FC2ブログ

Entries

♪いつものように電車を降りて改札口を抜けたときのこと

いつものように電車を降りて改札口を抜けたときのこと。
すらっと脚の長い若い女の子が、自転車を押しながら僕のすぐ目の前を横切った。
大学生くらいだろうか。
ふわっといい香りが漂う。
そして柱の影に隠れるように立って、携帯を取り出して何やらメールをし始めた。
表情からは、抑えきれないような嬉しさが溢れて出している。
僕は、改札の横にある灰皿の横でタバコを吸いながら、何となくその女の子のことが気になってそれとなく目で追いかけていた。
しばらくして電車が到着し、改札からたくさんの人がぞろぞろと降りてくる。
目当ての人は降りてこなかったのかな、女の子の表情が少し曇った頃に、あんまりパッとしない感じのまだ勤め出して間もないような感じの若い男の子がキョロキョロしながら改札を抜ける。
柱の影から女の子が声を掛け、男の子が振り向いて、パッと笑顔がこぼれる。
付き合いはじめて間もないといった感じではない。むしろ同棲を始めたばかりとか、そんな初々しくもお互いのことはお互いがとてもよく知っているといった雰囲気。
今日は彼氏の誕生日で、彼氏の部屋に料理を作りに行って、でも残業で彼氏はすっかり帰るのが遅くなってしまってようやく連絡があり、彼女は待ちきれずに駅まで迎えに来た、とかそんな感じかな。
男の子と女の子は何かしら言葉を交わし、それから男の子が自転車の後ろに座る。
そしてキラキラとした幸せな空気をまといながら、颯爽と自転車で去っていった。


タバコを一本吸う間、目の前で起きていたドラマの1シーンのような光景を眺めながら、僕は素直に羨ましいと思っていた。
女の子が可愛らしかったからではない。
周りにも分かるくらいに恋をしている嬉しさに包まれている二人の姿が羨ましいと思ったのだ。
かつて僕にもあんなふうに恋をしていたことがあったのだと思う。
そして、だからこそよくわかってしまう。
あんなふうに誰かに恋をすることはきっともう二度とない、のだろうな、ということが。
羨ましかったのはそのことだ。
失われた若さを嘆いているのではなく、また若さが美しいとも素晴らしいとも思わないけれど、若いときにしか絶対に得ることができない感情、人生のある時期しか味わえない感情というのは確かにあると思う。


帰り道、なんとなく淋しいような、それでいて少し甘酸っぱいような気分になってふとくちずさんでいたのはこの歌。

  自転車でおいで-矢野顕子

GRANOLA
GRANOLA / 矢野顕子


何となく人恋しい気分になったのは、秋が深まったせいだけではないはずだ。



スポンサーサイト



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://goldenblue67.blog106.fc2.com/tb.php/755-1a239cfb

トラックバック

コメント

[C1580]

花マロリンさん、こんにちは。
若いことがいいことだとはまるで思わないし、素晴らしいとも戻りたいともやり直したいとも思わないのですが、あのキラキラ感だけはうらやましいです(笑)。
異性に限らず、良くも悪くも人に期待することが減っているのかも知れません。
で、その期待しない感じを素敵に裏切ってくれる人が現れるのを密かに期待しているような気もしたりします。
  • 2012-11-04 16:09
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C1578]

こんばんは。
なんだか切なかったですよ。

あの年頃にしか感じない夢、といいますか
異性への期待、とでもいいますか…

キラキラしてますよね。
うらやましいです。
  • 2012-11-02 23:09
  • 花マロリン
  • URL
  • 編集

[C1574]

megumickさん、こんばんは。
もうこの先恋をすることはない、と思っているわけではないのですよ。むしろ、すると思います(笑)。
言いたかったのは、この先どんなに恋をしたとしても、ああいう初々しさや甘酸っぱさとは違うんだろうなー、という予感がするということ。
有名店のおいしいケーキとかで、最初に食べたときにめちゃくちゃ感動したとしても、食べ慣れるうちにだんだん最初の感動を無理に追体験しようとしてる気分になってきて、でも最初の感動には絶対かなわないことにそのうち気づいてがっかりするじゃない?、、、って例えはちょっと違う気もするけど、やっぱり質は違ってくると思うわけです。
まぁそれはそれできっと悪いことでもないのだとは思うのですが、だからこそ羨ましく思ったりもするのかな、と。

megumickさんにも素敵なキューピッドが現れるといいですね!

  • 2012-11-01 23:54
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C1573]

LA MOSCAさん、こんばんは。
僕は仕事でも日常生活でも10代後半~20代前半の人とは今はまるで接点がないので新鮮でしたよ、なんとなく。
そんなのなくてもうらやましくないぞー、ってのは、どう考えても意地張ってるだけだと思いますが(笑)、往生際は悪いにこしたことないですよ!

  • 2012-11-01 23:33
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C1572]

goldenblueさ~ん、こんばんは!
とっても楽しく読んでました。
ラモさんのコメントも(笑)
光景が目に浮かびますね。
確かに自分にもそんな頃ありました。
でも、まだ恋する気持ちは捨てたくないな~

ねえねえ、goldenblueさん、ほんとうにもう恋をする事
ないって思ってるの?
まだまだ人生長いですよ~
素敵なgoldenblueさんだもの、突然恋のキューピッド
が現れて、大人の恋に落ちるかもしれませんよ!
  • 2012-11-01 21:27
  • megumick
  • URL
  • 編集

[C1571]

仕事の関係でこういう甘酸っぱい場面は結構見てます。
カップルがくっついて別れるまで見届けたり(笑)

やっぱり複雑な何とも言えない気持ちになります、見てると。

ただ、俺の場合、そんなものもう無くても羨ましくねーぞっていうのと、
いや、まだ判らないぞっていう往生際の悪い思いが交錯してしまいます(笑)

単に意地張ってるだけな気もしますけど(苦笑)

[C1570]

mono-monoさん、こんにちは。
共感していただけて何よりです。
羨ましいからといって取り戻したいわけでもないし、失われたことが悲しいわけでもない、ただ“あ~~~っ”って感じなのですよね。
この数日、一気に秋が深まってきました。
わが家では早くもコタツが登場しています。
  • 2012-11-01 08:40
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C1569]

まりさん、こんにちは。
そうですね、ほんまCMのひとこまみたいな感じでした。当人たちは自分たちがそういうふうに映っているとはまさか思わないでしょうけど。
羨ましくはありましたが、善いものですよね。



  • 2012-11-01 08:33
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C1568]

分かります。
ときどき私もこんな光景に出くわします。
涙が出そうになるくらい分かります。
私はタバコはやめちゃいましたけど(笑)。

[C1567]

なんかCMのひとこまのような シーンですねえ。
かつて そういうことを経験してるんだろうけど
はるかかなたですよ!

甘酸っぱい波動が せつない(>_<)
矢野顕子の歌が 恐らくお似合いの おしゃれな
カップルなのね(*^_^*)
  • 2012-10-31 21:22
  • まり
  • URL
  • 編集

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

Profile

golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

Calendar

09 | 2020/10 | 11
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

Gallery

Monthly Archives