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♪爆音ニール・ヤング

アメリカーナ
Americana / Neil Young with The Crazy Horse

→http://amass.jp/5867 このサイトで全曲試聴できます。

ずいぶんと蒸し暑くなってきました。
旅の思い出日記も一段落ついたところで、めずらしく新譜の紹介です。
ニール・ヤングが9年ぶりにクレイジー・ホースを従えて録音した『アメリカーナ』。
“おぉ!スザンナ”とか“クレメンタイン”といったアメリカの古いフォーク・ソングばかりを録音したこのアルバム、リリースのニュースを聞いたときは、古くさい感じでアコギでカントリーっぽく演っているんだろうと特に興味はそそられなかったのです。何しろこの人は偏屈で気まぐれでいろんなことやり散らかすからアルバムの当たりはずれが激しいので、、、。
ところが、ちょっと試聴してみてびっくり。
聴こえてきたのは、ディストーションの効いたギター、ドタバタですっかすかのドラム、無骨で荒々しいガレージ・サウンド。
おぉっ!これはワイルドだぜェー、とCDショップへ向かったというわけ。

Neil Young & Crazy Horse: Oh Susannah

1800年代半ばのフォーク・ソング、150年も前の民衆の歌には、一体どんなことが歌われていたんだろう?
ちょっと興味があって歌詞を調べてみた。
カントリーにありがちな「惚れた女にメロメロの男の歌」や「旅の男が女に恋をして、女を捨ててまた旅に出る歌」に混じって「故郷の土地の歌」、「職探しの歌」そして「死刑執行を待つ死刑囚の歌」なんてのがある。
 
 毎朝だいたいこの時間
 彼女は俺を叩き起こす
 そしてこう叫ぶんだ
 「仕事見つけんかいなっ!」
 朝飯食ったあと
 彼女は俺に投げてよこす
 求人広告の束
 そして「仕事見つけんかいなっ!」
 けど、隅から隅までどこを探しても
 そこには俺にできそうな仕事なんてまるっきり載っていないのよ
   (Get a Job)

 死刑執行人さん
 ロープを引っ張りなよ
 ほんのちょっと、ぐいっとな
 もうすぐ親父がやってはずなんだ
 遠いところからさ

 パパ、銀は持ってきてくれた?
 パパ、金は持ってきてくれた?
 あんたはただ、絞首台の棒に縛り付けられた俺を見に来ただけなのか
    (Gallows Pale)


重いテーマ。ブルースの世界だ。
そして、ニール・ヤングが今こんな古い曲をあえてカバーした、しかも「古き良き」風のサウンドではなく、ニールお得意のラウドな音で録音した理由がなんとなく透けて見える。
150年前の歌を現代に置き換えよう、ということだ。
つまりは、こんなに古い時代から、世の中の出来ことは何も変わっちゃいないし、社会が抱える問題は何にも解決してないんだよ、きれいごとばっかり並べていないで現実を見ろよ、ってことなのではないだろうか、と。


 俺は貧乏は世迷い人
 ひとりぼっちで世界を旅してる
 病気もない、苦役もない、公平な国が俺の行きたいところ
 そこにいる神父様に会いに行くんだ
 もうさまよっている暇はない
 ヨルダンを越えて、故郷を目指すのさ
    (Wayfarin’ Stranger)

この歌ですら、希望を歌っているのか、途方もない絶望を歌っているのか、本当のところよくわからない。
まぁ、どっちでもそう大して変わらないのかもしれないのかもね。
いずれにしてもこんな蒸し暑い夜には、ニール・ヤングのザラザラした声がちょうどいい。
今夜もまた、決して解決しない問題をみんなそれぞれ抱えこんでいるのだろう。


 
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コメント

[C1403]

megumickさん、こんばんは。
ニール・ヤングは当たり外れが激しいですよー。あのいかつい顔どおりの激しくヘヴィなのもあれば、顔に似合わずホロッとする優しい歌もあれば、田舎くさいカントリーもあります。でも何をやってもニール・ヤング臭さがあるところが素敵ではあります。
僕が好きなのは「ニール・ヤング・with・クレイジーホース」「アフター・ザ・ゴールドラッシュ」「渚にて」「今宵その夜」、70年代前半がやっぱり黄金時代です。
「ハーヴェスト」も名盤とされていますが僕はあんまり。
おすすめはやっぱりスタジオの方のおっしゃるとおり「アフター・ザ・ゴールドラッシュ」かな。せつなく心にしみます。

  • 2012-07-20 23:33
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C1400]

golden blueさん、こんにちは!
中々コメントできなくてすみませんでした。

私この人よく知らなくて・・・
先日よく行くスタジオの方に
「ニールヤング聴かなきゃ駄目だよ~
After the Gold Rush 聴いてごらん!」
って言われていたのを思い出しました。

これからニールヤング聴かなくっちゃ!
goldenblueさん、お勧めありますか?
今回のこのアルバムがいいのかな~?
  • 2012-07-20 11:33
  • megumick
  • URL
  • 編集

[C1396]

リュウさん、こんばんは。
蒸し蒸しして寝苦しくなりましたねー。
この新譜は、そんな蒸し暑さをさらにかきたててくれます。二日酔いの迎え酒みたいな(笑)。
ニール・ヤングはムラがありすぎるけど、ラウドでザラザラで無骨なのがいいですね!
トラブルは、、、あるのが当たり前、と思うことにします。
今世間で話題のいじめだって、そもそもないわけがない、胸に手を当てれば心当たりの4つや5つ誰にだってあるだろうし、人間が何人か集まればあって当然。そこから、どうするかを考えない限り絶対いい方向にはいかないって。
  • 2012-07-18 00:48
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C1395]

今晩は♪
ニール ヤングの新譜ですか!?
ラウドでザラザラで無骨な感じ伝わりました…。
人間の行いの根元は変わらないですよね…トラブル抱えて生活するのが普通な年代、たまにはNOと言いたいっす!
  • 2012-07-17 19:02
  • リュウ
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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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