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♪LEARNING TO CRAWL -My Vintage(66)-

Learning to Crawl
Learning to Crawl / The Pretenders

Released:1983

 道の真ん中で あたしを見つけてよ
 計画を隠し持って あたしは今、道の真ん中
 誰もがあたしに笑顔で近寄ってくるけれど
 あたしを勝手に枠にはめて期待しないで
 あんたがそうするのならば
 爆弾落っことしてやるわ

かっこいいっ!
プリテンダーズのMiddle Of The Road
出だしのドラムから、ドスの効いたクリッシー・ハインドのヴォーカル、荒っぽいギターソロ、ブレイクの“1,2,3,4”のカウント、硬質でシャープでタイトな音の質感から、ハイテンションの疾走感から、ラストのクリッシーのハープのソロまで、もう完璧にかっこいいロックンロール。
キメのフレーズがまたかっこいいのだ。
「あたしを猫みたいに扱わないで 子供もいる33才の女なのよ」
高校生のとき初めてこれ聴いたときはめちゃくちゃしびれたねぇ。

クリッシー・ハインド率いるザ・プリテンダーズ。
1979年にニック・ロウのプロデュースでデビュー。
スモール・フェイセズやキンクス張りのシンプルでシャープなサウンドにソリッドでタイトなビート、そしてリーダー、クリッシー・ハインドの硬派なたたずまいがもうめちゃくちゃかっこいい。
80年代前半当時、ロックのお姉さんといえば、例えばジョーン・ジェットとかパット・ベネターとか或いはブロンディーのデボラ・ハリーとか、ちょっと水商売っぽいケバい姉ちゃんばっかりで、まぁ当時はまだまだロックとはそういうものだというステレオタイプな作り込みがあったのだろうけど、クリッシーのたたずまいはそういう女性たちとはちょっと違っていた。
水商売というよりはヤクザの姐さんに近い。ベタベタとした女くささなど見向きもしないで、筋の通った意志がはっきりとある感じ。近寄ったらぶっとばされそうなある種の孤高感。クール。
何ものにもおもねらず、媚びずにスクッとキリッと立っている感じ。
別に「お姉さまにぶたれたい」みたいな趣味があるわけではないけれど(笑)、「あたしはあたしよ。関係ないわ。」みたいな尖ったところ、かっこいいと思ったなぁ。
尖る、突っ張る、媚びない、おもねらないというのは、自分の意思がはっきりとある、自分で自分の人生を生きているからこそできること。
どうも仕事でふにゃふにゃイジイジした小娘たちの面倒ばっかり見ているせいか、なんていうかこう、キリッと引き締まった女の人ってかっこいいよなぁ、なんて尚更思うわけですよ。
もちろんそういう女の人にだって悩みがないわけではないだろう。むしろ引き受けて背負う分悩みはより多く深い、けれどそれをイジイジと抱えずに、悩みは悩みで真剣に悩みつつスパッと割り切って突き進んじゃう、そういう人ってかっこいいよなぁ、と。それに引き換え小娘たちときたら、どうでもいいところで顔色ばっかり伺ってうろうろしてばっかり。100点満点の正しい答えなんてどこにもないんだから、何が正解なのかを考えて行動してもダメだって。こうしたい、こうあるべき、その思いの向こうにはやるべきことは自ずと見えているのだから、あとはやるだけやん。
・・・あぁっ、そんな愚痴を言う場ではなかった。クリッシー・ハインドだ。プリテンダーズだ。

アルバムからの最初のシングルだったBack On The Chain Gang。サム・クックからの引用を交えつつ「あたしたちはまた、鎖につながれた囚人の列に戻るのよ。」と呟く歌詞が深い。初期のKidsやStop Your sobbingと同系統のフォークロック調のShow Meもその後シングルカットされてそこそこヒットしたはずだ。
聴き始めた高校生の当時は、3曲目のTime The Avengerや4曲目のWatching The Clothes、B面頭のThumbelinaみたいな、疾走感のあるハードな高速ロックンロールが好きだったのだけれど、大人になってからはむしろB面の4曲のような、ずしっと重い手応えの曲の方がずいぶんとしみるようになったなぁ。
「オハイオへ帰ったら 故郷は何もかも変わっていた」と歌う、ベースのリフがソウルフルなヘヴィーなナンバー、 My City Was Gone、続くThin Line Between Love And Hate。この曲はパースェイダーズのカバー。そして「あなたを傷つけたわ。だってあなたが私を傷つけたから。」という詞がひりひりするようなI Hurt You
この辺りはベスト盤では味わえない、キリッとシャープでかっこいいクリッシー・ハインドの、キリッとかっこつけた裏にある苦悩する横顔、という気がします。

このアルバムのタイトル、「Learning to Crawl」、直訳すれば「はいはいを覚えているところ」。
ファースト、セカンドと順調にヒットを飛ばしていたプリテンダーズは、セカンドアルバム発表後に、ベーシストのピート・ファーンドンが脱退。その直後ギタリストのジェームスがオーバードラッグで死亡。私生活では少女の頃の憧れだったキンクスのレイ・デイヴィスと結婚したもののすぐに破局。と、崖っぷちに立たされ、そんな中でクリッシーは一からやり直してこのアルバムをレコーディングしたのだ。その再スタートの決意が、このタイトルに込められている。
あんなにクールでかっこいいクリッシーも、実はもがき苦しんで地べたをはいまわっているんだ、ということを知った時は軽く衝撃を感じたけれど、だからこそクリッシーはあんなにかっこいんだ、ということもだんだんとわかってきた。
自分は何にも出来なくて自分よりキャリアのある人は聞けば何でも教えてくれると思っている小娘たちにはピンと来ないかもしれないけれど、平然とクールに仕事をすすめているように見えるお兄さんお姉さんたちも実は毎日苦悩だらけなのだよ。
正しい答え何てどこにも転がってなんかいないから、真剣に向き合って、考えて悩んで自分なりのすすみ方を導き出すしかないのだよ。
もがきながら前へ進んでいくしかないのだよ。
そこ、わかってほしいところなんだけどなぁ、とまたアルバムの感想から離れていく自分に苦笑しつつ、プリテンダーズ、リピート。


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[C2255]

yuccalinaさん、こんにちは。
そうか、そういわれると今はもうわざわざ“女性”ロッカーなんていう呼び方はしなくなりましたね。
わざわざ“女性”がついていたこの時代、媚びない姿勢を貫かないとやってられなかったのかもしれませんね。
  • 2014-06-02 08:03
  • golden blue
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[C2253]

こんばんは。
クリッシーには媚びない格好良さがありますよね。まだこの頃は女性ロッカー、という呼ばれ方してましたっけ。
チェイン・ギャング、大好きでした。
  • 2014-06-01 20:08
  • yuccalina
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[C2243] Re: ジム・カー

deaconblueさん、こんにちは。
シンプルマインズについては興味を持ったことがなくてまったく疎いのですが、クリッシーとパッツィ・ケンジット、、、ジム・カーって人は気の強い女性がお好きなようですね。

昨日たまたま知ったのですが、6月にクリッシー・ハインドのソロ・アルバムが出るそうです。
  • 2014-05-25 12:32
  • golden blue
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“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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