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♪THE LONG RUN -My Vintage (5)-

Long Run
The Long Run / Eagles

Released:1979

海外の音楽を聴き始めたのは、3つ上の兄貴の影響だった。
といっても、兄貴だってずっと洋楽好きだったわけではなく、それまではさだまさしやアリス、ロックっぽいといってもせいぜい甲斐バンドのレコードを持っているくらいだったのだけれど(笑)、それがある日突然洋楽のレコードをどっさり友達に借りてきたのだった。
当時“オネスティ”がCMでよく流れていた、ビリー・ジョエルの『ニューヨーク52番街』、イーグルスの『ロング・ラン』、それからクラッシュの『ロンドン・コーリング』、その3枚だった。
1979年の秋だったのだな。当時僕は中1、兄貴は高1。
何しろその当時、LPレコード2500円は中学生にとっては大金。ダウンロードなんてものはもちろんないし、レンタル・レコード店すらない時代でテレビは歌謡曲しか流さなかったから、ちょっとかっこいい音楽の情報源はFMか音楽雑誌だよりで、実際に聴くのは友人や知り合いに借りるのが一番有効な方法だったのだ。今から思えばまるで原始時代のことを書いているみたいだな(笑)。
ちなみにカセットテープだって高価だったから、聴かせてもらったアルバムだって全部録音しないで、気に入った曲だけ録音して、聴きあきたら消していた(笑)。

というわけで、何の前知識もなく聴いたイーグルス。
正直よくわからなかった。ヒゲもじゃのむさくるしいおっさんのアメリカ音楽、それ以上でもそれ以下でもない感じ。何歌ってんだかチンプンカンプンだし。いいなと思ったのはA1の“ロング・ラン”とB1の“ハートエイク・トゥナイト”、それとB面ラストの“サッド・カフェ”くらいだったような記憶があります。
で、そのときはそれっきり。
兄貴の方もイーグルスもクラッシュもスルーして、なぜかヘヴィ・メタルに走っていったし(笑)。

それからずいぶん経って大学生の頃、もう一度聴いてみた。その頃はもう、ロックの「名盤」と呼ばれるものはもう片っ端から聴いて、ロックという文化がどのように生まれてどんな社会的背景の中でどう変わっていったのかもそれなりに理解していたし、好き嫌い以上に、どんなバンドが何を表現しようとしていたのかにとても興味があった頃。あわよくばそこに生き方のヒントが転がっているんじゃないかとか思っていたのだ。
その頃に“サッド・カフェ”の歌詞を訳してみたことがある。
でも、そのときに感じたのは、過去を美化して振り返っているだけの歌だな、ってこと。なんだかくよくよした年寄りじみた歌だな、なんて思ったんだな。

「愛や自由と言う言葉で世界を変えられると思っていた
でも僕らはただの寂しい群衆に過ぎなかったんだ」
なんてさ、あんたらが好き勝手やった結果挫折するのは構わんけど、あんたらがあきらめたからその後の世代は愛や自由なんて言葉すら使えなくなったんだぜ。
あの時代あんたらはそうやってロックの時代をオシマイにしてハイ、サヨナラだったかもしれないけど、こっちはその後の時代で育っていかなくちゃいけないんだ、そう簡単にオシマイにされたくはないもんだ、と。
イーグルスは前の世代のものって印象は以前からあったのだけれど、そんなわけでまるで聴かなくなってしまったのだ。

で、それからなんだかんだと20数年。
半年ほど前に、たまたま図書館にあった『ロング・ラン』をなんとなく借りてきたのね。今ならあんまりこだわりもなく聴けるんじゃないかと。
1曲目、“ Long Run ”、おーっ、この曲ってまんまオーティス・クレイのあの曲のリズムそのまんまだったのだなー、とか、当時甘っちょろいAORだと思っていた“ I Can't Tell You Why ”の甘いメロディー&ティモシー・B・シュミットのスイート・ヴォイスがけっこういけるやん、とか、“Heartache Tonight ”はもろグレン・フライ好みのソウル・テイストだったんだな、とか、当時からなんじゃこのハンパな曲は?と思っていた“グリークス・・・”はやっぱりどうってことない曲やなー、などと思いながら、最後に“Sad Cafe ”が流れてきたとき、不覚にも涙がでそうになってしまった。
そして歌詞をもう一度読み返してみて、えっ、そうだったのかと愕然とした。

ブリッジの後の最後のヴァース。

「おそらく時は満ちた
思い出すたくさんの顔
人生はとてもゆるやかに変わっていく
もし変わらないとしても
どうして?と尋ねる必要はない
それはなるべくしてなるものなのだ
だから、真夜中におちあわないか
あのサッド・カフェで」

この最後のヴァースに込められた願いのようなもの、今は一旦引き下がり過去を清算するけれども、全部捨てた訳じゃない、いつかきっと再会の時がくる、みたいなニュアンス?
続くサックスの、儚い虹のようなメロディが、この歌は決して諦めの歌ではないという意志を現しているように聞こえてきた。
ドン・ヘンリーの本音はどうだったのかはわからない、ただ僕が、年寄りを否定してばっかりもいられない歳になって、そのように聞き取りたくなっただけのことなのかもしれない。
でも、そんな風に聞こえたんだ。

音楽は聴き手の気持ち次第でどんな風にも聴くことができる、その余白っぽさが音楽の素敵なところ。
また次の20数年後に、僕はこの曲の余白に何を書き込みたくなるのだろう、そんなことを考えさせてくれるこのアルバムはやはり僕にとって少し特別な作品なのだと思う。







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コメント

[C1601]

名盤さん、こんばんは。
ほんと残念ながらそうですよね。
年寄りからはまだまだだ、なってない、我々の時代に比べたら恵まれていると甘ちゃん扱いされつつしんどいことは押し付けられ、若者からは僕らが否定したいおっさんおばはんと一緒くたにされて蔑まれつつやっぱりめんどくさいことは押し付けられ、ほんまなんなんだかなー、可哀想だぜ40代、って気分です。
  • 2012-11-12 22:44
  • goldenblue
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[C1599]

>年寄りを否定してばっかりもいられない歳になって

その感じ、よく分かります。

[C1593]

Okadaさん、こんにちは。
兄貴っていうのは良くも悪くも影響受けますよね。
ロックを聴くようになったのは兄の影響、でも聴く種類は兄貴とは全然違う方向へいってしまいました。
ハードロック/ヘヴィメタルにもたまには「おっ!」というのもあるにはあるのですが、アルバム全部聴くと疲れてしまいますね(笑)。

24日、楽しみです。僕の方は例によってまだまるで予定を決めていませんので、バスにするか、新幹線にするか、宿泊も行き当たりバッタリでカプセルホテルかネットカフェになりそうな感じです。
  • 2012-11-10 15:25
  • goldenblue
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[C1592]

随分前に、ぼくのブログでお話しした事があるかもしれませんが、
ぼくも3つ上の兄貴がいて、ほんの少しだけ奴の影響を受けています。
でも、聴いてる音楽のほとんどがハードロック、ヘビメタでその辺りの音は好きになれませんでした。
でも、ジミヘン、AC/DC、クラプトンなんかも聴いていて、彼らの音楽はしっくりきたなぁ。

そうそう。24日、六本木のあのバーにぼくも居てるはずです。
  • 2012-11-09 12:38
  • Okada
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[C1591]

LA MOSCAさん、こんばんは。
“イン・ザ・シティ”もいい曲ですよね。ジョー・ウォルシュ、あんまりよく知らないけど(笑)。

コンパクトで●●●しやすい、、、うん、確かにコンパクトな方が、持ち運びも収納もしやすいですよね、ハハハ。

  • 2012-11-08 23:23
  • goldenblue
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[C1590]

megumickさん、こんばんは。
夕方腕立てや腹筋をしながら(笑)!中学生くらいの頃?
想像するとなんだか微笑ましくていいですね!
なけなしのおこずかいで買ったレコードってやっぱり思い入れ深いですよね。

兄貴とは仕事で関東に住んでいて、かれこれ4,5年話もしていないのでどうしているんだかよくわかりませんが、、、男兄弟なんてそんなもんよ、、、まぁその後メタル一筋で、就職するまではロン毛・鋲のついた革ジャン・スリムのジーンズの出で立ちでしたし、結婚してからも家にはメタルのレコードがずらっと並んでいました。
多分、相変わらずなんだろうと思います(笑)。
  • 2012-11-08 23:19
  • goldenblue
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[C1589]

ezeeさん、こんばんは。
YouTube検索したら、ヴィンス・ギルとハワード・ヒューエットのカヴァーが見つかりました。確かにソウルフル、“ハートエイク・トゥナイト”なんかもボーイズⅡメンみたいなコーラス・グループがやってもさまになりそうやし、“ロング・ラン”は骨の太いシンガーに歌ってみてほしいですね。

  • 2012-11-08 23:06
  • goldenblue
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[C1588]

コレ、とっくに手元にないけど持ってました。
レコードじゃなくてミュージック・テープ。
何故かと言うと、その方がコンパクトで●●●しやすかったから(笑)

読んでたら聴きたくなってきました。
ジョー・ウォルシュの「イン・ザ・シティー」もコレでしたよね?
映画『ウォーリアーズ』に使われてたのが印象に残ってます。

[C1587]

goldenblueさん、こんにちは!
そうだよ~、まろりん、goldenblueさんの言うとおり!
私なんか全然ブルースなんて知らなかったのに、ブログの皆さんに教えてもらって今に至ってるんです。
それぞれ好きなジャンルが似ていたり違ってたりするから面白くて影響されてためになってます。

ところでこのアルバム「懐かしい」
私にとっても大切な一枚
ちょうど思春期真っ只中、気に入って少ないおこずかい出して買って、毎日毎日聴いてました。
何故か夕方腹筋や腕立てをしながら・・・
いい曲いっぱいです。

その後ヘビメタに走ったお兄様はどうしてる?(笑)
  • 2012-11-08 11:47
  • megumick
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[C1586]

おばんどす。
中学期の洋楽は私も完全、兄貴の影響下でした!
イーグルスの末期って、結構なソウル・テイストですね。実際“I Can Tell You Why ”なんかR&B優秀カヴァーもありました。
これも、どっかにテープあったなぁ・・
  • 2012-11-08 00:57
  • ezee
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[C1585]

花マロリンさん、こんばんは。

セーラー服でYMCA歌っていたのは、ヴィレッジ・ピープルというグループだったと思います。
♪イン・ザ・ネイビー、って曲もありましたね。渋谷哲平がレッツゴーヤングで歌ってました。古っ(笑)。

音楽の世界は、知れば知るほどおもしろくて、ついついあれもこれもと聴いているうちに詳しくなってしまいましたが、音楽に限らず詳しけりゃいいってもんでもないは思ってます(笑)、要は何を感じたか、ですから。
だから、マニアックな知識ひけらかしのブログとかはあまり好きではありません。この界隈の皆さんはそんなんじゃないから好きなんですよねー。
24日、楽しみでーす。
  • 2012-11-08 00:01
  • goldenblue
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[C1583]

こんばんは♪

アーティストの伝えたい意味が
この年齢になったからこそ、わかる、ということ
ありますよね。


やっぱり、いろいろお詳しいですね(^^)

イーグルスわかりましたよ!
ビリージョエルは好きです☆

私も姉の影響で洋楽は中1から聴いてましたが
まったくもって皆様の比ではありません!

セーラー服を着てYMCA歌っていたアーティスト、
どなたでしたっけ?好きでしたーー

音楽っていいですよね♪
  • 2012-11-06 23:54
  • 花マロリン
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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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