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♪THE RIVER -My Vintage (19)-

The River
The River / Bruce Springsteen

Released:1980

ブルース・スプリングスティーン。
一番好きなアルバムはやはり『Born to Run』なのだけれど、ターン・テーブルに乗った回数ではこの『The River』の方が断然多い。『Born to Run』は、ここぞというときに気合い入れるためのもの、日常に近いのはこっちなのだ。
『The River』といえば真っ先に誰もが思い出すのは“Hungry Heart”とタイトル曲“The River”なんだろうけど、僕が一番大好きなのは、ストーンズばりのいかれたロックンロール“Crusn On You”と、ドラマチックな“Drive All Night”の2曲。
このふたつの曲は、いわば両極端。
でも、この両極端こそがスプリングスティーンらしさなのだと思うのだ。
そもそもこのアルバム、元々2枚組の構想ではなく1枚で発表される予定だったのだが、録音を終えてから仕上がりに満足いかなかったスプリングスティーンが急遽2枚組にしたいと申し出たのだそうだ。

1枚目はシンプルでコンパクトなロックンロールがぎっしり詰まっている。
シャープなギターで力強く始まる “Ties That Bind”から、クラレンス・クレモンズのサックスが鳴り響くパーティー・チューン“Sherry Darling”、続く“Jackson Cage”、“Two Hearts”までの4曲の怒濤の流れはめちゃくちゃカッコいい。
1枚目のA面はしんみりとした“Independence Day”で締めくくられ、B1“Hungry Heart”をはさんでまた続く3曲のロック・ナンバーもものすごくパワフル。
ブルースと相棒スティーヴン・ヴァン・ザントが一本のマイクで交互にシャウトする“Out In The Street”、ガレージっぽい勢いの“Crush On You”、そして高速ロックンロールの“You Can Look(But You Better Not Touch)”。これに続く“I Wanna Marry You”もキュートでかわいくていい。かすれ気味の声でせつなめに歌ってはいるけれど楽曲の骨組は60年代ポップス風で、スプリングスティーンは実はこういうのけっこう好きなんですよね。

そして2枚目は、“Cadellac Ranchや“I'm a Rocker”、“Ramrod”みたいなお気楽っぽいロックンロールもあるにせよ、1曲目の“Point Blank”に象徴されるような、ややグレイでもやのかかったスプリングスティーン像が表に出ている。
Fade Away”や“Stolen Car”、“The Price You Pay”、そして“Drive All Night”。

いかれたロックンローラーとしてのスプリングスティーンと、世の中を深く見つめる表現者としてのスプリングスティーン。
一枚のレコードの中ではすべてを上手く表現できなかった、ということなのだろう。
スプリングスティーンはいつもふたつの狭間で揺れ動いてきた。
R&RやR&Bに憧れ、純粋に音楽家として、パフォーマーとして、ポップな作品を作り演じる立場と、R&Rの名で呼ばれるより深い表現、音楽を通じて人生や社会にダイレクトに訴えかける物語を歌う詩人やメッセンジャーとしての立場。軽妙なエッセイや短編と、幾重にも織りなした長編小説との違いみたいなものだろうか。
それらは表と裏の関係ではなく、ひとりの人間の中に地続きであるもの。
スプリングスティーンの中ではライヴとアルバム制作ではスタンスの違いがあるのか、アルバムはどちらかといえば内省的な表現者としての色が濃く出がちで『Nebraska』以降はなんとなくすっきりしないし、もはや新しいアルバムにも食指が動かないのだけど、この『The River』にはまるでライヴのように活き活きとした、ロックンロール・プリズナーとしての姿と表現者としての姿がバランスよく刻み込まれている。

そして、この両面を矛盾なく表現できるのは、Eストリート・バンドという盤石のバンドがあってこそ。
g:スティーヴン・ヴァン・ザント、b:ギャリー・タレント、ds:マックス・ウェインバーグ、key:ダニー・フェデリシ、p:ロイ・ビタン、そしてsax:クラレンス・クレモンズ。
ステージとツアーの中で鍛え抜かれた鉄壁の布陣、そして縦横無尽にステージを駆け回るスプリングスティーンに阿吽の呼吸で応える伸縮自在の演奏。
彼らの関係は、ソロ・シンガーのバック・バンドとしてしまうにはあまりにも有機的に結びついているし、かといって全員が公平な立場を保っているようなロック・バンドとも違う。
あえて言えばやはりボスと仲間たち。子分じゃなく仲間なんだよね。
そんな微妙な距離感の凄腕のバンドを長期間に亘って持つことができたアーティストが果たしてどれくらいいたのか、と考えるとき、彼らの関係はロックの最良の奇跡のひとつではないかと思うのです。




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コメント

[C1873]

ezeeさん、毎度です。
“Jackson Cage”、”Cadillac Ranch”、いいですね。
スプリングスティーンにはもっとこんなのを演ってほしいんですけどね。。。
“Dancing In The Dark"は、シンセの古臭い音と、あのプロモーション・ビデオのせいでマイナスイメージ強くなってしまっていますよね。ほんとはもっといい曲だと思います(笑)。
  • 2013-06-15 18:43
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C1872]

まいどでおます
本作は結構、聞き覚えある曲多いでっせ〜
何せ、いっつも兄貴の部屋から流れてましたから
月並みですがやっぱ“Hungry Heart"がコノ人で一番好きです!
イントロの雄叫びからシビれますわ
あと印象が残ってるのは“Jackson Cage”と”Cadillac Ranch”とか。
ミーハーですが次作の“Dancing In The Dark"も結構好き!
  • 2013-06-13 23:27
  • ezee
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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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