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♪2月の深夜徘徊

昼間、陽が射せばずいぶんと暖かく感じるようになってきた。朝一番で出社するときはまだ真っ暗だったのに最近はもう空が明るくなっているし、日暮れも少しずつ遅くなってきた。そんなふうに春の兆しが少しずつ感じられるから、2月は嫌いじゃない。
でも、夜ともなればまだまだカキーンと凍りつくように冷え込む。昼間の暖かさが嘘のように、まるでそのまま永遠に世界が凍りついてしまうかのように。

しばらく体調がいまいちすぐれなくてぼやぼやしていたらすっかり仕事が溜まってしまったから、久しぶりに夜中まで仕事を片付けていた。シーンと静まりかえった街中をコンビニまでラーメンを買いに散歩した。
冷たい空気がなぜかとても心地よかった。永遠に真夜中の国にいるような気がした。
インスタントラーメンをすすりながら、なんだか世界中にたった一人取り残されたような気分になった。みんなノアの箱舟に乗って新しい世界へ旅立ってしまったのに、ラーメンを買いにいっている間に僕だけ置いてけぼりを食らってしまったのだ。今更どうすることもできないので、ラーメンをすすりながらいろんな思い出もいっしょにすすってみたのだけれど、思い出なんてほとんどはのびてしまった麺みたいに歯ごたえのないものだということに気がついた。

もしずっとずっと永遠に真冬の真夜中が続くのならば、僕はずっとこんな音楽を聴いているだろう。


'Round About Midnight    俺の声/SION    ベスト・オブ・マディ・ウォーターズ

グレープフルーツ・ムーン~ソングス・オブ・トム・ウェイツ    Hymn for My Soul
   

’Round About Midnight/Miles Davis
マイルスのミュートしたトランペットから聴こえてくるのは、孤独と、孤独に耐える強さだ。
とても痛みにあふれた音楽なのに、淋しさやせつなさや悲しみはひとつも感じさせない。
それは、何十年も己を貫いてきた者だけが出せる音なのだと思う。

俺の声/SION/SION
思い出の多くは後悔と共にある。調子に乗ってはしゃいだあとなら尚更だ。
「俺は王様だと思ってた/俺の声で誰でも躍ると思っていた/だがしかし、俺の叫ぶ声は/ピンボールさ/撥ねてるだけ」…そんなシオンのしゃがれた声が妙にしっくり来る夜。

The Best of Muddy Waters / Muddy Waters
マディの音楽はタフだ。独りでいることの確かさを知っている。真っ暗闇の中に取り残されても決して騒がない、嘆かない、わめかない。ハナから夜明けが来ることなんて待ち望んではいない。
淡々と、まるでひとつの黒い塊になって時が過ぎてゆくのをひたすら耐えているような音楽だ。

Grapefruit Moon: The Songs of Tom Waits/Southside Johnny
退屈しのぎに少し踊ってみたくなったらこれ。ビッグバンドジャズに乗せてサウスサイド・ジョニーが歌うトム・ウェイツのカバー集。ゴージャスなビッグバンドだからこそ尚更引き立つ歌のやるせなさ。
“グレープフルーツ・ムーン”を聴きながら空を見上げたら、月はもう西の空に沈みかけていた。

Hymn for My Soul/Joe Cocker
ジョー・コッカーの声は、心の底から搾り出すように震える。若い頃とても暑苦しかった彼の歌は、いつの頃からかいつもコートの襟が立っているようになった。ずいぶんとジイさんになってしまったジョー・コッカーの最新盤、C.C.Rの“Long as I can see the Light”とか渋いカバーがかっこいい。
Long as I can see the Light、そう、光ある限り…。



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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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