちょっと俺の曲も演ってみてくれよ。」みたいな感じでのほほんと始めたセッション、みたいな雰囲気がするんだな。 このアルバムには全編にわたって、そんなゆるい空気が流れていて、そこがとても好きな理由のひとつ。 2曲目“Money, Marbles and Chalk ”や3曲目“Luedella” はややダルなブルースだが、やはりマディのようにじとっと脂汗をかくような重みはなく、どこかさらっとした印象。 4曲目“ Act Like You Love Me ”や5曲目“ Back Door Friend ”などは、元々アウトテイクだったのだろう、オープニングに入っているやり直しやカウントの声が、かえってセッションっぽくて生々しい。マディが決して採用しないようなテナー・サックスがモダンでいい味を出している。 かと思えばレコードでB1にあたる“Sloppy Drunk ”などは、スインギーささえ感じるダンス・ナンバーで、ブルースは元々酒場で踊ることもできる音楽だったことを思い起こさせてくれる。
Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。 “日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。 自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。
イケイケじゃないブルース、なごみますよー。
今日も蒸し暑そう。ブルースでぶっとばしましょう!