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♪1993年7月 アテネは世界の観光地

アクロポリス

地中海を船で渡ってアテネに着いた。
ギリシャという国の印象は、その旅行者がどこから来たかでずいぶんと異なるのではないか。
ヨーロッパ方面から来た人にとっては「物価は安くて気候もよく、人も陽気で明るくてちょっとアバウトで、ヨーロッパの重苦しさとはまるで違う」と言うのだが、エジプトから来た僕のような者にとっては「物価は高いし人は暗くてよそよそしい、あんまり長居したくない国」ということになる。
ギリシャの物価が日本の半分くらいなのだけれど、エジプトでは日本の10分の1くらいだから、いきなり5倍だもの(笑)。
ちなみに世界の大観光地・アクロポリスの入場料は1500ドラクマ。日本円でだいたい800円と考えれば目安となるでしょう(←楠田枝里子風で)。800円あればエジプトで4、5日は過ごせたもの。
そんなわけでギリシャはそそくさとスルー。
エーゲ海の方に行ってみようかというプランもあったのですが、似合わないのでやめた(笑)。
観光地で会った日本人にはやはりことごとく無視されたし、せっかく高い入場料を払って入ったアクロポリスは思いっきり工事中だったし(怒)!

バス・ディーポに行って「イスタンブール行きのバスはどこ?」と聞くと、係員はなぜか怪訝な顔をする。
「イスタンブール!I want to go to Istanbul!」
ようやく向こうのリアクションがあって「Here?」と示された地図にはなんとコンスタンチノポリスとの表記が。
そもそもイスタンブールは、紀元前330年にローマ帝国コンスタンティヌス1世が当時ビザンチウムと呼ばれていたこの町に遷都して以来、1453年に東ローマ帝国が滅ぼされるまでの1000年以上もの間、ローマ帝国の中心であった街。
その後1829年に近代ギリシャが独立するまでオスマン・トルコ帝国に支配され続けてきた400年以上もの間も、彼らはこの街をイスタンブールではなくコンスタンチノポリスと呼び続けてきたのだろう。
国境を接した隣国に支配された歴史というのは、こんなところに残るものなのだな。
これはなかなか異民族に支配された歴史のない日本人にはわかりにくい、微妙な感情なのだろう、と思う。


Χάρις Αλεξίου (Haris Alexiou)- Oi filoi mou xaramata

Anthology
Anthology / Haris Alexiou


アテネからコンスタンチノポリスまではバスで丸1日。
バスの中で延々鳴っていたのは、こんな感じの曲だった。
とてもオリエンタルな響き。
そう言えば食べ物もトルコとほとんど同じだった。
頭ではトルコ的なものを拒否してヨーロッパの方ばかりを向いていても、文化的にはどうやら根っこは同じらしい。
これも、私たちの隣国の関係とも少し似ている気がする。



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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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