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◇吉田ルイ子 『ハーレムの熱い日々~Black is Beautiful~』

ハーレムの熱い日々 (講談社文庫 よ 10-1) 


ハーレムの熱い日々―BLACK IS BEAUTIFUL/吉田 ルイ子

カーティス・メイフィールドやダニー・ハサウェイを聴いていたら、昔読んだある本を無性に読みたくなってきて、本棚からひっぱり出してきた。
フォト・ジャーナリスト、吉田ルイ子さんの「ハーレムの熱い日々」。
黒人の公民権運動が盛り上がっていく最中の60年代に、ハーレムのど真ん中で黒人たちとともに暮らし、ともに働き、彼らの心の中の葛藤や変化やブラック・パワーの盛り上がりや、それが暴動に変わっていくところも含めて見続けてきた人だ。

なんせこの人の経歴はものすごい。
1938年 北海道生まれ
慶應義塾大学で国際関係論を学んだ後、NHK国際局を経て、アナウンサーとして朝日放送に勤務
1961年にフルブライト留学生として渡米
TVジャーナリズムを学ぶためオハイオ大学へ
途中(田舎暮らしに飽きて)ニューヨークのコロンビア大学へ転校
在学中に白人の人権運動家・ロバートと学生結婚
ニューヨーク市とコロンビア大学が実験的に導入していた低所得者住宅街への居住に対する補助制度によりたまたまハーレムに住むことになり、そこでこれもたまたまハーレムの人々を写真に撮ることになり、写真の魅力に目覚める
その後フォト・ジャーナリズム科に転入
離婚後、29歳でプロのカメラマンになる
この「ハーレムの熱い日々」は、1971年に帰国するまでの10年のハーレムでの暮らしを描いた作品だ。

帰国後もすごい。
「ハーレムでの熱い日々」を1972年に出版し、写真展を開催。
しかし、そんな成功にだわることなく、その後もニカラグアで戦争孤児を取材し、キューバでカストロ議長に会い、南アフリカでアパルトヘイトについて深く取材を繰り返し、そうやって写真と文章を発表する傍らで翻訳も手がけているし、映画監督までやってしまっているのだ。
また2001年には瀬戸内寂聴さんや平良とみさんなど同世代の30人もの女性をインタビューした「華齢な女たち」も好評を得た。

とにかく、ひとつのところに留まっていられない人なのだろう。
何か「これっ」と思うものを見つけたら、目をキラキラさせて一目散に走っていってしまうような人。
手に入れたものにしがみつかず、いつも何かワクワクするものを探している人。
そして彼女の作品にはいつも、人としての温かい眼差しがある。

写真というものは不思議なものだ。
撮られた映像の中に必ず、撮った人の想いが映し出されてしまう。
藤原新也さんならその写真を通じて伝わってくるのは、生きること/死ぬことに対しての思慮。星野道夫さんなら、地球も含めた生命の営みへの畏怖や尊厳。
吉田ルイ子さんの写真を通じて見えてくるのは、人が生きることへの賛歌とでもいうか、生きることを謳歌している人々への愛情や優しい眼差しだ。
「写真というものは、被写体を美しいと思わなければ、あるいは愛さなければ写すべきではない。少なくともそれが私のカメラモラルだ。」という言葉がこの本にあったけれど、それはそのまま彼女の人生に対するスタンスなのだと思う。



ちなみに、大好きなジミー・クリフの“Give Thanx”のジャケットは吉田ルイ子さんの仕事。
素敵な写真だ。
Give Thanx


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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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