このアルバムを買ったのはいくつのときだったっけ。 ロックの魅力に目覚めて、どんどんとルーツを探るように名だたる有名盤を聴き漁っていた頃のこと。 ストーンズやフー、キンクスの初期をひと通り聴いて、次はアニマルズだな、と。 ただ、どうもアニマルズには"朝日の当たる家"や"悲しき願い"といった懐メロポップス的なイメージが強くて躊躇していたのだ。 そんなときにたまたま中古店で見つけたのがこれでした。 いわゆるジャケ買い。 ふてぶてしく佇んでいる5人の男、中央でどかっと座ってこちらを睨みつけるエリック・バードン、おぉー、こりゃかっちょいいに違いない、と。 で、勇んで聴いてみたら、のっけから、わりとほっこりしたパーカッションから始まるのんびりした曲、“White House”。2曲目はなんだかわけのわからないヴォードヴィル調の短いコーラスで、3曲目に至ってはギターのきれいなインスト、、、。 ドコドコドコ、ギュワワワーン、っていうタイトな演奏にのってエリック・バードンが野獣みたいに吠えまくるのを想像していたからもうがっかりで(笑)。しまった、変なもの買っちゃった。騙された!大失敗だぁ~っ!と。 今ならもう途中で止めて二度と聴き返さなかったりするのかもしれないけれど、なにしろなけなしの金で買った一枚、聴かなきゃもったいない、みたいな感じで我慢強く聴いてみる。 うむ、これはこれでなかなか凄い作品なのかも。コンセプト・アルバムっていうんですか、映画のように様々なシーンが展開される中で、アルバムを通じて表現されるひとつの世界観。 それに何より、演奏のクオリティはひょっとして物凄いのかも。 A面のラスト、“The Year of the Guru”でようやく期待していたようなギター・サウンドとバードンのシャウトが聞こえてくる。おぉー、これこれ。B面はちょっと"朝日の当たる家"みたいなテイストの“St. James Infirmary”。トラディショナルでブルージーな曲調、どろどろと重い展開から突然切り込んでくる切れ味の鋭いギター・ソロ。ええやんか! そして19分にも及ぶ大作、“New York 1963 - America 1968”。この曲は3部構成になっていて、バードンが切々と情感こめて歌う前半のあとわけのわからないお芝居みたいなのがしばらく続いた後に一転。バードンの“I wanna be Frre!”というシャウトと“Never be free this way”というレスポンスのコーラスが混沌としたグルーヴをうねらせながら、ブチ切れそうな怒涛のテンションのファンクになっていく。 こりゃすごいわ。なんかわけわからんけどすごい、たまらん、、、と。
Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。 “日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。 自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。
そうです、♪誰のせいでもありゃしない~、の"悲しき願い"のアニマルズですが、この時代はもう完全な別もの。
でも、初期のものもかなりかっこいいですよ。チャック・ベリーやボ・ディドリーの曲とかガンガン演っていて、ビートルズよりもストーンズよりもかっこいいのがたくさんあります。