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♪THERE GOES RHYMIN' SIMON -My Vintage(17)-

There Goes Rhymin' Simon
There Goes Rhymin' Simon / Paul Simon

Released:1973

前回記事からの流れで、今回のMyVintage盤はこれを。
アート・ガーファンクルと別れたポール・サイモンが1973年にリリースしたセカンド・ソロ・アルバム。
どうもポール・サイモンには陰気で孤独なイメージが強いのか『ひとりごと』なんていう引きこもりチックな邦題がついているが、原題は『There Goes Rhymin' Simon』、まぁ『おしゃべりサイモンが行くよ』みたいな感じで、そんなふうにもっと明るい雰囲気のあるアルバムなのだ。
オープニングの“Kodachrome”からして、転がるようなピアノとスカっぽい裏打ちのリズムの効いたカラフルな曲で、個人的にはポール・サイモンの最高傑作じゃないかと思うくらい大好きなんだけど、どうしてもサイモン&ガーファンクルのフォーク・デュオ的なイメージが強いのだろうな。
後に『Graceland』で高い評価を得たけれど、実はサイモンの楽曲は、サイモン&ガーファンクルの時代からずっと、新しいリズムや鮮やかな色彩をもっている。
歌詞だって暗く孤独で悲観的なものばかりではない。

♪高校生の頃、学校で何を学んだのか思い出していたんだ
 不思議なことに何にも覚えていないんだ
 けど何にも困らない
 壁の落書きが読めるからね

なんてフレーズ、かっこいいと思わない?
もちろんこういうフレーズの裏に込められたちょっとひねくれてペシミスティックな感じこそがサイモンの真骨頂ではあるのだけれど、少なくともなんとなーくイメージされている堅物のフォーク・シンガー的なイメージとはずいぶん違う。
何しろサイモンの音楽は間口が広い。
Loves me LiKe a Rock”なんてもろドゥーワップだし、“Tenderness”にもR&Bの要素が色濃くあり、“One Man's Ceiling Is Another Man's Floor ”はブルース、“Take me to the Maldi-Gras”は、タイトルどおりニュー・オリンズのブラスバンドの音楽を下敷きにしている。
かと思えば、ほっこりとフォーク・ソング・テイストの“Was a Sunny Day”があり、サイモンらしいイメージの叙情的な“Something So Right”や、シニカルな“American Tune”がある。
Learn How To Fall ”や“St. Judy's Comet ”みたいなさりげない作品も含めて、このアルバムに収められた楽曲は全部いいな。何度聴いても飽きない。それも、間口の広さ、引き出しの広さ、バラエティの豊かさ故のことだと思うわけで。

ハード・ロックやパンクに衝撃を受けて、やがてストーンズを通じてブルースやソウルの世界に魅力を感じるようになってからも、実はポール・サイモンはずっと大好きだった。軟弱で従順なおりこうさんの音楽、という雰囲気があったので「ロックだぜ!」なんてかっこつけてた手前、あんまり人には言えずこっそりと聴いていた感じだったのだけれど、やっぱりポール・サイモンは好きだ。
引き出しの多さと視野の広さ、思慮の深さ、根本的にはペシミスティックでありながらネガティヴではなくどこかあっけらかんとして突き抜けているところ、そして新しいリズムへのチャレンジとトラディショナルな音楽へのリスペクトぶりの見事なバランス感覚。
いわゆるロック的なものとは違う場所で、違うスタイルで、心の在りようとしてのロックを体現している、と思うのは僕の買いかぶりすぎだろうか。
どうもね、ロック好きだからといってロックっぽいファッションやロックっぽい言い回し、みたいなのがあんまり好きじゃなくってね、いや、人がする分にはお好きにどうぞ、なんだけど、自分がするのはどうも違和感がある。それは自分のキャラじゃない、つまりは自分らしくない。
そして、ポール・サイモンもそんなふうじゃないのかしら、なんて勝手に共感しているわけなのです。

よく「自分らしく」なんて言うけれど、自分らしさって何?って考えたとき、例えばほんとうに誰とも会わず人との関わりが一切絶たれてしまったとしてもその自分らしさにこだわりきることができるのだろうかと敢えて設問するとしたら、多分答えは「NO」だと思うんですよね。人との関わりがあって初めて自分の座標を確認することができるのではないか、と。
そう考えると、よく言われる「自分らしさ」っていうのは、実は「自分をこんなふうにみてほしい」なんだろうね。
で、これから数年の僕の「こんなふうにみられたい像」は実はそんなポール・サイモンなのかもしれないな、なんてふと思ったりしています。




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コメント

[C1865]

mono-monoさん、こんばんは。
弱っちい不良、まさにそんな感じです(笑)。
ミックやキースのようなホンモノの不良には、憧れはしてもそっちじゃないとも思うんですよね。
吠えては殴られ、それでもぼやいてる、みたいな。あと、言わなきゃいいのに我慢できず、さくっと嫌み言ったりね。
立ち回り上手なように見えてけっこう下手くそ。孤独好きっぽく見せて実はわりと寂しがり。物わかりよく見えて実はかなりわがまま(笑)。
ジャクソン・ブラウンも理論派でクール、物腰やわらかなイメージがありますが、よくもわるくも頑固で、本心でないと動かない誠実さのある人だと思います。
  • 2013-06-05 23:09
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C1863]

私も前の記事を読んでこのレコードを聴きました。
ポール・サイモン大好きです。
「心の在りようとしてのロック」
ライ麦的、ホールデン的に思われます。
とても知的で繊細、弱っちい不良(笑)。
生意気言ってぶん殴られて、もぶつぶつののしるような。

私の「こんなふうにみられたい像」はジャクソン・ブラウンす。

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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