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♪ファイン・ヤング・カニバルズ

流通業界の用語で「カニバル」という言葉があります。
同じようなコンセプトの商品が売り場に並んでしまい、同じターゲットのユーザーが分散してしまうことを指し、例えば「『冷凍長崎ちゃんぽん麺』と『長崎ちゃんぽん鍋セット』がどっちも特売なんてカニバってるやん!」というような使い方をします。ちゃんぽん好きな人でも一度に両方買わないから、結果的にはせっかくの売り場がもったいないことになる、というわけ。
この“カニバル”、最初は言葉の意味がよくわからなくて「なんでカニ?蟹が出っ張ってるの?」と思ったりしたのですが、語源はCannibal、つまり“人食い”のこと。同属同士で食いつぶしあいをしてしまう、というところから来ているわけですね。

今日紹介するのは“ファイン・ヤング・カニバルズ”。
時々“ファイン・ヤング・カーニバルズ”と誤って表記されている場合がありますが、決して“若者達の楽しいお祭”というバンド名ではありません。

Raw & The Cooked
The Raw & The Cooked / Fine Young Cannibals


先日、ぶらっと寄った中古CD店でやっていた一枚250円のセールで発見して、何となく購入した1988年のセカンド・アルバム『The Row and The Cooked』。"She Drives me Crazy "は当時もよくMTVやFMで流れていて悪くないなとは思っていたもののアルバムを聴こうと思うまでには至らないままだったのだ。
6曲目に流れてきたこの曲もそういえば当時どこかで耳にしていたなぁ、これファイン・ヤング・カニバルズだったのかぁ、なんて今更ながらの20数年ぶりの再会をしたりして。

  Fine Young Cannibals - Don't Look Back

とても独特な声のヴォーカルのローランド・ギフトは黒人と白人のハーフ。
打ち込みのスコンと抜けたリズムに鋭角的なギターがざくざく入ってくるのがカッコいい。
ギターのアンディ・コックスとベースのデヴィッド・スティールは、80年代前半にザ・ビートというスカバンドの中心メンバーだったらしく、なるほどそういう臭いがプンプンする。
80年代、経済が低迷し、失業問題や移民問題が深刻化しドン底だったイギリス。まともに働く場所がない若者たちが、同じように疎外された底辺の階層であるアメリカの黒人の音楽から影響を受けた音楽をプレイしていた頃のあの感じ。
歌詞も相応に陰鬱で辛辣で、ここにも遠くブルースからの影響を感じることができる。
“Don't Look Back”も、とても勢いがあるポジティヴな曲調だけれど、歌詞はこんな感じ。

 
 これっぽっちの金で買えるもんなんてたかが知れてて
 気晴らしにドライブにでも行きたいもんやけど、そもそも車も持ってない
 休日にトロピカルに日光浴?なんてありえへんし
 ええことなんかまるでない

 ひどい時代
 泣き叫びたくなる
 でも悲しまないで
 そもそも振り返るような過去すらない
 俺、出て行くわ
 アンタもそうすべきやで


なかなかにヘヴィな歌詞だ。
でも、ヘヴィなテーマをポップに歌うこと。
シビアな現実を受け入れつつ、それでも陽気に踊ってみせること。
それこそがソウル・ミュージックから学ぶべき大切なこと。
時代は混沌としていて、なかなか明るい未来が見えない。明るい将来展望が描けない。
それこそ80年代当時のイギリスが陥っていた出口の見えない泥沼に、今この国はいるようだ。
この国、というか、多くの組織や個人が、新しい価値観が見つけられずに右往左往しているような気がするのだ。
でも、だからこそ、意識的にポップであり続けることが今必要なんじゃないかと、ファイン・ヤング・カニバルズのポップな音を聴きながら思ったような次第。


それにしてものふとした疑問。
CarnivalとCannibalって何で語感が似ているんでしょうね。



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コメント

[C1512]

波野井さん、こんにちは。
そりゃまたすごい偶然ですね。。。カニバリズムの本、どんな内容なんでしょうね。ちょっと興味あるかも。
  • 2012-09-24 07:34
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C1511]

リュウさん、こんにちは。
パンクの残滓、まさにそんな感じですよね。
この時代のものは聴かないままになっているものもたくさんあるので、意外な発見があります。


  • 2012-09-24 07:31
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C1510]

昨日電車で自分の前の男の人が
カニバリズムの本を読んでました。汗

紙のカバーしてたけど、タイトルが透けてたという(^^;)

すごい本読んでるなあって
思ったんですよ(^^;)

でもって
goldenblueさんのところにきたら、この記事!
偶然ですねえ(^^;)!
  • 2012-09-23 17:06
  • 波野井露楠
  • URL
  • 編集

[C1509]

goldenblueさん、毎度です!
なるほど、そんな意味だったのですね、カニバルって・・潰しあい・・まさに今の日本がそうかも・・。
政治家・官僚と言うだけで潰しあう、嫉妬からなんでしょうね・・。

この頃のイギリスの唄って、曲はメッチャPopなのに詞はハードなのが多いですよね♪

Punkの残滓が漂う感じ、結構好きです!!
  • 2012-09-23 13:59
  • リュウ
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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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