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♪SOUTHERN ACCENTS -My Vintage(1)-

ヴィンテージ(英: vintage)とは本来、ワインにおいて、ぶどうの収穫から醸造を経て、瓶詰めされるまでの工程を表す言葉である。語源はフランス語の"vendange"からで、さらに遡ればラテン語の「ぶどうを収穫する」という意味からきており、同一年に一定の区域から収穫されたぶどうのみを使って醸造されるワイン、また、そのワインに使われたぶどうの収穫年を指し、いわゆる当たり年のワインを指すようになった。
ここから派生し、現在では名品・一級品を示す用語として使用される。
 (WIKIPEDIAより)

新しい音楽を聴かなくなってからもうずいぶんと長くなった。
中学生や高校生の頃は、ヒットチャートをわくわくしながらチェックしていたし、大学生の頃はレンタルレコード店でバイトをしていたということもあって、気になるアーティストの新しいアルバムや話題の新しいアーティストは漏れなくチェックをしていたのだけれど、いつ頃からだろうか、まるで新しい音楽に興味を持てなくなってしまった。ちゃんと働きはじめた20代後半くらいからかな。仕事が忙しくなったり、結婚したり、いや、でもそれだけが理由でもない。
グランジやミクスチャー・ロックやヒップホップやネオR&Bといった新しいジャンルの音楽についていけなかったのだ。いや、ついていけなかったというとも少し違う。90年代以降に出てきた新しいアーティストのプレイする音楽にある「若さ」の表現を、その頃の自分は必要としなかったのだ。過去の遺産をつなぎあわせた「新しい音楽」よりも、ジャズやブルースや古いR&Bが持つテイスト、それらの音楽が表現する「成熟」した世界のほうがその頃の僕には魅力的に感じられた、ということなのだ。
まぁそんなわけで日常耳にするものはともかくとしても、「いいなぁ」と深く感動したり元気や勇気をもらったりするものはほとんどがもう20年以上も前に聴いた音楽、或いは60年代や50年代の古い音楽ばかりになってしまった。
ただ、それらの音楽を、いわゆる“懐メロ”のように青春時代を思い出すツールとして聴いているわけではない。
むしろ、聴けば聴くほどにしみてくる深い味わいを楽しんでいるのだ。
いわば、僕にとってのヴィンテージもの。
そこで、そんなレコードたちを紹介する、新しいコーナーをつくろうと思ったわけです。


一枚目に紹介するのはこれ。

Southern Accents
Southern Accents / Tom Petty and the Heartbreakers

Released:1985

トム・ペティ率いるハートブレイカーズの1985年のアルバム『サザン・アクセンツ』。
1985年といえば大学一回生の頃。最初は鼻に詰まったようなトムの声にどうも馴染めなかったのだが、聴けば聴くほどに味わい深くなっていったアルバムで、今も特によく晴れた秋の日なんかにはふと聴きたくなることがあります。
元々トムのセルフ・プロデュースによる初のソロアルバムとしてレコーディングがすすめられたということもあってか、この作品までのハートブレイカーズの持ち味である、ひねたクールさやシャープでソリッドな感じが影を潜め、ホーン・セクションの大胆な導入も含めずいぶんと泥臭くファンキーで楽曲の曲調もバラエティに富み、全キャリアの中でも異質な作品という感じがするのだけれど、とにかく渋いいい音出してますよね。
当時のハートブレイカーズのメンバーはg:マイク・キャンベル、b:ホウイー・エプスタイン、Key:ベンモンド・テンチ、Dr:スタン・リンチ。それぞれがそれぞれに腕利きの左官屋や畳屋や瓦屋といった職人みたいで、彼らに任せておけばするすると立派な家が建つような信頼感のある演奏だと思う。

1曲目、ジャカジャーンと切れ味のいいギターと♪ヘイヘイヘーイ~というコーラスに合いの手を入れるホーン・セクションがかっこいい“Rebels”ではじまり、2曲目、ぶりっとファンキーな“It Ain't Nothing To Me ”でぐっとテンションあがる。3曲目にはサイケデリックな雰囲気の漂う“Don't Come Around Here No More”。ヒキガエルみたいなトムの声がシタールの音に意外によくあうのだ。
「俺は生まれついての反逆者」だとか「俺にはまるで関係ないってことよ」とか「俺の周りをうろうろすんな」とか、肩で風切って歩くような威勢のいい言葉がポンポン出てくる3曲が続いた後は一転、ぽろんと孤独な本音がこぼれてしまうような4曲目“Southern Accents”は、もうしびれるくらいの名曲。帰る田舎のない僕ですら、故郷が恋しくなってしまうような。このA面の流れは最高にかっこいいな。
そしてB面にあたる5曲目から8曲目もファンキーかつ泥臭さにあふれた演奏が続く。再びファンクなギターとホーンが伸び伸びと秋の空みたいに爽快な“Make it Better”、どろっと妖しげな雰囲気のブルージーな“Spike”、ふっきれたようにタフな“Dogs on the Run”と軽快でチャーミングな“Mary's New Car ”。
そして、ラストを飾るのが“The Best of Everything”。アメリカ中西部の穀倉地帯を思い起こさせるスケールの大きなスロウ・ナンバーで、ロビー・ロバートソンとの共同プロデュース、リチャード・マニュエルとガース・ハドソンが客演していることもあってか、ザ・バンドと同じようなテイストの哀愁が漂っている。
歌われているのはこんな物語だ。

The Best of Everythig

 彼女はレストランで働いていた
 彼女のママもそうだったようにね
 今もあそこで働いているのかなぁ
 それともナイトクラブで歌っているだろうか
 彼女はいつもよく歌を歌っていたからなぁ
 だからってどうということもないんだけれど

 君が今夜どこにいようと
 君が世界中で最高の存在でいられることを願っているよ 
 何を探しているにしたって それを見つけられるといいよね

 気づいたときにはもうすっかり終わっているもの
 すべてはあっという間なんよ
 嫌ぁな夜は永遠に続くくせに、素晴らしい夜はずっと続いてはくれない
 本当のものなんて何ひとつ手に入れたことはなかったけれど
 たくさんのキスを交し合ったよね
 何かに捕らわれていたかのように、それがなんだったのかすらまるでよくわからないけれど

 君が今夜どこにいようと
 君が世界中で最高の存在でいられることを願っているよ 
 何を探しているにしたって それを見つけられるといいよね

心の奥にあった何かが、がさがさと逆撫でされて、色んなことを思い出してしまうようなしみる演奏。
それはとても苦いけれども、どこか甘く芳しい香りがしている。
穏やかに、そんな思いに浸る秋の一日。


ちなみに印象的なジャケットの絵は、ウィンスロー・ホーマーという画家の"The Veteran in a New Field" という作品。ウィンスロー・ホーマーは1800年代後半に人気があった画家で、自然と人間の営みを描くことを得意としていたそうだ。



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コメント

[C1548]

Colさん、こんばんは。
僕も最初はピンとこなかったほうですね。
メディアではスプリングスティーンと比べられたりしていましたから、もっとストリートっぽいもんだと思っていて、なんか全然ちゃうやん、、、と。
ジャケットからして秋っぽいイメージがあるのですが、よく考えたら小麦の収穫は春なんですよね(笑)。

  • 2012-10-15 23:06
  • goldenblue
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[C1547]

秋ですね~
サザンアクセンツ
トム・ペティのマイベストはこのアルバムではありませんが、リアルタイム感がどうにも邪魔して、今でもこのアルバムは特別です
最初はよくわかりませんでしたが、、

[C1537]

リュウさん、こんばんは。
ブログも7年目にもなるとなかなか端ものネタが増えてきてしまって(笑)、改めて本当に好きなものについて書きたいな、と。
リュウさんの保存盤シリーズも参考にしつつ、これなら週1で書いても100枚くらいはネタあるから、これで2年は書けるな、みたいな(笑)感じです。
まぁ、ぼちぼちやっていきまーす。

  • 2012-10-08 23:20
  • goldenblue
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[C1536]

ezeeさん、こんばんは。
ちょっとezeeさんみたいなアルバム紹介を意識してみました。
ほんと新しいもの聴いてないから、過去に一度書いたものをどう切り口を変えて書こうか、みたいな感じです(笑)。
"Don't Come~"は僕も最初は「なんだこりゃ?」だったのですが、これはこれですごいな、と思うようになりました。
トム・ペティの中では異色だけど、このアルバムがいちばん好きかも。

  • 2012-10-08 23:12
  • goldenblue
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[C1535]

ご無沙汰っす^^;
ヴィンテージ、良いっすね!!
そしてトムペティって決して目立つ訳ではないけれど、等身大な感じですよね!
だからしみるかと♪
次回も楽しみにしてます!
  • 2012-10-08 13:07
  • リュウ
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[C1534]

いいっすね、ヴィンテージ・シリーズ!
兄貴が持ってた本作は、ちょっと毛色の変わった“Don't Come Around Here No More”が自分にはダメでしたが、“Rebels”とかで流石~となったアルバムでした。アメリカらしい、ええバンドですね!
  • 2012-10-07 23:45
  • ezee
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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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