ミック・ジャガーの1987年発表の2作目のソロ・アルバム『プリミティヴ・クール』からのファースト・シングルだった“レッツ・ワーク”。 ミックが「さぁ、働こう!」だなんて、当時はふざけているんだと思っていたけれど、今思えばミックはかなり本気で自分の仕事というものと向き合おうとしていたんだな、という気がする。 この『プリミティヴ・クール』が出た頃はもはやストーンズは解散寸前の状態で、“Party Doll”の歌詞がキースを批判しているとかも噂になっていたけれど、実際この頃のミックは、本気でストーンズを凍結してソロ・アーティストとしてやっていく意気込みだったのではないかと。 僕も当時は、きっとストーンズは解散するんだろうと思っていたし、この後でたキースの『Talk is Cheap』がまためっちゃかっこよくって、それに比べてミック・ジャガーの商売っ気たっぷりのチャラチャラした感じがどうもあまりカッコ良くない気がしていて(だからそのあとのミックの来日にも食指が動かなかったのだ)、ミックもこれで終わりだな、なんて思っていたのだった。 ファーストの『She's The Boss』はナイル・ロジャースと組んだ革新的なサウンドで、ミックがあえてソロで演る意味合いも感じたけれど、これはね、、、、変なハードロック上がりの兄ちゃんがストーンズをコピーしたような居心地の悪さと言うか、ストーンズから泥やアクを抜いてしまったような物足りなさと言うか、そんな中途半端さを感じてあまり聴かなかったのだ。こんなストーンズっぽいような曲を演るんならストーンズで演ってくれよ!と。 でも、今聴くとこれはこれでなかなかかっこいいね! “Throw Away”なんてストーンズの黄金パターンに匹敵するツボをついたポップさだし、“Radio Control”のずっしりした手応えや、ちょっとチャーミングな“Say You Will”、“Primiteve Cool”のドラマティックさ、そして“Shoot Off Your Mouth ”のパンキッシュなかっこよさ。ジェフ・ベックやサイモン・フィリップスのバンドもタイトで、バンドらしいよくまとまった演奏をしているし、ミックも「ええのんできたでー、コレ!」とほくそえんでいたのではないだろうか。 でも、このアルバムが大ヒットしなかったことを受けて、ミックも「やっぱりキースと組むか。」と方針を転換したのではないかしら?そういう意味では、ストーンズが50年続くことになったひとつのキーになるアルバムだったのではなかったかと思ったりするわけです。
Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。 “日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。 自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。
Throw Away、ミックらしさ満点のかっこよさです。
ほんと、これストーンズで演ってほしかったです。
しかし、『SUPERHEAVY』もそうだけど、質の高い作品を作ってもストーンズじゃなきゃこき下ろされるミック・ジャガーって仕事は、なかなかたいへんなんだろうな、と思います。