FC2ブログ

Entries

♪PREACHIN!

オバマ大統領のことをからめて黒人音楽の素晴らしさを語る記事を書きたいと思いながら、なかなか書けないまま「アメリカ史上初の黒人大統領誕生」のニュースも幾分熱気が冷めてしまったけれど、やはりアメリカの大統領に黒人がなるということは画期的なことだ。オバマ氏自身はケニア人の父とカンザス出身の白人の母との間にハワイで生まれインドネシアで育ったという変わった出自の持ち主で、奴隷として西アフリカから連れ去られた黒人達の子孫ではないとはいえ、40年前には公然と黒人差別が行われていた国を象徴するリーダーに有色人種がなる、というのはとても大きな変化で、裏を返せばそれほど今アメリカ国民は“CHANGE”を求めているし、追い込まれているし、何かに希望を託そうとしているということだと思う。第一“Yes,We Can”なんてフレーズ、自信満々の時には絶対言わない。友達も少ない地味な女の子が、自己紹介のときに「性格は明るい方です」なんて必ず言うみたいに(そのことが彼女にとって救いとも呼べるくらい必要であるように)、自信をなくしているからこそ“Yes,We Can”なんて励まされなければ立ち行かないのだろう。
もっともそうやって国民にただ夢や希望を謳うだけで国政を推進できるはずもなく、しっかり事実を見据えて覚悟を決めて取り組んでいこうとする就任演説はより好感の持てるものだった。
演説には選挙中から定評のあるオバマ大統領だが、何よりメリハリの効いた言葉のリズムが心地よい。もちろん何を言っているかなんてわからない、けれど澱みなく明瞭に意志のある声で語られる言葉たちは、中身云々に関わらず素直にかっこいいと思ってしまう。

それに引き換え我が国の大臣どもはどうだろう。言葉というものに重みがまるでない。
辞任した中川氏の失態は言うに及ばずだが、もはや何を言っても揚げ足を取られてしまう麻生総理に至っては可愛そうなくらいだ。マスコミの報道レベルそのものがほとんどいじめに近い。もっとも、じゃあ麻生総理以外ならよかったかと言うと麻生さんですら総裁選の時点ではマシに見えたのであって(安倍や福田も就任時点では一番マシに見えた)、他の人間だったとしてもきっと大差なかっただろう。
もっと国民に向かって語ってほしいと思うね。
オバマ氏の人気にしろ、小泉元総理の人気にしろ、政策云々よりも国民に向かって語りかけていたからだと思うのだ。麻生総理のコメントは「国会」や「新聞記者」といった目の前の人間に対してのものでしかない。「目の前の意地の悪い人間にムキになっている肝っ玉の小さい男、そんな奴に国の舵取りは任せられない」「向けられたマイクやカメラの向こう側に国民がいる、そんなことも想像できないような奴に国民の暮らしは想像できっこない」…それが支持率低下の正直なところではないのか。
なんであれ時代の潮の変わり目に、僕らは「明瞭な言葉」を欲している。わかりやすさ、はっきりした方向性、それを誰かに示してもらわない限り何が正しいのか判断できなくなってしまっているのだ。それは危険な兆候だと考えれば、逆に麻生総理レベルの方がこの国は平和なのかもしれないけれど。

さて、今日の音楽。
リズムでたたみかけてグッと心を鷲づかみにする「お説教」は、黒人系キリスト教会の伝統。
そして、すべてのブラック・ミュージックの揺りかご。
明瞭で意志のはっきりした演説のように、強い意志と有無を言わさぬ圧倒的な熱量によってカタルシスの中へ聴くものを連れて行ってしまう、そんなSOUL PREACHERたちを。


ア・ニュー・パースペクティヴ    愛と自由を求めて+1   One Lord One Faith One Baptism

The Definitive Collection    Soul Alive (Dlx)

  
A New Perspective/Donald Byrd
60年代初頭、黒人たちが権利とプライドに目覚めていく時代の熱気が封じ込められた名演。
バード曰く「現代の讃美歌集を作りたかった。僕等のジャズセンスとテクニックを付け加えた上で。」というように、のっけから女声聖歌隊が♪ダンダダダダディーダ~、なんてちょっと面食らうけれど、ジャズとしてではなく、ジャズの手法による黒人霊歌集だと考えれば合点がいく。

Extension of a Man/Donny Hathaway
ダニー・ハサウェイは、いわゆるステレオタイプの黒人シンガーとは全く違う、クラシックやジャズの素養も持ったインテリジェンスあふれる才能の持ち主で、黒人や白人といった範疇を超えた音楽家だった。
名曲“Someday We All Be Free”をはじめ、人としての尊厳に満ちた誇り高き音楽。

Gospel Live / Aretha Franklin
何を歌っても自分の歌にしてしまう彼女の圧倒的な存在感にはただただ平伏すしかないのだけれど、高名な牧師の家に生まれ幼い頃から教会で歌っていたアレサにとって、ゴスペルは元々“自分の歌”。このアルバムは、87年、ソウルの女王として君臨する中で故郷へ戻るように録音されたゴスペル・ライヴ。合間の説教師のMC(?)なんかも実にカッコイイ。

The Definitive Collection/Howlin’ Wolf
「お説教」といえば思い浮かんだのがハウリン・ウルフ。ハウリン・ウルフには、居酒屋で若いもん相手に人生を語っている職人の棟梁…というイメージがどうしてもする。
「えぇか、若いの。人間っちゅうもんはなぁ、へこたれたらあかんのや。あきらめたらそんでお終いや。わしも若い頃は無茶苦茶してきたし、親不孝もんやった、けどな、お父さんお母さんは大切にせなあかんのやぞ、わかるか?ん?せやよってに人様に迷惑かけたらあかんのや。ちゃうか?」
・・・ここはもう、口答えなどせずにただありがたく拝聴するしかないだろう。

Soul Alive (Dlx)/Solomon Burke
もう一枚、誰を選ぼうかと迷った挙句、キング・オブ・ソウル、ソロモン・バーク。
9歳の頃から天才説教師と呼ばれ、70になろうとする今も現役バリバリ、そのたたずまいはまるで国王もしくは大統領級。豪快にわめき豪快に泣き叫び、豪快に愛を語る。



スポンサーサイト



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://goldenblue67.blog106.fc2.com/tb.php/78-116dfa4d

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

Profile

golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

Calendar

09 | 2020/10 | 11
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

Gallery

Monthly Archives