Bridge Over Troubled Water / Paul Desmond Released:1970
ジャズのアルバムをもう一枚。
ポール・デスモンドがアルバム丸ごと一枚サイモン&ガーファンクルの曲をカバーした1970年の作品。
デスモンドさんは、長年デイヴ・ブルーベックのクインテットでサックスを吹いていた人で、あの有名な“テイク・ファイヴ”の作曲者でもある。
メガネをかけてひょろっとした弱っちくて理屈っぽそうな優男、そんな雰囲気どおりのスマートなサックスを吹く、そんなデスモンドさんだから、同じく繊細な印象のあるサイモン&ガーファンクルの楽曲カバーというのはまさにぴったりの感じがするでしょ。
1. コンドルは飛んで行く
2. フランク・ロイドに捧げる歌
3. 59丁目橋の歌
4.
ミセス・ロビンソン 5. オールド・フレンズ
6. アメリカ
7. エミリー・エミリー
8. スカボロー・フェア
9. いとしのセシリア
10. 明日に架ける橋
パーソネルは、ポール・デスモンド(Sax)、ハービー・ハンコック(P)、ロン・カーター(B)、ジェリー・ジェモット(B)、アイアート・モレイラ(Ds)、サム・ブラウン(G)、他。
まるでフルートのようにも聞こえる、やわらかなで流れるようなサックスの音色。
演奏そのものは、いわゆるスムース・ジャズのハシリと言ってもいいような洗練された演奏で、最初聴いたときには正直、「スーパーのBGMかよっ!」と思ったくらい。
ところが、それが不思議と心地よくなってくるのですよね。
僕が好きなのは、ただやわらかい、ただ優しいだけではない、理知的というか、冷静さを残したクールなフレージングにある独特の 硬質な感じ。このやわらかさと硬さの同居は、例えるならばロマンチックで文学的な表現力で世界の不思議や神秘を語ってくれる科学者のような感じかな。理屈や論理の世界と情緒や感情の世界がすんなりと同居しているように思えるんだな。
そして、スリリングでエキサイティングな演奏から得られるのとはまた違う独特のトリップ感、とでもいうか、ただ熱くエモーショナルでソウルフルな演奏が生む盛り上がりとはまるで違う種類のエキサイティングさがある。
これはなかなか説明が難しいのだけれど、美しいメロディー、美しい音色だなと思いながら音楽に身を預けていると、不意に異次元に連れて行かれるように、ひょいっとジャズ的飛翔をしているのです。
さっきまでそこにいたはずが、気がついたら無重力状態になって右も左も天地もわからなくなって、ふわりふわりと浮き上がっていたかと思うといつの間にか元いた地点に戻ってきていた、みたいな不思議な感覚。
これはもう、何にもジャズのことなどわかっちゃいない僕があえて、これこそがジャズの魅力と言い切ってしまいたくなるような、そういうトリップ感なんですよ。いや、やっぱりうまく説明できないな。
まぁいい。
ただポップスのヒット曲を売れ線狙いでジャズ風に演奏してみました、ということではまるでない。
サイモンの楽曲の世界観をダシにして自分の世界を表現する。
自分なりのやり方で世界と対峙する。
自分なりのやり方で世界を切り取ってくる。
ジャズの本質はそこにあるし、それはすなわち生きるということがそういうことなんだよな、と僕の考えもまたジャズ的に飛翔するわけで。
いかん、理屈っぽくなってしまった。
このアルバムの一番すごいところは、そういう理屈を抜きにしてさっぱりと心地よく楽しめるところなのですが。
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これはお勧めするには個人差がはげしいかもしれません。
うっとりするような演奏でもハッと刺激を受けるような演奏でもないですが、全然ジャズっぽくなくてめっちゃ聴きやすく、心地よいですよ。