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♪1993年7月 シャマーム・クワィス

oasis

オアシスの村には、ひまわり畑がたくさんあった。
ひまわりは荒れた土でも良く育つので、砂漠の栽培に適しているのだそうだ。
観賞用ではなく、油をとったり種を食べたりするためのもの、僕もずいぶんとすすめられた。
それから圧倒的によく食べさせられたのはトマトときゅうり。これも暑い砂地でよく育つ作物で、体を冷やす効果もある。水の少ない土地では瓜系のものの栽培が適しているので、スイカやメロンもたくさん栽培されているとのこと。
「スイカ」のことをエジプト人は「シャマーム」と呼んでいた。
「シャマーム」、素敵な名前だと思う。「ウォーターメロン」だなんて無粋な名前をつけたイギリス人のセンスが信じられない感じ。

旅の途中、いくつかのアラビア語を覚えた。
片言でアラビア語を話そうとすると、村の人たちは喜ぶ。
お祈りの最初の言葉「アッラーフアクバ~ル、アッラーフアクバル(神が偉大なり)」を、お祈りの節回して真似したりするとバカうけで、ほかにもいろいろ教えてくれる。
「アシュハド・アン・ラー・イラーハ・イラーッラー(アッラーの他に神は無しと私は証言する)」とか、「ラー・イラーハ イッラッラー ムハンマド ラスールッラー(アッラーのほかに神はなし、ムハンマドは神の使徒なり)」とか。これはイスラム教徒なら毎日告白しなければならない信仰の言葉。語弊があるかもしれないが、南無阿弥陀仏や南無妙法蓮華経みたいなものだ。

アラビア語の挨拶の基本は常に「السلام عليكم アッサラームアレイコム」。
あなたの上に平和がありますように、というような意味らしい。基本おはようもこんにちはもこんばんはも全部これでOK。
「アッサラームアレイコム」と言われたら「ワ アレイコムサラーム」と返事をする。
「Yes」は「アイワ」、「No」は「ラ!」。
「ありがとう」は「ショクラン」、「さようなら」は「マッサラーマ」。
イスラム独特の表現で、使うととても喜ばれたのが「اَلْحَمْدُ لِلَّهِ ハムドゥリッラー」という言葉。
神のご加護のおかげで、というような意味らしい。
「How are you?」と尋ねられたら「ハムドゥリッラー」、大丈夫とかイッツ・オーライの代わりにも「ハムドゥリッラー」、いただきますやごちそうさまなどの意味でも「ハムドゥリッラー」。
元気なのも、問題が無事片付いたのも、食事をおいしくいただけたのも全部、神のご加護のおかげ。
いい言葉だと思う。
そしてもうひとつ喜ばれたのが「クワィス」。
良い、Goodの意味。

バハレイヤ・オアシスを出る最後の日、アシュラフや、仲良くなった村の人たちと一緒に、畑から収穫してきたばかりのスイカを食べた。
そのスイカの甘くてうまかったこと!
手やら口元やらベッタベタにして、種をペッペと砂の上に吐き出しながら、
「シャマーム・クワィス!」
と言って親指を立てると、みんながにっこり笑ってくれた。
またいつか、ここには必ず戻ってこよう、そう思いながらもう20年も経ってしまった。




スイカがテーマの音楽といえばやっぱりこれかな。
あえて、ファンキーなエレクトリック版ではない、1962年の録音の方を。

Herbie Hancock  Watermelon Man

Takin Off
Takin' Off / Herbie Hancock





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コメント

[C1390]

Okadaさん、こんにちは。
この写真は、春に部屋の整理をしたときに出てきました。その写真をデジカメで撮影したので、ちょっとぼけた味のある感じになりました。
スイカは室内で食べるとちまちまします。やっぱり外で食べたいですね。豪快に種を吹き出しながら汁こぼしてかぶりつく感じ。
  • 2012-07-10 08:16
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C1389]

このシリーズ、古い写真が良い感じですね。
若い頃の写真がパッと出てくるのが凄いと思います。
ぼくはどこに何があるのかさっぱりなもんで...。
シャマーム・クワィスかぁ。
子供の頃はスイカ好きだったのに、大人になったら、種を吐き出すのが面倒くさくて、あまり食べなくなってしまったなぁ。
今年の夏は甘そうなスイカを仕入れて、かぶりつこうかな。

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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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